Ⅱマネーサプライの減少-借金の返済
反対に、政府が国民から徴収した税金で、累積借金を減らす行為に出たら、恐ろしいことが起こる。どのような恐ろしいことが起こるかはさておいて、実際にそのようなことをすると国民の預金総額は減少する。
具体的には、毎年10兆円ずつ税金によって、政府累積借金を減らしていくとすると、10年で100兆円。100年で1000兆円返すことができる計算になる。そうすると預金総額がどうなるかというと、これには信用創造機能の逆回転が働いているわけだから、同じく資金循環統計から、今ある日本国内の預金総額は、996兆円だから、996-10×100(年)=-4(兆円)となってしまう。お金とは、人々の経済活動によって、増加するものではないので、なんとも矛盾した結論に至ってしまうと思うのだが、いかが思われるだろう。
しかし、現代の日本人のほとんどが、知らず知らずであろうとも結果的にはこのような状況を求めているのではないのか。違うといわれても、それを具体的に示していただかなくては、私が得る結論はこのような不思議なものになってしまう。
つまり財政健全化行動とは日本民族を現在も未来も破綻に導く行動ではないのか?有識者のご見解を伺いたい。
Ⅰマネーサプライの増加-国民にお金を配る
マネーサプライは、本質的に決済能力を持たないお金。しかし預金者は、そのマネーサプライに属する「預金」で決済するほうが現金決済よりは明らかに便利である。経済活動の効率性も増す。しかしそれは、日常における銀行の営業努力や日銀の業務がマネーサプライというお金に決済性を持たせているからに他ならない。
さて、このマネーサプライというお金は、日銀によって直接的に増減させるものでなく、誰かが借金すれば同額が増えるというもの、特に銀行を介して、お金を貸し借りすれば、マネーサプライの一項目である預金マネーが借金額と同額増えるのである。これが銀行の信用創造機能。
しかしこの信用創造機能というメカニズムは一般社会では、ほとんど知られていない。さらにそれだけではなく、経済の専門家の間でも、このことは十分に意識されていないのではないか、そのように思える。そうでなければ、これほどまでに、政府累積赤字額1000兆円を厭う理由が理解できない。
政府が1000兆円借金をしたということは、民間がその同額の預金をしたということに等しい筈なのである。さらに1000兆円の借金を増せば、同様に、民間の預金も同額の1000兆円が増加するのである。
具体的に言えば、前述の2011年の資金循環統計から、家計の貯蓄額は771兆円、企業の貯蓄額は183兆円、一般政府の資金預託金は42兆円、合わせても996兆円である。もしこれに政府が1300兆円銀行に国債を買ってもらい、それで得たお金を、1億3千万人の国民一人ひとりに1000万円ずつ配ったとすれば、上記の預金総額は、996兆円+1300兆円=2296兆円になる。