ノキアの凋落に注目  存在感ない日本勢はガラパゴス路線も破綻か

著者: 浅川 修史 あさかわ・しゅうし : 在野研究者
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携帯電話端末に大きな変化が出ている。
 今後を独断と偏見を恐れず占ってみる。 
 
 1 <ノキアの凋落>

  最近は鳴りやんだが、一時「日本は北欧に見習え」という記事、番組が   盛んに新聞、テレビで流された。なぜ、北欧に見習うのか。「消費税が高くとも社会福祉が充実し、国民が幸せに暮らしている」という、テンプレート記事が主流だが、筆者は裏で糸を引いているのは財務省の増税路線ではないかと妄想した。
 
  続いて、北欧見習え派が紹介したのは、世界1の携帯電話端末会社であるフィンランドのノキア社だった。フィンランドのような人口の少ない国でも世界1の会社があるし、つくれるというプロパガンダだったような気がする。
 
  ところが、携帯電話端末がスマートフォン(コンピュータ端末+携帯電話)に需要のメインストリームが移るにつれてノキアの凋落が認識されるようになった。ノキアに変って世界1になったのが韓国のサムスンである。
 
  ノキアに部品を納めているある日本のメーカーは、「ノキアに依存して成長したが、もうだめかもしれない」と語る。ノキアはまだ世界有数の携帯電話端末会社だが、潮目は変わった。
 
  そもそも人口で世界のトップ10に位置する大国日本が、なぜ人口1000万人以下の北欧諸国を参照しなければならないのか。参照するならドイツ、フランス、連合王国だろう。
 
 
 2 <据え置きPCは縮小し、スマートフォンやタブレットPCの時代へ>
 
  業務用では据え置きPCやノートPCがこれからも使われるが、個人、特に若者はスマートフォンやTABがメインになるだろう。
 
 
 3 <ガラパゴス路線も破綻>
 
  日本だけでしか通用しない製品を自虐的にガラパゴス製品と呼ぶ。シャープが情報端末のOS(基本ソフトウェア)をアンドロイド(グーグルが開発)に切り替える。ガラパゴスではなくなる。ついにガラパゴス路線も破たんしたことになる。
 

 4 <日本人の好きなガダルカナル攻防戦>
 
  日本メーカーはMS-DOSを日本的に作り込み、PC-9800対その他のコップの中の闘いに時間を空費して全滅した。今回も、日本のAndroid端末はPC-9800を思い起こさせる。歴史は繰り返すのだろうか・・・
 
  第二次世界大戦でも同様のことが繰り返された。ガダルカナル、ニューギニア、インパール、大陸打通作戦など。
 
  MSのビル・ゲイツ会長、サムスンのイ・ゴンヒ会長は、1980年代以降、日本にしばしば来て、技術や製品開発の情報を丹念に集めて、インスパイアされてきたと聞く。その日本がなぜ総合力を発揮できないのかという疑問が尽きない。
 

  5 <クルマの未来は>
 
  内燃機関が1個、変速機は1個、タイヤが4個、ステアリングは1個、こうした基本設計が100年以上変わっていない。基本設計が変わらないので、日本が得意とするカイゼンで勝てるからだ。ただ、電気自動車になるとモーターと蓄電池の世界になるので、日本が世界1の座を守れるかどうか怪しくなる。
 
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以下 参考記事
 
①池田信夫氏のブログから
2011年06月18日   

スマートフォンのいつか来た道

地味なニュースだが、最近ちょっと注目されたのは、RIMが業績不振でレイオフを行ない、株価が暴落したという事件だ。日本ではほとんど知られていないが、RIMのBlackberryはアメリカではビジネスマンの必需品で、オバマ大統領もヘビーユーザーだ。かつては「スマートフォン」といえば、Blackberryのことだった。ところがここ1年でアップル(iOS)に抜かれ、さらにグーグル(Android)に抜かれて4位に転落し、シェアが急落している(ITmediaより)。

 

これを見て80年代のコンピュータ産業を思い出す人は、この業界の古手だ。現在のスマートフォンの性能は当時のPCをはるかに上回るので、同じことが起こるのは当然だ。RIMは、さしずめCP/Mというところだろうか。8ビット時代はほぼ唯一のOSで、16ビットでもデファクト標準だったが、IBM-PCにMS-DOS(実はCP/Mのコピー)が搭載されたため、急速に勢いを失った。

前年比6倍を超える急成長を続けているAndroidは、80年代のMS-DOS(およびWindows)である。歴史が教訓になるとすれば、Androidが圧倒的なシェアを得てRIMを駆逐してしまうだろう。iOSは、まだシェアは前年並みとふんばっているが、ジリ貧だ。iCloudなどのインフラも、1社だけでは規模の経済が生きないのでグーグルには勝てない。最終的にはMacOSのようなニッチになるのではないか。

印象的なのは、ノキアの凋落である。スマートフォン全体が88%成長している中で30%しか伸びていないというのは、もう負け組だ。かつては世界のシェアの半分近くを占める圧倒的なナンバーワンだったが、スマートフォンへの対応を誤って業績が悪化し、Symbianを捨ててWindows Phoneを採用するという決定も市場からブーイングを受けた。MSはひとり負けだ。

ハードウェアでみると、AndroidのトップメーカーはHTCとサムスンで、この2社でシェアの半分を占める。日本メーカーの姿は、世界市場ではどこにも見えない。80年代にも、アジアのメーカーが世界標準のIBM-PC互換機を低価格で生産してアメリカ市場に食い込み、生産基地の座を奪ったのに対して、日本メーカーはMS-DOSを日本的に作り込み、PC-9800対その他のコップの中の闘いに時間を空費して全滅した。今回も、日本のAndroid端末はPC-9800を思い起こさせる。歴史は繰り返すのだろうか・・・
 
②アサヒコムから  7月17日 
ガラパゴスOSをアンドロイドに変更 書籍専用から転換
 シャープは14日、情報端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」の基本ソフト(OS)をアンドロイドに変更するシステムソフトを提供すると発表した。これまではリナックスをベースにしたソフトを使って「電子書籍専用端末」としていたが、音楽配信やゲームなど多くのアプリケーションを楽しめるようにする。
 アンドロイドに変更するシステムソフトは25日からダウンロードできる。
 ガラパゴスは昨年末に発売したが、販売は思うように伸びていなかった。当初は、電子書籍専用端末にすることで、電子書籍の使いやすさを追求したが、スマートフォン(多機能携帯電話)の普及で、電子書籍以外の配信を受けたい人が増えているため、方針を転換する。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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