ドイツ・グリーンピースも「UNSCEARのフクシマ最終報告書」を批判

先日は、4月 2に公表されましたUNSCEAR作成のフクシマ最終報告書を、IPPNWドイツ支部 のAlex Rosen 医学博士が厳しく批判していることを「ちきゅう座」でご紹介させて戴きました(https://chikyuza.net/archives/44039)。ドイツ・グリーンピースも同様に、「国連はフクシマ原子力災害の影響結果を過小評価」と題した記事をサイトにアップし、IUNSCEARフクシマ最終報告書に対する非常にクリティカルな見解を述べています。それを和訳してご紹介させて戴きます。

原文へのリンクです。:

http://www.greenpeace.de/themen/un-verharmlost-fukushima-folgen

 

 

 

グリーンピース・ドイツ支部 (Greenpeace Deutschland)から

筆者: コリネリア・デッペ-ブルグハルト (Cornelia Deppe-Burghardt)

国連は フクシマ原子力災害の影響結果を過小評価

2014年 4月 23日

(和訳: グローガー理恵 )

 

 

 

国連 (UNSCEAR) の報告書は、原子力大災害がもたらす健康被害を過小評価している。健康被害について、信頼性のある評価をすることなどは、未だ全く不可能なのである。しかも、日本の政府は原子炉 (複数)を再び稼働させたいと願っている。

 

グリーンピースの原子力専門家、ハインツ・スミタル(Heinz Smital)にとって、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)作成のフクシマ報告書が出るのは、余りにも早過ぎるのである。UNSCEAR報告書は、フクシマ核災害の影響結果を過小評価することにより、原子力産業の側に立っている。

スミタルは、フクシマと1986年のチェルノブイリ原子力大災害の影響結果とを比較している。その簡潔な分析は、ウクライナと日本の政府が、それぞれに異なった評価基準に基づき対応したことを示している。 2011年の日本の核大災害への対応よりも、チェルノブイリの大災害後においては、明らかに、被災者達の防護を、もっと重要な優先事項としていた。

 

2011年 3 月14日には、すでに – 何回かの想定可能な最大規模の原発事故 ( 独語:GAU-größter anzunehmender Unfall ) から3日後 – 福島第一原発から放出された放射能量が非常に多量であったので、国際原子力事象評価尺度 (INES-International Nuclear Event Scale) に基づき、福島第一原発事故は「最も高いレベル7」であると評価され、健康被害が広範囲に及ぶことが予想されている。原発から20キロ圏内に住む人々の避難が、未だ終了していなかったため、多くの人々が高い被曝線量を浴びる結果となった。ヨウ素剤の予防摂取はなく、いわゆるカオスの中で、重要な情報伝達が無視され、また、重大な情報伝達への取り組みもなかった。それにもかかわらず、UNSCEAR報告書は、フクシマ大惨事によってもたらされる健康被害はない、と仮定しているのである。
チェルノブイリ原発大災害後に行われた調査は、事故から17年後に初めて、青少年における甲状腺がん発生率がピークに達したことを明示している。がん発生率は、(チェルノブイリ事故により) 被曝した以前の発生率よりも、数百倍高い数字となっている。(大人と比べると) 子供達は、体尺 (体の寸法)がより小さいため、自分たちの内臓を放射線から遮蔽できる可能性が限られてしまう。そのため、子供達は大人よりも、もっと高い放射線量を被曝してしまうことになる。

 

UNSCEAR報告書は、より高い放射線量を被曝した個々のグループの被曝線量を隠して、もっと大きい人口集団にわたった被曝線量を平均した値を出している。しかし、その平均値でさえも高いのである。例を挙げれば、福島市では、(原発事故が発生した)最初の1年間に、子供達が約8ミリシーベルトの平均被曝線量(実効線量 )を受けた、となっている。チェルノブイリの判断基準によるなら、福島市は移住 ( 避難 )区域となっていたことになる。

 

 

更に、UNSCEAR報告書は、特に放射線に敏感でリスクに晒されやすい胎芽/胎児グループを、別の単独グループとして考慮していないのである。流産や乳児死亡率の著しい増加が、チェルノブイリにおいても、フクシマにおいても既に、確認されている。(複数の)調査 が、1ミリシーベルト範囲の低線量被曝で既に、健康被害が発生することを明示している。

 

今日では、低線量の被曝でも健康に悪影響を及ぼすことが、科学的に認められている。放射線防護における重大な原則は、被曝線量の許容限定値を定めることばかりでなく、被曝を避け被曝を最小限に抑えることを義務として定めている。しかし、UNSCEAR報告書は、これらの事実を無視している。それゆえに、UNSCEARは放射能の放出がもたらす健康への影響結果を故意に過小評価し、被災した人々よりも原子力産業の利益を重要視しているのではないかとの疑惑に、自らを晒していることになるのである。

 

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2609:140503〕