春の兆しの感じられる高速道路(常磐道)をくだって福島のいわき市にある老人センタ―に救援物資を運んできた。僕の所属する「9条改憲阻止の会」の有するトラックを利用してささやかながらではあるが救援活動をやろうということになったのだ。前日に箱根まで出掛け10㍑容器に詰めてもらった名水の100個が歓迎された。現地では飲料水や野菜などの食材が欲しいとのことだったが、第二弾、三弾を準備したい。
大震災からまだ三週間もたっていないのだから現在は救援と復旧活動に努力が注がれているのは当然であるが、今回の震災が従来と違うのは原発災害が大きく絡んでいることである。原発災害は現在も進行中であり、それがどれくらいの規模になり、対応策がどのように考えられるか不明である。これは特に福島第一原発の周辺だけでなく、国民的な意味でも精神的な不安定さをもたらしている。救援や復旧活動の中でもこのことは特に留意する必要があるのではないか。この原発災害であるが、ドイツでは人々の原発への敏感な反応が伝えられる。原子力発電が一国のことではなく、世界的な課題であれば当然のことであるが、今はドイツの原発に反対する国民と同盟(?)的な行動が必要ではないか。連帯という意味だがかつての悪夢のような日独同盟ではなく、これは世界史的に先端の課題を共に担っていくことである。僕は「今回の震災に対する救援や復旧とここからの復興とには幾分か異なった視座が要求されるように思われる」と前回の論評で記した。救援や復旧には緊急ということが含まれるし、さしあたって出来ることからやらなければならないところが制約としてあるからだが、原発問題では復旧に復興を重ねて展開の必要がある。福島第一原発の被害拡大を抑え込むことが緊急課題である。現在の被害進行阻止は福島第一原発の復旧(これまでのような機能の復帰)を意味しない。枝野官房長官も廃炉を示唆する発言をしていたが、これは当然である。福島第一原発の復旧が再開ではない以上、原発の今後についての考えは必要である。原発周辺の復興一つを考えても事は明瞭である。原発について技術者等の発言もいろいろ出てきたがもっとあっていいと思う。僕らの世代で理学や工学の系統に進んだ人は多いし、全共闘世代の人もいる。今こそ制約から解放された場所で専門的知見を踏まえた発言をすべきである。原発についての見識や今後の構想が不可欠である今、専門的知見を積んできた安保―全共闘の世代は自己の知見を披歴してもらいたい。自立性に基づく見解を公表してもらいたい。国民に応える道である。
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