企画展「東京大空襲 -罹災者・救護者・戦争遺跡-」のご案内

著者: 石橋星志 いしばしせいし : 郷土文化資料館学芸員
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すみだ郷土文化資料館学芸員の石橋星志(イシバシ・セイシ)です。

ご見学と取材のお願いです。

23日より、すみだ郷土文化資料館で、担当する企画展「東京大空襲 -罹災者

・救護者・戦争遺跡-」を開きました。

今回はこれまでの館の蓄積に加え、原爆では取り上げられる救護に来た兵士の

問題を東京空襲の展示では初めて取り上げました。

東部軍資料には遺体回収の命令はありませんでしたが、焼け跡の金属など資材

回収命令があり、木材も掘割から回収しています。

また救護班の資料を取り上げ、隅田川の水を石井式濾水機でろ過して、救護や

被災者へ提供をするのに使っていたこと、石井式濾水機の写真や軍事機密の濾過

筒の実物なども展示しています。

体験者から聞き取った避難の軌跡を提示し、今後体験記からわかる軌跡、死者

の軌跡との比較研究で、空襲下の実相を明らかにする試みの一歩展示しました。

さらに、戦争遺跡の考え方で、空襲被災関連だけでなく、忠魂碑や軍の施設跡

も含めて調査し、現在分かっている範囲の所在と写真を展示しました。今後、そ

れぞれの調査を深めていく必要があると思っています。

全体を通じ、本土決戦の中での空襲という位置づけと、近代の戦争とすみだと

いう課題、体験者の声を生かした空襲実相の研究という喫緊のテーマが出てきま

した。

今回の展示を通じ、アジア歴史資料センターにもかなりの資料があることが分

かりました。

展示した『ノモンハン事件写真帳』は関東軍防疫部作成で、石井四郎の顔や不

鮮明ながら石井式濾水機なども見ることができますが、これもオンラインにアップさ

れています。

展示ではほかに、空襲を原因に民心が悪化した際の戒厳業務の想定資料も展示

し、その中では起点となる空襲被害を2回の空襲で1730人と見積もっていたこと

なども明らかにしています。

遠方の方もおられ、お忙しい時期とは存じますが、4月半ばまで開催しています。

お近くお寄りの際にはぜひ、ご見学ください。なお、図録は作成しておりませ

んので、ご了承ください。

また、3月3日には区内の施設で、展示の内容を中心に講演を行います。まだ残

席があるとのことですので、こちらもよろしければ。

友人・知人の関心のある方へも情報共有いただければ幸いです。