橋下徹とかいう大阪の市長が人気らしい。
『現代思想』5月号は「大阪」という特集を組み、昨日(6月19日)の東京新聞は「「橋下流」政治(「ハシズム」)なぜ人気?」という記事を掲載している。
・公務員や教師や「学者」などを「敵」として名指して感情的に攻撃し、支持を得る典型的な「ポピュリズム」
・選挙で選ばれた自分を民意の体現者として演出し、自分を批判するものを「民主主義の敵対者」として排除する
・強権的な手法で「強いリーダーシップ」を演出して支持を獲得する
・争点の単純化と詭弁と恫愒
・新自由主義と権威主義的国家主義のごった煮
・朝令暮改的にころころ変わる政治方針の一貫性のなさ
このような特徴を持つハシゲ現象はしかし、所詮、政治不信の泥沼に咲く徒花にすぎず、一過性の現象にすぎないだろう。ハシゲの政策や言動を分析し、その矛盾や荒唐無稽さや違憲性や危険性を指摘する人々はたくさんいるし、そうした批判作業に私も敬意を表する。しかし問題は、ハシゲ人気が遠くない将来、失墜したとしても、第2、第3のハシゲ的なるものが登場してくる危険性である。つまり、ハシゲ的ポピュリズムを培養している腐葉土こそ問題の根源として分析すべきであろう。
ここで参照すべきは、今世紀に入って目立っている欧州における右翼ポピュリズム政党の台頭である。イタリアの北部同盟や国民同盟、フランスの国民戦線、英国のイギリス防衛同盟や英国国民党、オランダの自由党やピム・フォルタイン党、オーストリアの自由党やドイツの国家民主党、スイスの人民党やスウェーデン民主党、デンマークの人民党やノルウェーの進歩党などなどである。このような極右政党が今世紀に入って欧州各国で台頭してきた背景には、高い失業率と不況の長期化の中で、特に若年層を中心に「新しい貧困層」が広がってきたことと、彼らの不満を代弁する政治的回路が逼塞していることが挙げられる。「政治的回路の逼塞」とは、具体的には、社会民主主義政党の中道政党化(「第三の道」)によって保守政党との差が縮まり、弱者・貧困層を政治的に代弁する主要政党がなくなったことを指している。このような中で、被害感情や憎悪感情を抱く若年貧困層を中心とする人々が、「イスラム系移民」、「EUのエリート」、「多文化主義」を敵視する右翼ポピュリスト政治家の主張に吸引されていることが極右政党台頭の主な要因となっているのである。
欧州と日本とではもちろん状況が異なる面も少なくない。しかし、「イスラム系移民」の代わりに、「在日外国人」や「北朝鮮」、「韓国」、「中国」を当てはめれば、彼我の極右の主張には明らかな類似性も見られるだろう。特に、ハシゲ現象が顕著になるのは、2009年の政権交代時に高まった改革への期待が、わずか1年も経たないうちに、急激な失望と幻滅に変わって以降であり、2大政党制の実現が、国政における大衆的要求の政治的回路の閉塞の別名にすぎないことが明白になったことが大きな背景要因である。この点でも、大衆の政治的回路の閉塞状況が極右ポピュリズム台頭の原因になっているという意味で、欧州との共通点を見ることができよう。
この2大政党「一党制」とでも言うべき絶望的な民主主義の閉塞状況と対決しなければならないという点では、脱原発運動をはじめとする「新しい社会運動」も同様である。これらの「下からの民主主義」が2大政党による既得権益保護システムに風穴を開けることができるか否かが、ハシゲ的なる「疑似民主主義」的独裁制の本格的台頭を回避しうるか否かの鍵ともなろう。