バンコクで「とっとこハム太郎」

著者: 藤澤豊 ふじさわゆたか : ビジネス傭兵
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もうご覧になった方も多いと思うが、ヤフーニュースがおもわず微笑んでしまうニュースを伝えてきた。タイトルは、「『♪大好きなのは納税者のお金』“ハム太郎”替え歌で反政府デモ タイ(2020年7月27日)」

https://www.youtube.com/watch?v=pvadEO3zsgc

 

幼稚園から小学校低学年向けの「とっとこハム太郎」の替え歌を歌いながら高校生がデモで走っている。注意して聞かないと聞き逃すが、確かに「ハムタロー」と聞こえる。場所はタイのバンコク。

解説にでてきた高校生の話では、

ハム太郎のテーマソングにある「大好きなのはヒマワリの種」が「大好きなのは納税者のお金」と韻を踏んでいることから生まれた替え歌だという。

税金を浪費している政府を風刺してことで、「国会の解散」、「憲法改正」に「政府批判者への嫌がられの中止」を要求している。

 

工業化が進んで、社会経済構造が変わっていくなかで、最近の言葉で言えばポピュリストのタクシンがでてきたと思ったら、軍事クーデターでひっくり返った。かと思ったらまたタクシンが、そしてまたクーデターと政変が続いてきた。タクシンの登場以降クーデターは、かつてのように旧利権層内のゴタゴタによるものではない。経済発展を続ける時代の要請に逆行して、軍部を中心にした旧守勢力が旧来の政治体制をたもとうとしているようにしかみえない。

急速に変わってきてはいるが仏教のしばりと王政はしっかり残っている。賢王と言われたラーマ九世の治世下では、新旧の利権層や軍部との調整もきいていたが、後を引き継いだ十世にはそこまでのカリスマ性がない。産業化が進んだタイでは、かつてのように上意下達の政策では社会が動かなくなっている。

 

YouTubeの日付を見てほしい。7月27日に意味がある。翌28日はラーマ十世の六八歳の誕生日。当然国を挙げてのハレの日。タイには不敬罪がしっかり残っている。国王や王族の瀟洒な生活を伝えるような記事でも書こうものなら、三年から十五年の禁固刑を覚悟しなければならない。

 

ところが、国王の誕生日のお祝いだというのに、肝心のラーマ十世は臣下を引き連れてドイツのホテルで遊興三昧。コロナウィルス禍で混乱している自国を気にする様子もなければ、帰国しそうな気配もない。

国王が長期滞在していることから、ドイツで亡命活動家や留学生を中心に王政廃止を訴えるデモが続いている。

「Die Welt」が29日付けで、デモの背景を伝えている。

「Thai protesters call for end of monarchy on king’s birthday」

https://www.dw.com/en/thai-protesters-call-for-end-of-monarchy-on-kings-birthday/a-54367300

御一行がお泊りのホテルは、Grand Hotel Sonnenbichl in Garmisch-Partenkirchen。Google Chromeでホテル名を入力して検索すれば、日本語でもさすが国王が長逗留するホテルだというのがでてくる。Google Mapでみれば、そこはミュンヘンから南にいってスイスとの国境に近いアルプス山麓の避暑地。

王が王なら王妃も王妃で、スティダー(Suthida)王妃は、スイスにご滞在。

 

誕生祝いはいいけれど、肝心かなめの国王が政治もなにもおっぽり出しまま。誰がなんのためのお祝いなのか。

もっとも故人や神話上の偶像でしかないものを担いでいるお祭りもあるぐらいだから、留守を守ってのお祝いのどこが悪いと言うヒトもいるかもしれない。

そんなお飾よりマンガのハム太郎のほうがよっぽどいいことだけは確かで、高校生、ハム太郎抱えて頑張れっ。年も年で孫でもいなけりゃ、ハム太郎、手にできないけど。

 

Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9992:200802〕