ベストミックス《電源の最適な組み合わせ》って何のことだ

2011年9月25日 連帯・共同ニュース第159号 

9条改憲阻止の会

■  9月23日の東京新聞は「政府が今後のエネルギーに関して、原発依存度の低減、再生可能エネルギーの促進、省エネの徹底を三本柱にした<ベストミックス>(電源の最適な組み合わせ)の具体案を来年三月までに作成する方針を固めた」と報じていた。目にした人も多いと思うがエネルギーの構成比を替えることで原発問題の解決を図ろうとするものである。典型的な官僚的な解決策であると言える。この考えは第一に原発の存在について基本的に問われていることを巧みに避けている。今回の原発震災は原子力エネルギーが他のエネルギーと本質的にどう違うかを明瞭にさせた。少なくともこのことについての認識や判断(見識)を要求するものだった。原発という存在が僕らにとって何であるかを問いかけた。政府は原発の存続にあたってこの点についての考えを明瞭にすべきであり、討議の過程も含めてこれを明らかにすべきである。原発震災が突き付けている問題への根本的な解答の欠如させたところでの原発政策もエネルギー政策もあり得ないのである。これは原発保持という維持政策を前提にした方針である。

■  ベストミックス《電源の最適な組み合わせ》というとき、ここには電源についての質的差異が無視され、単なる量の問題に還元されている。電力量でも、エネルギー量でもいいが、こうした量の問題にして論じることは分かりやすい。しかし、原子力エネルギーと他のエネルギーを並列化して論じることができないということの中に問題がある。例えば、安全性について並列化して論じられないことは常識である。火力発電だって、水力発電だって、あるいは風力発電だって安全性の問題はあり、事故の問題はある。しかし、これを原発と同列化して論じることはできない。そこには次元が違うといほどの差があるのだ。僕らが福島第一原発の状況の中に見ているのはこのことではないのか。未だに収束せず、周辺はゴ―ストタウン化し、被曝の影響は測りしれない現状は僕らにそのことを告げている。この一見すると通りやすく見える提起は本質的問題を隠す戦略的なものであり、日本の官僚権力や体制の論理である。政府がこの方針を固めたということは官僚主導体制が強くなったということである。電力量やエネルギー量、あるいはコスト問題などを議論するのはいい。しかし、その前にもっと重要なこと問われなければならない。彼らの問題提起の戦略の持つ欺瞞性には注意がいる。国民参加で議論というのはいいことだし、否定しないが、議論の枠組みの設定には心してかからねばならない。 (文責 三上治)