ルネサンス研究所2021年10月定例研究会のお知らせ

著者: 中村勝己 なかむらかつみ : 大学教員
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「マルクスと対決するフーコー——『コレージュ・ド・フランス講義』を読む」

 

ルネ研は、今年に入り新型コロナの流行をめぐる政治の動きを「バイオポリティクス(生政治)」と呼んで批判的に考察するために、フーコーの議論に着目してきました。5月「バイオポリティクスからネクロポリティクスへ――新型コロナ・ウイルスの時代に再読する生権力=生政治論(フーコー、アガンベン、ムベンベ)」(中村勝己)、6月「コロナ・ワクチンをめぐる政治学」(塩野谷恭輔)、7月「マルクスから考えるフーコー『生政治の誕生』の可能性」(境毅)と3回連続で「生政治」について取り上げました。

そんな折に、ミシェル・フーコーの仕事をトータルに検証しようという作業が日本で立て続けに発表されています。3月に小泉義之・立木康介編『フーコー研究』(岩波書店、570頁)、佐藤嘉幸・立木康介編『ミシェル・フーコー「コレージュ・ド・フランス講義」を読む」(水声社、386頁)が刊行され、8月には『狂い咲く、フーコー 京都大学人文科学研究所 人文研アカデミー『フーコー研究』出版記念シンポジウム全記録+(プラス)』(読書人新書)が出ました。これにフーコー自身の幻の草稿『性の歴史』第4巻が単著として刊行『肉の告白』(新潮社)されたことを加えることもできるでしょう(2020年12月)。

今回ルネ研は、日本におけるこのかんのフーコー研究の再活性化の中心にいる研究者の佐藤嘉幸さん(筑波大学)を招いて、お話を伺うことにしました。いま何故フーコーか。

 

日 時:10月12日(火)18:30開始(3時間弱)

報告者:佐藤嘉幸さん(フランス現代思想・筑波大学人文社会系教員)

プロフィール:1971年生まれ。著書に『権力と抵抗』『新自由主義と権力』『脱原発の哲学』(田口卓臣との共著)『三つの革命』(廣瀬純との共著)、訳書にフーコー『ユートピア的身体/ヘテロトピア』、バトラー『権力の心的な生』『アセンブリ』『問題=物質となる身体』など。

会 場:オンライン研究会(後述の方法で参加予約を頂いた方に招待メールを送ります)

資料代:500円(+振込手数料)

今回もオンライン研究会です。以下のメールアドレスに参加予約を頂いた方に招待メールを送ります。

renaissanceinstitutetokyo@yahoo.co.jp 「参加希望」のメールをお送りください。

こちらからの確認メールで資料代の振込み方をご案内します。

 

『ミシェル・フーコー「コレージュ・ド・フランス講義」を読む』(以下『コレージュ講義を読む』)は、フーコーが1970年から84年にかけて行った講義の総体を読み直すという共同研究の成果論集です。この共同研究を通じて私たちが理解したのは、この時期のフーコーが、マルクスの思想を批判的に参照しつつ、マルクスに代わる新たな批判的社会理論を構築しようとしていた、という点です。例えば、70年代初期の講義『刑罰の理論と制度』、『処罰社会』は、マルクスの本源的蓄積や相対的過剰人口の生産の理論を参照しながら、下層階級の規律化=プロレタリア化と資本主義の構築を、またアルチュセールの「国家の抑圧装置」概念を参照しながら、「国家の抑圧装置」としての監獄から「規律権力」としての監獄への移行を論じています。また、70年代後半の講義『安全・領土・人口』『生政治の誕生』では、労働力を「人的資本」として捉え直しながら、規律権力と相補的に機能する(新)自由主義的権力=生政治のメカニズムを考察しています。本研究会では『コレージュ講義を読む』『フーコー研究』のいくつかの論考を取り上げながら、フーコーをマルクスとの対決において捉え直します(佐藤嘉幸)。