ドイツ全土での学校ストライキ:「我々は あなた方の戦争で戦わない!- WIR KÄMPFEN NICHT IN EUREN KRIEGEN!」と 叫ぶ ドイツの若者たち

12月5日、「我々はあなた方の戦争で戦わない!(WIR KÄMPFEN NICHT IN EUREN KRIEGEN!)」とのバナーを掲げてベルリンを行進する若者たち 

[Source: Times of India]

はじめに

12月5日、ドイツ連邦議会は独連邦軍の兵士を増やすため、新しい兵役制度を導入する法案を可決した。この法律は2026年1月に施行される予定であり、独連邦軍は18歳の男性全員に適性検査を義務づけ、志願者から対象者を選ぶことになる。2027年からは、義務的な身体検査も追加される。

連邦軍が目指すところは、昨年末時点で約18万1千人だった兵士を2035年までに26万人に増やし、予備兵も20万人の確保することだという。しかし、兵士が十分に集まらない場合は2011年に停止した徴兵制が再開されることになるという。連邦政府は、十分な数の志願者が集まらない場合は徴兵制を導入することをすでに明らかにしている。

この新兵役制度導入の背景には、ロシアとの和平交渉を拒み、「ロシアの脅威」を主張するドイツのエリートたちの存在がある。

ちなみに、11月27日、プーチン大統領は、ロシア主導の軍事同盟である集団安全保障条約機構(CSTO)の首脳会議に出席した キルギスの首都ビシュケクで、ロシアが欧州攻撃を計画しているとするヨーロッパの主張を「まったくのでたらめだ」と断言し、「ロシアは別の欧州国家を攻撃しないということを文書で保証する用意がある」と述べている。さらに12月2日、プーチン大統領は、ドナルド・トランプ米大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏や特使のスティーブ・ウィトコフ氏らの米国代表団との会談前に、「我々はヨーロッパと戦うつもりはない。これは既に百回も言ってきたことだ」と語り、同時に、「もしヨーロッパが戦いを望むのなら、ロシアはそのような紛争に対する準備はできている」とも述べている。しかしヨーロッパのエリートたちは、このようなプーチン大統領の発言を完全に無視している。

《立ち上がったドイツ全国の学校の生徒たち》

徴兵制度の施行が予測される新兵役制度の導入を受けて、立ち上がったのがドイツ全土の学校の生徒たちである。

まず生徒たちは「反軍国主義運動」実施のために、全国の約90の都市において学校ストライキ委員会を設けた。さらに彼らは、国家が数十億ユーロを軍備にではなく、教育制度の改革、より良い職業訓練の場、気候変動の危機への対策にあてるよう要求している。生徒たちの要求は、GEW [教育・科学労働組合]青年部などのさまざまな労働組合組織やDFG-VK [ドイツ平和協会 –  統一反戦者協会] などの平和運動団体、さらに左派政党の一部やBSW [ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟] からも支持されている。

学校ストライキの主催者であるロンヤ・ルー(Ronja Ruh)氏は、ドイツでは「信じられないほどの巨額が軍事と軍備に費やされている一方で、基本的な公共サービスには資金が不足している。とりわけ学校には、時代遅れの技術、教師の著しい不足、老朽化した校舎といった問題がある」と述べている。

12月5日、ドイツの100以上の都市で行われた学校ストライキ

 ホームメードの「WEHRPFLICHT NEIN DANKE!- 兵役義務はゴメンだ!」と書かれたプラカードを掲げる生徒たち [Source:Nie Wieder Krieg ]

そして12月5日、金曜日、ドイ全国で徴兵制に反対する生徒たちの”学校ストライキ” がe行われた。学校ストライキを支援する平和運動団体のひとつである”Nie Wieder Krieg (もう2度と戦争をやらない)”の報告によると、「学校ストライキは大成功をおさめた。100以上の都市で55,000人以上の若者が集まり街頭でデモを行った」とのことだ。

学校ストライキに対する弾圧》

金曜日という平日に生徒たちが学校を休んでストライキに参加したこと、そして、これだけの数の若者たちが抗議運動のために集まったということは画期的なことである。なぜなら、ドイツ全土の教育省および文化省が、学校長たちに書簡を送り、その書簡には学校ストライキへの参加は、無断欠席、6点(最低点)の評価、さらには放校処分につながるということが明記されているからである。 

学校ストライキに批判的な見解を示しているマスメディアもある。例えば、12月4日、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の論評は「この国を防護する価値がないと考える者は役に立たない」と述べている。

それでも、「そんな弾圧に負けて東部戦線の塹壕で死ぬよりは、ずっとましだ」と、生徒たちは勇気を奮って学校ストライキに参加した。 

12月5日、ベルリンでの学校ストライキ  ホームメードの「戦争と戦え ー  (KRIEG DEM KRIEG)」と書かれたプラカードを掲げる若者 [Source: Times of India]

《次のストライキ日は2026年3月5日》

学校ストライキ呼びかけ団体のひとつNie Wieder Krieg (もう二度と戦争をやらない)は: 『12月5日以降も引き続き積極的に活動することだ。次のストライキの日である来年の3月5日まで、もっと多くの学校や地域で学校ストライキ委員会を設け、学校における独連邦軍(Bundeswehr)の宣伝活動に反対し、3月5日にはもっと多くの生徒たちとともに街頭で抗議活動を行うことが重要だ。』と述べている。

《若者たちよガンバレ!》

「爆弾ではなく本だ!自分たちの将来は自分たちで選ぶのだ!」と訴える、尊い若者たちの勇気ある抗議運動が成功することを願ってやまない。

【注】なお、12月5日の生徒ストライキの様子を「Times of India 」のYoutube サイトでごらんになることができます。英語ですが興味のある方、どうぞごらんになってみてください。リンクは:https://www.youtube.com/watch?v=zUNEDiXgBjI

〈スペイン・アンダルシアにて ー 2025年12月17日 記〉

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/                            〔eye6081 : 251218〕