ルネッサンス研究所定例研究会のご案内(直前再掲載)

●第三クール2・第14回:

日時:  7月14日(月)18;30開始 開場18:00

会場:  専修大学神田校舎1号館8B会議室(8階)

報告:  内藤酬(元防衛庁研究所員 京大大学院で核物理学専攻 現河合塾講師)+山家歩(定例研究会企画委員)

3.11以降の核                       内藤 酬

東京電力福島第一発電所の事故は、この国の核をめぐる構造を暴露し、科学者の醜態を白日のもとにさらした。しかしそれは3.11以降にはじめて出現した構造ではなく、3.11以前からすでにあった構造が、原発の事故を契機として明るみにだされたものにすぎない。それは広重徹のいう「科学の体制的構造」が現代社会の只中に公然と姿を現わしたものにほかならない。そのような核をめぐる構造を、核物理学研究と原子爆弾開発計画の歴史をたどることで考えてみたい。冷戦期における科学の構造が、第二次世界大戦中の原子爆弾開発計画に源流をもつことと、そのような科学の構造がこの国の研究体制にも色濃く影を落としていることを確認しておきたい。原爆(原子爆弾)と原発(原子力発電)はいうまでもないことだが、ノーベル賞と核兵器もまた思いのほか近しい関係にある。そのことをこの国の核物理学研究の歴史のなかに見ていくことにしよう。

●第三クール3・第15回:

日時:8月11日(月)18:00開場 18:30~21:30 

場所:シビックホール4階会議室B(都営地下鉄春日下車、)

報告:塩見鮮一郎(作家。著書に『弾左衛門とその時代』(河出文庫)『貧民の帝都』(文春新書)『吉原という異界』(現代書館)など)

+流広志(ルネサンス研事務局)

明治政府の太政官布告「身分解放令」をめぐって―近代の差別からの解放への道を問う

明治維新は通常、日本近代化の出発点とされる。確かに維新政府はそういう名目の制度改革に着手した。1871年(明治4年)の所謂「解放令」もその一つである。しかし、アメリカの奴隷解放を参考にしたとされる「解放令」の現実は、「解放=弾圧」だったというのが塩見鮮一郎さんの評価である。史実の読み直しによって、近代化=進歩と看做し「解放令」をポジティブに評価する「常識」を覆す視点が示され、被差別民の近代化の実像が明らかにされてきたことによって、今なお続く部落差別からの解放を、ポスト・近代の展望と結びつける道を切り開く条件が成熟してきた。

今回は、塩見さんの著書『解放令の明治維新』(河出ブックス)を手掛かりに、日本近代化の出発点で、「解放令」が、被差別民にとってどういうものであったかを中心にお話しをうかがい、それを差別解放とポスト近代の展望を結合する課題にチャレンジする研究と討論の新しい地平を探る第一歩にしたい。             流広志