私の感想。西欧・日本のリベラルと新左翼は、旧左翼・スターリン主義を打倒するのに成功した。その結果、こんな資本主義が全世界にはびこっている。
ベオグラードの日刊紙『ポリティカ』(2017年3月5日)の第1面に「リースされる労働者、奴隷でもあり、ロボットでもあり」の大見出し。
記事の強調点は以下の如し。「諸会社に手数料をとって労働者をリースする派遣会社を通して、セルビアでどれだけの人々が仕事を得ているのか、誰も正確に答えられない。何故、国はかかる労働者達の権利を保証しないのか。何故規制しないのか。」
そして、第14面と第15面をすべて使って労働者リースの諸問題を解説している。病休も年休も社員食堂も通勤手当も時間外手当もボーナスもない。アイロンやトースターをクレジットで買うことも出来ない。
夏休みや冬休みの旅行なんて、マイホームのために金を借りるなんて、空想することしか出来ない。
どうしてこんな労働者リース企業がはびこるようになったのか。ある解説記事の見出しはこうだ。「日本人が考えついて、アメリカ人が模倣して、ヨーロッパにやって来た。」
そして、ヨーロッパの資本家達に大歓迎された。彼等は、こまかいことにこだわらない労働者を求めていたが、そんな求めが満たされたからだ。
自分達だって、機械、車、生産手段、不動産のリースのことは知っていた。だけど、人間もリースで手に入れるとは、それが始まってみるまではわからなかった。
アメリカの経営者が日本経済の大発展を分析して、日本では諸会社間の労働者の貸し借りが会社の必要に従って一定期間行われる慣行がある事を発見した。そこから労働者リースなる発明が生まれ、世界にひろまり、ヨーロッパやバルカンにやって来た。
私=岩田は、アメリカ人が日本の経済慣行として発見したとされる「諸会社間の労働者の貸し借り」が何を意味しているのか、わからない。人材派遣企業誕生以前のことだから、正社員が主流の時代にもあった出向のことなのか。もっとも、日本には江戸時代の昔から口入屋があったから、もしかしたら、労働者リースの起源は、『ポリティカ』記者の言う通り、日本だったのかも知れない。
大特集記事の最後に別の記者がいくつかの警句を記している。
――派遣会社が組み込まれて儲け、会社や経営者が組み込まれ儲け、労働者だけは組み込まれ組み立て作業をしている。
――労働者・農民の国が資本主義からこんな発明品を輸入してしまった。輸出しましょう、それが良い。
――歴史はまさに繰り返す。奴隷制へ戻りつつある。
――セルビアでは数十万の「リース労働者」が働いている。そして失業者がうらやましがっている。
平成29年3月22日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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