ルネサンス研究所の3月定例研究会:森田成也『『資本論』とロシア革命』(柘植書房新社)を読む

著者: 中村勝己 なかむらかつみ : 大学教員
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先日マルクス=エンゲルス共著『共産党宣言』の新訳(光文社古典新訳文庫)を刊行した森田成也が昨年6月に出した『「資本論」とロシア革命』(柘植書房新社)。3月の定例研究会はこの本の合評会として開催します。本書は『資本論』初版刊行(1867年)150周年、ロシア革命(1917年)100周年を記念して報告されたり執筆された文章を収録したものです。

目次によれば内容は次の通りです。

「第1章 現代資本主義とマルクスの『資本論』/第2章 デヴィッド・ハーヴェイにおける恐慌論と変革論/第3章 『資本論』第二巻の階級的・理論的可能性/第4章 ロシア革命の意味と現代世界/第5章 『資本論』とロシア革命における経済法則と階級闘争/第6章 マルクスの『資本論』とロシア革命の現代的意義/第7章 『資本論』のアポリアと21世紀の課題―マルクス生誕200年によせて」。

著者は、序文で次のように言います。

「個々の国における諸政権の栄枯盛衰がどうであろうと(中略)、世界資本主義は確実に危機と行き詰まりの様相を深刻化させている。世界的に経済的格差はますます拡大し、自然環境は致命的な水準にまで悪化し、労働力と天然資源は無制限に搾取され浪費されつづけている。われわれが日々実感している地球の温暖化は、日本のみならず世界各地で(中略)大規模災害を毎年のように引き起こしている。(中略)ますます深刻化する巨大な経済格差や貧困化と並んで、このとどまるところを知らない環境悪化は、人類がますます資本主義と両立しえなくなっていることをはっきりと示している。/こうした状況の中で、資本主義の運動法則とその諸限界を明らかにした『資本論』と、世界で初めて資本主義的世界秩序に本格的に挑戦してそれを部分的に突破したロシア十月革命の偉大な経験は、今日ますます重要な意味を持つようになっている」。

21世紀の今日、グローバル金融資本主義を丸ごと変革する方途はどこにあるのか? その変革の主体は誰なのか? 今回はルネサンス研究所運営委員の大谷浩幸と中村勝己の提題をもとに著者・森田成也のリプライも受けて、活発な質疑応答を行いたいと思います。新型コロナ・ウイルスの流行の度合いを見極めて、慎重に開催の是非を判断しますので、万一延期の場合にはまたメールをします。

森田成也さんの『『資本論』とロシア革命』は難解と言われる『資本論』をわかりやすく解説している。ロシア革命論の部分もまた読みやすい。そして、『資本論』で、近年評判の悪い「労働価値説」を断固として主張すると共に、ハーヴェイ、ローザ・ルクセンブルク、トロツキー、ボブズホームらの説をも踏まえ、『資本論』に氏の解釈を加えていく。そこで、議論を呼ぶであろうような結論をも大胆に提示している。例えば、社会主義革命後も国家はなくならないという、エンゲルスの「国家死滅論」やレーニンの『国家と革命』の同様の主張を否定している。等々。著者も指摘しているように、マルクスが『資本論』で指摘したように、資本主義の限界の一つである「利潤率の傾向的低落」は今日の先進資本主義諸国に容赦なく作用して、軒並み低成長に陥っている。そこから脱するために、グローバル化と金融化を推し進め、中国・インド、ブラジルなどへの直接投資を増大させたり、世界市場の拡張を図ってきたが、2008年リーマン・ショックを契機とした世界金融恐慌が発生し、アメリカはGMなどの企業を救うために国家資金を投入し、新自由主義を放棄し、その後アメリカのトランプ大統領が「保護貿易主義」へと舵を切った。本書に収めらているのは、それ以前の段階までだが、資本の「5つの限界」とそれから逃れようとする資本との弁証法が現在の世界経済の状況を動かしているとするのはそうだろうと思う。そういう点で学ぶべきところが多々あると共に大胆な提起もあり、議論を呼ぶものもある。いくつかの論点を提起しますので、議論してまいりましょう。(大谷浩幸)

ロシア革命から100年が経った2017年に国内外でロシア10月革命の意義を問い顕彰する少なくない数の議論が出された。森田成也の本書もそのひとつだ。しかしまた、ロシア革命50周年を記念した1967年頃の議論から(たとえばドイッチャー『ロシア革命五十年――未完の革命』岩波新書)50年を経て、「顕彰」派はどれだけ革命史の検証をめぐる議論を進展させることが出来たのかと疑問を感じるところもあった。これに対して「修正」派とも呼ぶべき流れが出てきている。「ロシア革命のピーク(もっとも根源的な革命)は二月革命だった」とする説だ(池田嘉郎『ロシア革命――破局の8か月』岩波新書、和田春樹『ロシア革命――ペトログラード1917年2月』作品社など)。ロシア民衆の反戦運動が2月革命を引き起こしたにもかかわらず、発足した政府は戦争を継続する。だから民衆は第二の革命=10月革命を欲したのではなかったか。評者はここに10月革命への進展の「必然性」とは言わないまでも「正当性」があると見るのだが、近年のロシア史の専門家たちはどう考えているのだろうか。ロシア語も読めない評者がロシア・マルクス主義(トロツキー!)の専門家である森田成也の胸を借りるつもりで問うてみたいのはこのことである。(中村勝己)

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日 時:2020年3月10日(火)18:00開場、18:30開始

会 場:専修大学神田校舎7号館7階772教室

https://www.senshu-u.ac.jp/access.html

資料代:500円

提題者: 大谷浩幸(『共産主義運動年誌』編集会議)

中村勝己(イタリア現代思想・大学非常勤講師)

リプライ:森田成也(マルクス研究者・トロツキー研究者)