ドイツ紙 ”Die Welt”から: ドイツ人の6人に1人が貧困の罠に脅かされている

「私たちは、この9年間に多くのことをなし遂げました!」

と、メルケル独首相は2014年12月に開かれたCDU(ドイツキリスト教民主同盟)党大会で、自分自身の政権を讃えた。

そして、彼女は、こう付け加えた:  「私たちがこの9年間になし遂げたことは: さらに強化された中小企業、300万人以下の失業者数、手取り賃金の上昇、安定した物価、年金保険が下がったことです。」*

果たして、彼女が主張する、メルケル政権がなし遂げたという、これら全ての事柄が真実であるのか、これらについては、一つ一つを詳しく掘り下げていく必要があるのではないかと、私は思う。

ただ、確実に言えることがある。 それは、ドイツには貧困に脅かされた子供達が数多く存在するということである: ドイツの子供たちの19%が貧困に脅かされており、それを具体的な数値で表すと、およそ240万人の子供たち(18歳未満)が貧困状況に置かされているということになるのである。** 多くのドイツ国民が直面している問題は貧困であり、メルケル政権が描こうとしている経済豊かなドイツのイメージとは、ほど遠いものなのである。

その証とも言える、メルケル政権のプロパガンダの幻覚から覚めさせるような記事が”Die Welt”に、「ドイツ人の6人に1人が貧困の罠に脅かされている」 というヘッドラインで掲載されている。 それを抄訳してご紹介させて戴く。

原文へのリンク: http://www.welt.de/wirtschaft/article136734154/Jedem-sechsten-Deutschen-droht-die-Armutsfalle.html

 

ドイツ紙 ”Die Welt” から: ドイツ人の6人に1人が貧困の罠に脅かされている

 

低収入

ドイツ人の6人に1人が貧困の罠に脅かされている

2015年1月24日

著者: ナンド・ゾマーフェルト (Nando Sommerfeldt)

(抄訳: グローガー理恵)

 

ドイツ連邦統計局が警戒すべきデータを呈示している。 貧困化するリスクが、これまでになかったほどに高くなっているのである。 また、310万人の就業者が、彼らの稼ぐ収入が余りにも低いために、貧困レベル境界線以下へと落ち込んでいる。

ドイツでは、明らかに自分たちの収入だけでは生活を営むことが殆ど不可能であるいう就業者達が、増加し続けている。

”Saarbrücker 新聞” が報道しているように、2013年末のドイツ連邦統計局によれば、約310万人の就業者が貧困レベル境界線以下に含まれるという。 この数値は、2008年においてはまだ約250万人であった。 25%の上昇率である。 ましてや、所謂 ”貧困リスク率” が、16.1%という記録的レベルにある。

 

「貧困リスクに晒された人」とは、例えば、住居補助金もしくは子供手当てのような国からの全ての給付金も含めて、得る収入の額が、平均所得の60%を下まわる人のことである。 2013年のドイツにおける、この「しきい値」は、一月当たりの手取り収入額979ユーロであった。 また、子供二人を持った家庭における一月当たりの手取り収入額が2056ユーロよりも低い場合、その家庭は貧困リスクにあると見なされる。

 

多くの人たちにとって休暇をとることは不可能

統計学者達による一つの特別な分析が、多数のドイツ市民における好ましくない状況について、ある明確な見識を提供してくれている。 特別分析は次の事柄を明らかにしている:

ⓐ 2013年に、379,000人の貧困化リスクにある就業者達が、自分たちの家賃を支払い期限までに支払うことができなかったこと

ⓑ 417,000人が必要に応じ適切に暖房することを断念したこと

ⓒ 538,000人が、十分な食事を2日毎に一度だけとったのみで、食費を切りつめていたこと

 

これら貧困層に属する人々の中で、およそ2人に1人(150万人)が、年に一度の一週間の休暇を、自分の住居から離れて、どこかに出かけて過ごせるような金銭的余裕がなかった。 また、ほぼ60万人が、金銭的余裕がないため自家用車一台持つことを断念している。 これらのデータは世帯調査をベースにしている。

左派党 (Die Linke) の労働市場政策スポークスパースンであるサビネ・ツィマーマンは、この有害な傾向に対処するために最低賃金を迅速に10ユーロに引き上げることを要求している。 その他に、一時雇用やミニジョブ***のような雇用期間の限定を抑制するか廃止することが重要である。

 

また、平均貧困リスク率が16.1% というドイツは、他のヨーロッパの国々と比較して、よい状況を呈示していないと認識することが、事実に即している。  危機に陥っているアイルランド (15.2%) や不健全な状態にあるフランス (14.1%)がもっと低い貧困リスク率を示している中で、 ヨーロッパ大陸最大の国家経済と経済の表看板を掲げるドイツにとって、16.1%という貧困リスク率は確かに不名誉なことである。

 

以上

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*ソース: Zeit Onlineニュース  http://www.zeit.de/politik/deutschland/2014-12/cdu-parteitag-angela-merkel

 

**ソース: http://www.west-info.eu/child-poverty-germany/wsi_report_11_kinderarmut-4/

 

***ミニジョブ(400ユーロ・ジョブ): 2003年から2004年にかけてゲアハルト・シュレーダー政権によって導入された労働市場改革政策のひとつ。 シュレーダー政権は派遣労働、期間労働を解禁したほかに、ミニジョブ制度を導入した。 月収が450ユーロ以下だと労働者の所得税と社会保険料が免除される。  (ソース:Wikipedia)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5149:150201〕