ドイツのグリーン党政治家、ベーベル・フーンさんが10月に福島を訪れました。
幸いにも、偶然なのですが、私は10月20日の朝、ラジオでフーンさんが、福島の印象を語っているのを耳にしました。普段の私は、調子の良いことばっかり言う政治家の話を聞くのが嫌いなのですが、福島のことを語られているフーンさんは違いました。ラジオから流れてくる彼女の言葉に、私は思わず釘付けになりました。そして、とにかく是が非でも、この番組の概要をお知らせしたいと思いました。
下が、番組のPodcast(ドイツ語)へのリンクです。
http://www.radiobremen.de/nordwestradio/sendungen/gespraechszeit/gzbaerbelhoehn1 00.html
どうぞたくさんの日本の方々にこれを拡散して下さい。お願い致します。
概要は下記の通りです。
グローガー理恵
ドイツ・北西ドイツラジオ(Nordwest Radio)10月20日放送番組
ベーベル・フーン(Bärbel Höhn)さんとの語らい
ベーベル・フーン女史のプロファイル: ドイツのグリーン党・政治家。1995年から2005年まで、ノードライン―ヴェストファレン州(Nordrhein-Westfalen)で環境大臣を務める。
2006年からドイツ連邦議会議員。連邦議会グリーン党議員団の副リーダーでもある。
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10月、フーンさんは福島を訪れました。彼女にとって、実際に放射線汚染区域に行って現地の人々と話をすることは重要なことでした。そうすることによって初めて、現地の人々の実態やそこの状況を理解することが出来るのではないかという信念を、彼女は持っていました。友人や知人のなかには、彼女が被曝することを心配し、そんな危険な所へ行くべきでないと忠告してくれる人もいました。
確かに、彼女自身にも不安な気持ちは少しありました。しかし、彼女には福島の住民と会って話をしてみたい、そして現地の状況を理解したいという強い意思がありました。「汚染された福島には人々が住み日常生活を営んでいて、その人達はそこで、これから何年も何年も住み続けるていくことになるのですから、私はその人達に会うべきだと思ったのです」と、フーンさんは語りました。
福島市で、フーンさんは教職員組合や子供を持つ親達が集まった市民運動グループの代表者たちと話をしました。そこでフーンさんが聞いた事は、放射能汚染のために平和な生活が破壊されてしまった人達のこと、家族がばらばらになって生活していかなければならない人達のことでした。: ある女性は仕事を辞めた後、子供を連れて京都へ避難しましたが未だ京都で仕事が見つかっていないこと。子供だけを他の土地に住ませている両親もいること。母親が子供を連れて他の地域に移り、独り福島に残って仕事を続け家族を養っていかねばならない父親...。こうして、今まで一緒だった家族が離れ離れになっていくのでした。様々なトラブルの末、終に離婚に至ってしまった夫婦もいるということ でし た。
津波で破壊されてしまった建物は再建することができます。しかし放射能汚染はいつまでも長い、長い間まん延し続け、汚染されてしまった土には何も再建することは出来ません。多くの日本人は福島原発事故を切っ掛けに原発の恐ろしさに目覚めました。現在、日本国民の70%から80%が脱原発を願っているという事を、フーンさんは知りました。しかし、その国民の「脱原発」を叫ぶ声は、現在の政治には全く反映されていません。前総理大臣、菅氏は脱原発宣言をしましたが、それを具体化することはありませんでした。野田首相は原発支持派です。「次の選挙では、日本国民の脱原発を望む声が反映するような結果になる可能性もあるのではないでしょうか」と、フーンさんは言います。
フーンさんは、よく日本人に「ドイツはどうして脱原発に踏み切ることにしたのですか?どうやって脱原発を決定するに至ったのですか?」と訊かれました。フーンさんが、「脱原発し代替エネルギーにシフトすることは、雇用率が原子力産業の10倍になり、経済的にもポジティヴな結果をもたらすのですよ」と、日本人に説明しますと、彼らは「そうなんですか!そんなことを聞いたのは初めてです!」と感嘆していたそうです。「日本国土には長い長い海岸線があるのですから、海岸線沿いに風力ターバインを立てて風電力を生産することが出来ます」とも、フーンさんは言っています。
フーンさんは、「TEPCOの評判が破壊されてしまった一方、TEPCOは国に67億ユーロを要請した。TEPCOは、この国から貰った67億ユーロを被災者への賠償金に割り当てるつもりである。」という日本のニュースについても語りました。
フーンさんはこの事について、最終的には、国がTEPCOの要請を受け入れることになるだろうと考えています。フーンさんは、「日本における電力会社の政治に及ぼす影響力を考慮しますと、国がTEPCOの要請を受け入れるのは当然のことでしょう。日本では、電力会社が信じ難いぐらいに政治・政策への影響力を持っています。ドイツでももちろん電力会社が政治に与える影響は強いです。でも日本では、もっと凄いのです」と言いました。ここで、インタヴュアーのトム・グローテ氏は、「どうせ国が賠償金を払うことになるのだったらTEPCOを通さずに、国が直接、被災者に賠償金を支払えばいいのでは...?」とコメントし、この込み入った賠償金支払いコンセプトに、納得がいかないようでした。
更にフーンさんは、「他にもこういう事があります。国が払い込んでいる、或る基金があるのですが、この基金は、国が管理しているのではなくTEPCOが管理しているのです」と、日本の政治家とTEPCOとの暗い密接な関係を明らかにしていました。
フーンさんは、日本で定められた食料品の暫定放射能制限値ついても話しました。: 「日本の制限値は余りにも高すぎます。日本の制限値は、チェルノブイリ事故後にソ連が定めた制限値よりも高いのです。食品の制限値、500ベクレル/kg、流動食品の制限値、200ベクレル/kgとは余りにも高すぎます。特にお米、日本人が毎日食べているお米の制限値が500ベクレルとは酷い話です。被曝量の年間制限値も、法では「1ミリシーベルト」に定められていたのですが、国はその制限値をその20倍である「20ミリシーベルト/年」に引き上げたのです」と。
福島地域に住む人々は、ヨーロッパからの放射線専門家たちが中心となって国に外圧をかけ、何としてもこの制限値を下げるようにしてほしいと、フーンさんに訴えました。その事に関して、フーンさんは、「私は、ドイツの放射線専門家に会って話し合いたいと思っています。そして、放射線専門家に実際に日本へ行ってもらい、この制限値を下げるように、日本国に圧力をかけてほしいと頼むつもりです」との意思を、インタヴュアーのトム・グローテ氏に伝えていました。
最後に、「福島を訪れて、一番印象に残ったことは?」とグローテ氏に訊かれた、フーンさんの言葉です。:「それは、私が飯舘村の村長さんに会ったときのことです。村長さんが着ていたTシャツに書かれた文字が、私の目に留まりました。Tシャツには英語で、「Most Beautiful City of Japan(日本で最も美しい市)」と書かれてありました。かって飯舘村は、環境保護意識の強い、自然農業を営む、美しい自然に囲まれた村でした。事実、飯舘村はドイツの環境都市、フライブルク(Freiburg)とも交流があったと聞いています。その美しい村が、今は高放射線汚染区域、ホットスポットとなってしまったのです。村長さんのTシャツに書かれた「Most Beautiful City of Japan」という言葉、それが今は意味のない空虚な言葉となってしまいました。かっては美しかった村は失われ、今は死の村と化してしまったのです。その事が、私の心をひどく打ちました。」
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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