2017年11月14日、国連人権理事会は日本の人権状況を審査する作業部会を実施した。審査の結果文書は同年の11月16日に作業部会で採択され、2018年3月、国連人権理事会本会合にて「日本政府審査・結果文書」が正式に採択された。[注1]
「日本政府審査・結果文書」とは、国連人権理事会から日本政府にあてられた日本における人権状況についての勧告である。勧告は217項目から成り立っていて、そのうちの4項目には福島原発事故の被災者の人権状況を改善するための具体的な勧告が提示されてある。日本政府は、これら4項目の勧告を「フォローアップすることに同意する」と公表した。[注2]
ドイツIPPNW(核戦争防止国際医師会議 )*は、日本政府が福島被災者についての人事理事会からの勧告を受け入れ同意したことについて、日本政府は言行を一致させなければならない、と訴えている。すなわち、日本政府は単に勧告に同意すると公表するだけではなく、実際に勧告に従って行動せよ、とIPPNWは要求している。
-《訳注》福島原発事故被災者の人権に関する勧告の部分は、IPPNWプレスリリースの原文(独語)を和訳せずに、日本外務省のサイトにアップされている「日本政府審査・勧告に対する我が国対応(仮訳)」にある勧告を、そのまま使わせていただいた。
IPPNW プレスリリース原文ヘのリンク:Fukushima: Den Worten müssen Taten folgen
IPPNWプレスリリース ― 2018年4月13日
フクシマ:言行は一致しなければならない
IPPNW (核戦争防止国際医師会議 )は避難者が福島地域へ帰還することを懸念する
(和訳:グローガー理恵)
国連人権理事会は日本政府に、「福島原発事故避難者の人権状況を改善するように」と勧告した:核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部は、日本政府に、この国連人権理事会の勧告を迅速に履行せよ、と訴える。
「我々の見解では、とくに放射線被曝に敏感な妊婦、子どもたち、免疫力不全な人たち、遺伝的にがんに罹患しやすい人たちが【年間1ミリシーベルト】以上の追加被曝線量を浴びないということが極めて重大になってきます。したがって、住民に、通常なら原子力労働者だけが浴びるような被ばく線量である【年間20ミリシーベルト】までの線量を許容するようにと強いることは容認できなません」と、IPPNW議長/アレックス・ローゼン医学博士は強調する。
福島第一原発事故の発生後、およそ20万人の住民が故郷を離れることを余儀なくさせられた。日本政府は、避難者が放射能汚染された区域に帰還することを強制している。このために日本政府は近年の間に、年間の追加被ばく線量【1ミリシーベルト】という国際基準である被ばく許容線量から遠ざかり、明らかにもっと高い放射線量が表示されている区域への帰還を許可している。
とくに、2019年の3月には避難者のための経済援助を打ちきるとの脅かしは、人々を帰還させるための圧迫手段として解釈される。強制避難者ではなく、2011年に自発的に放射能汚染地域を離れた自主避難者への経済援助 (住宅家賃等の支援)は2017年にすでに打ち切られている。日本政府は、「日本人は原発事故のトラウマを忘れて、前向きに未来のことを考えるべきである」と、何度も指示した。
国連人権理事会は人権侵害の是正勧告として、日本政府に対して「福島原発事故被災者の人権状況を改善すること」を要求していた。そして、強い国際的圧力を受けた日本政府は、2018年3月、「政府は今後、国連人権理事会の勧告を履行するつもりである」と公表したのである。
そして今、人権擁護に取り組む人権弁護士たちは、「日本政府は、人権理事会の勧告にフォローアップすることに同意する」と公表したのであるから、政府は今後、この公表内容に従い行動し、言行を一致させていかねばならない」と、日本政府に要求している。ドイツ、オーストリア、ポルトガル、メキシコからの代表者たちが4項目の具体的な勧告を提示した:
ドイツ:特に許容放射線量を年間1ミリシーベルト以下に戻し、避難者及び住民への支援を継続することによって、福島地域に住んでいる人々、特に妊婦及び児童の最高水準の心身の健康に対する権利を尊重すること。
オーストリア:福島の高放射線地域からの自主避難者に対して、住宅、金銭その他の生活援助や被災者、特に事故当時子供だった人への定期的な健康モニタリングなどの支援提供を継続すること。
ポルトガル:男性及び女性の両方に対して再定住に関する意思決定プロセスへの完全かつ平等な参加を確保するために、福島第一原発事故の全ての被災者に国内避難民に関する指導原則を適用すること。
メキシコ:福島原発事故の被災者及び何世代もの核兵器被害者に対して、医療サービスへのアクセスを保証すること。
公表されたフクシマ超大規模原子力事故による放射能放出量を基にすると、日本において4,000件から16,000件のがん疾病が過剰発生すること、および、そのうち2,000件から9,000件のがん死が発生することが予測される。
「今日すでに、我々は、いわゆる”スクリーニング効果”という言葉では説明できない甲状腺がん症例の著しい増加を見ています。福島県だけでも、すでに160人の子どもたちが、急速な腫瘍の増大や明らかな転移が見つかったことや、生命維持に関わる重要器官が危険に晒されていたケースがあったために手術を受けなければなりませんでした。しかも、最初の手術を受けた後に悪性度の高い進行性がんが再発したため再手術を受けなければならなかった子どもたちも何人かいるのです」と、ローゼン医師は述べる。
以上
*IPPNW(International Physicians for the Prevention of Nuclear War – 核戦争防止国際医師会議):核戦争を医療関係者の立場から防止する活動を行うための国際組織で、1980年に設立された。1985年にノーベル平和賞を受賞。(ソース:Wikipedia)
〔注1〕外務省サイトに掲載された「日本政府審査・結果文書」へのリンク:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000346504.pdf
〔注2〕外務省サイトに掲載された「日本政府審査・勧告に対する我が国対応(仮訳)」へのリンク:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000346502.pdf
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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