最近、私はラジオで近頃には珍しく心温まるニュースを耳にしました。それは、ブレーメンで「国際ブレーメン平和賞」が、何十年もの間ゴアレーベンの核廃棄物貯蔵に反対して闘ってきた反核伯爵夫妻に授与されるというニュースでした。ブレーメン平和賞は、平和、正義、自然・環境・生き物などの保護のために、模範的に尽くした組織および人物に授与される賞だそうです。
幸いにもラジオ・ブレーメン(radio bremen)のサイトに放送内容のテキストが掲載されているのを見つけましたので、それを和訳して反核伯爵夫妻のエピソードをご紹介させて戴きます。
下が原文へのリンクです。
なお、ゴアレーベン核廃棄物貯蔵施設の問題および2011年11月に行われましたゴアレーベン反核活動に関する記事が「ちきゅう座」に掲載されています。:
https://chikyuza.net/archives/17042
また、*ゴアレーベン核廃棄物施設については伯爵夫妻のエピソードの下に簡単に説明しておきましたので、それをご覧になってみて下さい。
ノルドヴェスト(Nordwest)ラジオ放送の番組から
2013年 11 月29日
ブレーメン平和賞ー「ゴアレーベン核廃棄物貯蔵」反対活動家が受賞
何十年もの闘いが報われる
(和訳: グローガー理恵)
ブレーメンでブレーメン平和賞が授与されるのは、これで既に六回目 。「公共的活動」の部門では、アンナとアンドレアス・フォン・ベルンシュトルフ夫妻に、何十年もの間ゴアレーベンの核廃棄物貯蔵に反対して闘ってきた彼らの功績を称えて「ブレーメン平和賞」が授与される。
ブレーメン平和賞受賞者、アンドレアス・グラフ・フォン・ベルンシュトルフ伯爵 &
アンナ・フォン・ベルンシュトルフ伯爵夫人 (写真: Radio Bremen-Nordwest Radio )
(Andreas von Bernstorff)
伯爵は、彼の所有地の1/3にあたる面積600ヘクタールの土地を売ってもいいところだった。その1/3の面積の大部分に核廃棄物貯蔵施設が建設されるはずだった。フォン・ベルンシュトルフ伯爵に、この土地を何と3000万マルクもの莫大な金額で買いたいとの申し入れがあったのだった。しかし彼は、その申し入れを撥ねつけた。彼の妻、アンナ・フォン・ベルンシュトルフ (Anna von Bernstorff)伯爵夫人と一緒に。もっとも当時、夫妻には原子力が実際にどれだけ危険なのかさっぱり分からなかった。でも彼らにとって確かだったことは: それが危険なテクノロジーであり後世や環境にリスクをもたらすものであるということだった。
創造的、でも常に平和的
国際ブレーメン平和賞
2年に一度、国際ブレーメン平和賞は財団法人「ディ・シュヴェレ(die schwelle)」によって与えられる。賞は、平和、正義、(神の)創造物(自然・環境・生き物など)の保護のために、模範的に尽くした組織および人物に授与されることになっている。
35年間、60 歳の伯爵夫人と71歳の伯爵は、ヴェントランド(Wendland)で核が輸送されることに反対することに尽力してきた。その中で、こんなことがあった。夫妻は家族と一緒に、特別核廃棄物輸送 キャスク(独語でカストー《Castor》と呼ばれる)輸送車が通ることになっていた道路に木を倒して、カストー輸送の通り道を塞いだのだった。また、別の機会には、夫妻は20人の狩猟家たちと一緒になって自分たちの森の中で「猪狩り」を催すことにした。カストー輸送の寸前に、である。
それから、言わば( 出動した警察官が使う)高圧放水砲と並んでやった、数えきれないほどの電動のこぎりを鳴らしての「電動のこぎりコンサート」もあった。
創造的だが、いつも平和的にベルンシュトルフス家は自宅の玄関口の真ん前で、核廃棄物の最終的貯蔵に対して抵抗した。今もベルンシュトルフス夫妻は、カストー (核廃棄物)輸送がやって来るときには、30人以上いる自分たちの従業員に休暇を与えて彼らがデモに参加できるようにしている。アンドレアス・フォン・ベルンシュトルフ伯爵は自分自身をヴェントランドの大きな核廃棄物輸送/貯蔵反対ネットワークの一部であると見なしている。
「私たちは、真剣に反対運動に打ち込んでいる全ての人達の単なる代理として平和賞を受賞するに過ぎないのです」と、アンナ・フォン・ベルンシュトルフ夫人は強調する。ー「真剣に反対運動に関与してくれる人達がいなかったら全てが可能にはなっていなかったことでしょう。全ての人達が目標を追って、そのために最善を尽くしてきました。それだからこそ今日があるのです。ゴアレーベンに核廃棄物最終的貯蔵施設はありませんし、再処理場もありません。」
ベルンシュトルフ伯爵は、核廃棄物輸送を阻止するために自分の生命をかけて大きなコンクリートの固まりに自分自身を鎖でつなぐ人達に対して大いなる尊敬の念を抱いていると言う。ー「私の家の玄関先で核ゴミを捨てようとしたような人間がいなかったら、私はこうした人達と知り合うことが全くなかったことでしょう。」このような全てのアクションにかかわらず: 常にベルンシュトルフ伯爵は、相手が経営者であるにしろ政治家であるにしろ、彼らと話し合う用意があった。ベルンシュトルフ家の邸宅において、数え切れないほどの会談が行われてきた。
以上
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核廃棄物処理施設:
ゴアレーベン(Gorleben)はニーダーザクセン(Niedersachsen)州の北東に位置する小さな地方自治体で、ヴェントランド(Wendland)地方とも呼ばれている。ゴアレーベンには核廃棄物処理施設の敷地がある。現在、施設は(地上)中間貯蔵施設として使われているが、ゴアレーベン岩塩ドームを採掘して将来は地下核廃棄物最終貯蔵施設として使うことが計画されていた。ゴアレーベン核廃棄物貯蔵に反対する環境保護主義者たちの抗議運動は既に1970年代から始まっていてる。
ドイツの原発で産まれた核廃棄物はフランスのラ・アーグ再処理工場に送られる。ラ・アーグで再処理された核廃棄物は特別核廃棄物輸送容器(独語: カストーCastor )に入れられて再びドイツに戻ることになるのだが、このカストー輸送の最終目的地がゴアレーベン核廃棄物処理施設となるのであるそのため、カストー(核廃棄物 )輸送がある度に反核者たちの力強い抗議運動が繰り返されてきた。
一番最初にフランスのラ・アーグ再処理工場からゴアレーベンに向けてカストー輸送がなされたのは1995年の4 月であった。その際は、4,000人の反対デモ参加者があり、7,600人の警察が動員された。それ以来、カストー輸送がある度に、輸送を阻止しようとするデモ隊の抵抗が続いている。反核活動者は、カストー輸送列車が通る線路上に自分達を鎖でつなげたり、線路上に座り込んだり、輸送車が通る道路に障害物を置いたり、大きなコンクリートのブロックを置いてブロックに鎖で自分達を繋げて輸送車が通るのを阻止しようと試みたりして、毎回、工夫を凝らした命がけの「無暴力抗議アクション」を行ってきている。2011年11月のカストー輸送阻止デモには19,000人の警察官が動員されている。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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