メルケル首相がトランプ大統領の国連演説を真正面から「間違っている」と批判。発言要旨の翻訳

著者: 梶村太一郎 かじむらたいちろう : ドイツ・ベルリン在住/ジャーナリスト
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秋が迫るベルリンの首相府19,Sept.2017 Phpto:T.Kajimura

これは、一昨日の一九日に大変良い天気なので散歩がてらベルリンの首相府を通りかかると、秋が迫り建物の蔦が美しく色づき始めていましたので撮った写真です。

この日、ニューヨークの国連総会で、トランプ米大統領は初の演説をしましたが、その北朝鮮を「完全に破壊する」との言及に、ドイツのメルケル首相が真正面から間違いであると批判しました。⇨時事通信がいち早く伝えました
これはドイツの国営放送ドイッチェヴェレが昨日の20日に、首相の執務室(写真の赤丸のところ)で行った総選挙を前にしたインタヴューの中でまず最初に述べられました。

その時の写真を同放送のHPからお借りします。議員会館と国会が一望できる長めの素晴らしい 執務室です。メルケル首相の座っている椅子とそばのテーブルは、ドイツのバウハウスの家具の中でも最も古典的なデザインのものです。

Chefredakteurin Ines Pohl und Reporter Jaafar Abdul Karim beim DW-Interview mit Kanzlerin Angela Merkel

Photo:DW

さて余談はともかく、インタヴューは➡️「メルケル首相『北朝鮮問題ではトタンプと明確に意見を異にする』」との見出しで、ビデオとともに見ることができます。ドイツ語ができる方は、あるいは勉強中の方はそちらをどうぞ。

以下このインタヴューとそれを基にした記事の中で、首相のオリジナルの発言(緑色)を訳出しておきます。
まずは、トランプ大統領の北朝鮮を「完全に破壊する」との発言についての編集長の質問に、メルケル首相は、

“Ich bin gegen eine solche Drohung. Und ich muss auch sagen, dass ich für mich und für die Bundesregierung sage:  Wir halten jede Art von militärischer Lösung für absolut unangemessen und wir setzen auf diplomatische Bemühungen. Das muss mit allem Nachdruck voran gebracht werden. Da sind aus meiner Sicht auch Sanktionen und die Umsetzung dieser Sanktionen die richtige Antwort. Aber alles andere halte ich im Zusammenhang mit Nordkorea für falsch!”

私はそのような脅しには反対です。私が、私自身と連邦政府のためにも述べなければならないのは:私たちはいかなる種類の軍事的解決も完全に不適当であるとみなしており、私たちは外交努力に賭けるということです。これはあらゆる力を持って前進されるべきです。私の見解からすれば、制裁と制裁の実施もまた正しい解答だと思います。しかし私はそれ以外のすべての方法は、北朝鮮との関連では間違っているとみなします」

と答えた上で、メルケル首相は「国連演説の後には話していないが、数日前にトランプ大統領に、このような私の見解を電話で伝えた」と述べています。

「私たちは問題の解決に援助できます」として以下のように続けています:

“Auch wenn es räumlich weit weg ist von Deutschland, so ist es ein Konflikt, der auch uns betrifft. Und ich bin deshalb bereit und auch der Außenminister ist bereit, hier Verantwortung zu übernehmen. Wir haben im Iran-Abkommen, das ich für richtig halte, nach wie vor für besser als kein Abkommen zu haben, auch mit verhandelt. Das hat viele Jahre gedauert, aber hat zum Schluss doch eine Eingrenzung der Möglichkeiten des Iran zu einer nuklearen Aufrüstung gebracht. Und diesen Weg – oder einen ähnlichen Weg – muss man natürlich mit Russland, mit China, zusammen mit den Vereinigten Staaten gehen, auch in diesem Falle von Nordkorea.”

「空間的にはドイツから非常に離れたところの問題であろうとも、この紛争は私たちにも及ぶものです。ですから私もまた外務大臣もこの問題で責任を引き受ける準備があります。私も正しいとみなしているイランとの協定では、これは協定がないよりもはるかに良いものですが、私たちは交渉に加わりました。これは何年もかかりましたが、最終的にはイランの核武装の可能性の制限に至りました。この方法、あるいは似たような方法を、ロシア、中国、アメリカ、この件では北朝鮮とともに追求すべきです」 

解説記事では、私が330331で指摘しておいたように、ドイツは東独時代の遺産で、北朝鮮とお互いに大使館を持っている数少ない欧州の国の一つであること、さらに2013年にはベルリンのホテルでアメリカと北朝鮮の秘密交渉が行われたことを指摘しています。
そしてこの件で金正恩総書記と直接に接触するつもりはあるかとの問いには、

“Das steht jetzt nicht auf der Tagesordnung. Ich mache auch keine nicht abgesprochenen Schritte.”
「それは現在の日程には入っていません。また私は相談なしの行動はとりません」
答えています。

昨日のメルケル首相の北朝鮮核問題に関する発言は以上の通りです。

24日の総選挙の結果でメルケルが4期目16年に向けた首相に就任することはまず間違いありませんが、トランプ政権との意見の相違はますます明確になるだけでしょう。

そして彼の”america first,, は世界の中では”america alone,, へとなって行くことだけは間違いありません。問題はトランプ大統領がそのことを理解することが全くできないことでしょう。
このような大統領の演説に無批判に追従し、メルケル首相とは反対に「対話による問題解決の試みは、一再ならず無に帰した」と強調するだけの国連演説をした安倍首相の政権では、私も懸念するように、日本もまた問題の外交的解決を阻害しかねず、ますます孤立を深めることを危惧します。

国連総会には副首相のガブリエル外務大臣が昨日から出席して、彼の方は演説でトランプ大統領のイランとの協定をこき下ろしたことを懸念して厳しく批判しています。
ここまで書いて、ニューヨークからの報道です。やはり河野外相も当面は対話拒否のようです。こんな姿勢をとり続けている限り、日本は交渉の席から外されかねません。

ピョンヤンはトウキョウよりベルリンに対話のバトンを渡すでしょう。 
⇨河野氏、早期対話に慎重

北朝鮮対応で日独会談

2017/9/22 01:25

【ニューヨーク共同】河野太郎外相は訪問先の米ニューヨークで21日、ドイツのガブリエル外相と会談した。核実験とミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応を巡り、現時点での話し合いは問題の解決につながらないとして、北朝鮮との早期対話に慎重な考えを伝えたとみられる。

早期対話を呼び掛けるドイツに、圧力強化を通じて北朝鮮の核放棄を目指す日本政府の立場を説明し、理解と協力を求める狙いがある。河野氏は会談で「国際社会全体で圧力を強化する必要がある」と強調した。

ガブリエル氏は、ドイツとして緊張緩和へ努力する用意があるとの認識を示したもようだ。

トランプ演説が当事者国である韓国に与えている衝撃には当然ですが大きなものがあります。
その一つ本日のハンギョレ新聞の社説をご覧ください。

社説:平和捨て「好戦」だけの最悪のトランプ国連演説
もう一つ文大統領の演説の第一報です。
⇨朝鮮半島の緊張回避を要求

韓国大統領、国連演説で2017/9/22 00:00

【ニューヨーク共同】韓国の文在寅大統領は21日、米ニューヨークの国連本部で、5月の就任後初となる国連総会の一般討論演説を行った。文氏は北朝鮮が6回目の核実験を強行し「われわれ全員に、言い知れぬ失望と怒りを抱かせた」と強く非難した。一方で北朝鮮への軍事的選択肢を排除しない米政権も念頭に、(朝鮮半島の)緊張を高める言動は自制すべきだとも強調した。

文氏は演説で「過度に緊張を激化させたり、偶発的な軍事衝突で平和が破壊されたりしない」よう呼び掛け、「われわれは北朝鮮の(体制)崩壊は望まず、吸収統一も推進しない」との従来の立場を改めて強調した。

うーん、金正恩とドナルド・トランプが主役になってのこの争い。この調子ではとてつもない制御不可能な危機が現実なものになるかもしれません。

初出:「明日うらしま」2017.09.22より許可を得て転載

http://tkajimura.blogspot.jp/2017/09/blog-post_22.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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