当地の『Portfoli.hu』(7月25日)が伝えるところによれば、ハンガリーはこの4月、中国の3つの銀行(中国銀行、中國建設銀行、中國工商銀行)から10億ユーロの融資を受けた。すでに、ハンガリーは中国輸出入銀行から、ベオグラード-ブダペスト間の鉄道建設に9億1700万ドルの融資を受けており、今回の融資はこれを上回るものとなった。返済期限は2027年4月19日に設定された3年融資であるが、そのほかの条件は公開されていない。
すでにハンガリー政府は10億ユーロを引き出しているが、現在に至るまで、その事実を公表してこなかった。国家債務管理センターの統計情報が公開されて初めて、この事実が明らかになったが、現在もなお融資条件は公開されていない。
今回の融資によって、ハンガリーの国家債務総額に占める外貨債務は30%ほどになり、現Fidesz政権の発足後にいったんは15%まで下った対外債務依存率が、再び上昇することになった。債券発行による資金調達と異なり、銀行融資の際には細かな資金の使用条件が付帯しているはずだが、それは非公開となっている。
またハンガリーはEU圏外からの就業者ビザとして、通常の滞在許可書を簡便化したNational Cardを発行し、セルビアとウクライナからのゲストワーカーの就業を簡便化してきたが、ここにきて、この対象国枠をロシアとベラルーシへも拡大した。このカードを受領できる対象国は、上記の4か国に加え、ボスニア-ヘルツゴヴィナ、北マケドニア、モルドヴァ、モンテネグロを含めて9か国になった。
National Cardは発行数の上限が設定されておらず、すべての職種への就業を許容するものである。さらに、家族の呼び寄せも可能にしている。2年期限のカードであるが、以後は3年の延長を何度でも申請できる制度になっている。
『Forbes.hu』(7月25日)は、この制度がロシアやベラルーシのスパイ送り込みに利用されるリスクを指摘している。これまでチェコやスロヴァキアのロシアのスパイ活動が目立ってきたが、チェコでの監視が厳しくなり、監視が緩いハンガリーにスパイ網を構築することが重要になっている。すでに中国とは中国警察のハンガリー国内での活動を容認する取り決めを結んでおり、ハンガリーはロシアと中国のスパイ天国になりつつある。
もっとも、1990年代にはモスクワから退避していたマフィアの大物たちが、ハンガリーを拠点に活発な裏ビジネスを展開していた。モギレヴィッチがハンガリーを離れてからは静かになったが、それまではダヌビヌスホテル系列の温泉プールには恰幅の良いスキンヘッドのボディガードたちがたむろしていた。体制転換を経過しても、旧東欧圏ではロシアマフィアやスパイが跋扈している。
初出:「リベラル21」2024.07.30より許可を得て転載
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