人間社会は,今,大きなウソに支配されている. 「人間の排出したCO2の約半分が大気中に溜まり,これが原因で気温が上がった」という『人為的CO2温暖化説』を科学者・経済学者を含む多くの人々は信じきっている.
しかし,人間が排出したCO2は7ppm しか大気中に溜まっておらず,またCO2が原因で温暖化したという事実証拠は存在せず,さらに理論にも大きな欠陥がある.対し,「気温高が原因でCO2濃度増は結果である」という事実証拠が新しく発見され,この温暖化論争は大筋終結することになった.
ではなぜ,科学者・経済学者を含む多くの人々はこの『人為的CO2温暖化説』を信じてしまったのだろうか.
1.欠陥だらけの人為的CO2温暖化説
【最大でもわずか7ppm】
人為的CO2温暖化説は,なんらの根拠も示さず,人間の排出したCO2の約半分が大気中に溜まったとしている.その値は発表されるたびに異なり, 1987年では58%であったが, 1995年では55.9%に変わった(Keeling 1995). 1) 測定開始(1960年)以後2005年まで45年間のCO2の増加量は64ppmであるが,そのすべてが人為的CO2としている.
ところで,陸海におけるCO2の蓄積にはまだまだ余裕があると考えられる. IPCC (2001)によれば,大気中のCO2は毎年30%を陸海と交換している.であれば,人間が排出したCO2は1年後には大気中に70%残ることになる.これは2年後には70%の70%,つまり49%が残る.
これを延長すれば人為的CO2の大気中に溜まった量の合計は等比級数であって,本年分を加えても3.33年分であり, 8.5ppm増加することになる(槌田2007b), 2) (Tsuchida2008). 3) この計算では離散的に求めたが,連続量として計算すれば7ppm増加ということになる(小島2007). 4)
この級数は10年程度でほぼ飽和し, 7ppm以上には増えない.したがって,仮に, CO2による温暖化を認めたとしても,人為的CO2では温暖化の「進行」を説明できない.
これだけで,人為的CO2温暖化説は完全に否定される.
【同位体比率】
CO2温暖化論者の言うただひとつの事実証拠は,大気中の炭素の同位体比率であった.
安定同位体C13の場合,生物起源の化石燃料を燃したので大気中のC13の同位体比率は減ったという.しかし,土壌や深海水に含まれる炭素も生物に由来するので,温暖化による土壌や深海水からの放出と区別できない.
また,放射性同位体C14の場合,化石燃料を燃すと大気中のC14同位体比率は減る.これはCO2温暖化説を支持するというが,中世温暖期にもC14同位体比率は減っている(遠藤2000). 5) したがって, C14同位体比率は温暖化による減少と化石燃料の燃焼による減少とを区別できない.
そして,いずれの同位体比率についても,単にCO2の発生原因を論ずるだけであって,温暖化したことを説明するものではなく,これはすりかえの詭弁である.
これらの詭弁が消えたことにより, CO2濃度増が原因で気温が上昇したとする事実証拠は一切なくなった.
【ミッシングシンクと酸素濃度】
人為的CO2温暖化説には初期のころから指摘されていたミッシングシンクという欠点がある.それは人為的排出量の約半分が大気中に溜まったとして,残りはどこに消えたのかという問題である.
これについて, IPCC (2001)は大気中の酸素濃度の測定で解決したという. 1990年から10年間に化石燃料の燃焼で,大気中の酸素濃度は40ppm減少するはずだが,その内7ppmは陸での光合成で回復し, 1 ppmは海洋から放出されて, 32ppm減少するとした.
このIPCCの説明ではこの10年間に光合成で陸地の森林量は増えたことになる.しかし,森林は燃やされるなどして破壊されている.国連食料農業機関(FAO)によれば,この10年間に森林は総量の約41億ヘクタールから約1億ヘクタールも減少した(朝日新聞08.1.10).つまり,ミッシングシンク問題はいまだ解決されていない(槌田2008). 6)
【過去の高温期でのCO2濃度】
人為的CO2温暖化論者は,最近のCO2濃度上昇はかつてなかったことと断定する.この主張は過去のCO2濃度の測定限界を理解していない.
たとえば南極での氷の中のCO2濃度を測定したとして,その氷は風によりかき回され,混ぜられることなどを考えると長期間の氷の平均値と考えられる.仮に数百年として,その平均値と現代のCO2濃度の年毎の精密測定をいきなり比べることはナンセンスということになる.
そして,仮に,現代のCO2濃度の上昇が過去とは違って異常であるとして,それがただちに人為的CO2温暖化説の正当性を示すものとは言えない.次節で述べることになるが,温暖化の原因が過去と違えば, CO2濃度が過去とは違うことになっても不思議ではないからである.
2.温暖化の原因は水蒸気
【真鍋論文は間違っている】
人為的CO2温暖化説の基礎理論は真鍋論文である.この論文では,気象現象が重力場での気体の物理学であることを忘れ,いきなり数値計算をしてしまった(槌田2006). 7)
その結果,高度による温度の勾配が1.7℃/100m,つまり上が重く,下が軽いという結果を得た.科学者ならば,このような結果が出た以上,この計算結果は発表できないはずであるが,彼はこれを堂々と発表し,しかもこの値を1℃/100mまたは0.65℃/100mにいきなり調整してしまった.
このような非論理的な計算であるのに,多くの科学者は当時最高レベルの機能を持つ大型コンピューターの計算に圧倒されてこれを評価した結果,現代の人為的CO2温暖化説ができあがった.
【水蒸気による桁違いの温暖化効果】
地表の温度(気温)を決める要因には,上記重力場の効果に加えて温暖化ガスによる効果がある.温暖化ガスは桁違いに水蒸気(約2万ppm)が大きい.これにより,大気の温度が決まり,地表の温度(気温)の上限が決まることになる.
古典気象学によれば,大気上面での太陽光を100とするとき,地表の受ける直射光は47,主に水蒸気による温暖化効果は96であって,温暖化は直射の倍にもなる.この合計が水の蒸発(水冷)と風(空冷)によって冷やされ気温は15℃になる(槌田1992). 8)
人為的CO2温暖化説では,水蒸気が温暖化ガスの主体であることを軽視して, CO2による温暖化で気温を論ずるというとんでもない間違いがなされている.
【CO2による温暖化効果は限定的】
たしかに, CO2にも温暖化効果はある.それは水蒸気が薄い場合,その遠赤外線の吸収スペクトルに「窓」が開いているからである.これは寒くて水蒸気濃度が低い場合に生じ, 「放射冷却」ということばで語られる.この部分をCO2が受け持つことになる.
しかし,気温が上がって水蒸気濃度が高まると,水蒸気の相互作用により,水蒸気の吸収スペクトルは広がり,窓は閉じ,放射冷却はない.このときCO2にはその温暖化効果がないことになる.
したがって, CO2濃度の増加でハリケーンなどを論ずることはできないのに,これを忘れてCO2による温暖化の脅しを熱帯や温帯に広げている.
【追加される水蒸気クラスターの温暖化効果】
多くの議論では大気汚染を寒冷化の原因と片付けている.しかし,大気汚染が核になって水蒸気クラスターができるとその温暖化効果は増大する.クラスターの大きさが0.8μを超えると空は白くなる.この時蒸し暑く感ずることで体感とも合っている.この温暖化は地球全域に存在する.
汚染の原因には自然現象として宇宙線によるイオン化も考えなければならないが,人為的汚染の方が多いであろう.温暖化対策をするとすれば,特に寒帯での航空機の使用を全面禁止しなければならない.これは文明国を直撃する.
3.気温高が原因でCO2濃度増は結果
【キーリングの業績】
測定されたCO2濃度は単調に増加している.そして気温はほぼ4年周期で上下しながら,わずかに上昇している.これらの事実からは,どちらが原因で,どちらが結果かを言うことはできない.
そこでキーリングはCO2濃度について長期的傾向を除き,これと気温を比べる図1を発表した(Keeling 1989). 9)
この図によれば,気温はCO2濃度に対して1年先行している.つまり,気温が原因でCO2濃度は結果ということになる.これについてキーリングは,気温が陸地生態系を変える効果と説明した.陸地か海洋かはともかく,気温が原因で, CO2 濃度は結果である.
これについて,河宮は短期的には気温が先行するが,キーリングの取り除いた長期的傾向の中にCO2を原因とする温暖化効果があると気象学会誌『天気』に解説した(河宮2005). 10) しかし,長期的傾向の中に隠れているのだから, CO2が原因ということにもならない.
【気温変化率とCO2濃度変化率の関係】
そこで,近藤は長期的傾向を除くことなくこの問題を検討する方法を考え,気温偏差の年変化率とCO2濃度の年変化率を比較した(図2) (近藤2006). 11) ここで気温偏差とは1971年から2000年までの30年間の各地の平均気温からの各地の気温のずれを,世界全体で加重平均したものをいう.
この図によれば,気温の変化率に対して大気中のCO2濃度変化率は1年程度遅れる.つまり長期的傾向を除くことなく,気温変化率高が原因でCO2濃度変化率増は結果であることが示された.キーリングが除いた長期的傾向は,図2ではCO2濃度変化率の1.5 ppm/年の周辺での変化に対応し,これを積分すれば長期的傾向が得られる.
この近藤の図2を用いて,槌田は本誌に「CO2を削減すれば温暖化は防げるのか」を発表した(槌田2007). 12)
【阿部反論と槌田による回答】
これに対して,阿部はこの図2において,気温が変化しない場合でも濃度が1.5ppm程度増えることをとらえて「気温が変化しないという原因により, CO2が増加するという結果がもたらされるという因果関係はありえない」と反論した(阿部2007). 13)
槌田は,この反論に対して,回答を本誌に投稿した(槌田2007a).14) その中で「この図2では気温偏差が0.1℃上がった1年後に大気中のCO2濃度は2ppm程度増えるが,気温偏差が0.1℃下がった1年後にもl ppm程度増える.また気温が変わらなくても1年後に1.5ppm程度増える.この現象は気温偏差の変化と1年後のCO2濃度の変化がほぼ1次式で表されることを示す. 1年後のCO2濃度の変化のないのは気温偏差がマイナス0.3℃程度の時である」と述べた.
つまり,気温は陸海とのCO2の実質的に出入りのない基準温度よりも0.3℃程度高温の状態にあり,陸海からCO2が放出され続けていると指摘したのである.このような指摘はこれまでに存在せず,新しい発見である.しかし, 「この投稿は反論に対する回答である」と再三説明したのに,本誌編集委員会はこれを採用しなかった.
【気温とCO2濃度変化率の関係】
この気温の変化によりCO2濃度の変化が1年程度遅れることから,気温が原因でCO2濃度は結果とすることには問題もある.気温が変われば地面や海水面の温度が変化し,ただちにCO2濃度も変化するのではないか.
そこで,図2を詳しく検討することにした.その結果,次の事実に気づいた.図2において気温変化率がゼロのとき, CO2濃度の変化率が極値をとっている.気温の変化率がゼロということは,気温が極値であることを示すから,気温の極値とCO2濃度の変化率の極値が対応する.
この考えに基づき近藤は世界平均気温偏差(℃)と大気中CO2濃度の変化率(ppm/年)を比べる図3を作成した(近藤2008), 15)
このふたつはいくつかのずれがあるものの見事に対応している.そこで第一近似として気温に対してCO2濃度の変化率が対応していると結論できる(近藤,槌田2008).16) *
具体的には,気温偏差が0℃のときCO2濃度の変化率は1.5 ppm/年であって,気温偏差がマイナスのときCO2濃度の変化率は1.5ppm/年よりも減少し,気温偏差がプラスのときCO2変化率は増加している.
この関係を散布図で示すと図4になる.ここで実曲線はその関係がしっかりしている部分であり,点線は1975-1978, 1989-1993などずれている部分である.
この図4において,第一近似として実曲線だけを用いて回帰直線を作ると大気中CO2濃度変化率がゼロppm/年となるのは気温偏差がマイナス0.6℃のときである.このことから1971年から30年間の世界平均気温は大気と陸海の間でCO2の実質的移動のない温度よりも0.6℃高温であり,この図の範囲での結論として大気中CO2濃度が気温高により毎年上昇していることが示される(近藤,槌田2008). 16)
*近藤邦明と樋田敦はこの事実を気象学会『天気』誌に投稿した(2008年4月).しかし,査読者の意見をいれて, 2回の書き直しがなされたが,結局採用拒否となった.そのため,図3および図4により示される新しい事実の発表は,科学誌では本誌が最初のものとなった.
気象学会によるこの採用拒否と気象学会大会での登壇拒否については気象学会会員でもある樋田は, 2009年5月27日,東京地裁に提訴し,現在審理がなされている.
【1年遅れ問題】
これまで,図1および図2により,気温がCO2濃度に1年先行して変化することから,気温変化が原因でCO2濃度変化は結果であると解釈してきた.しかし,すでに述べたようにCO2濃度が気温よりも1年遅れることが説明できなかった.
この問題は,周期関数(sine関数)は微分操作によりcosine関数になって, (1/4)周期早まる問題と考えることができる.気温もCO2濃度もほぼ4年周期であり,これらを微分するとどちらも1年程度早くなるのである.
この考察により,大気中のCO2濃度の年変化率の主な原因は気温であることが確認された.つまり,現在の気温と大気中CO2濃度の関係は定常状態から外れていて,その飽和に向けて一方的にCO2濃度が上昇を続けていることになる(近藤,槌田2008).16)
【エルニーニョだけが原因ではない】
これまでにエルニーニョとCO2濃度上昇の関係が議論されてきた(Samiento 1993), 17) (根本1994). 18) しかし,非エルニーニョ期でも量は少ないがCO2濃度は上昇している.これに注目することによってこの研究はなされた.
すなわち,この研究の出発点は槌田・阿部論争であって,阿部の「気温が変化しないという原因により, CO2が増加するという結果がもたらされるという因果関係はありえない」との反論(阿部2007) 13) に対する槌田の回答であった(槌田2007a).14)
槌田はこの回答の中で,現代の気温は大気と陸海との間で実質的にCO2のやりとりのない温度よりも0.3℃程度高いことを示した.この値は,その後の気象学会誌『天気』への採用されていない原稿(近藤,槌田2008) 16) において0.6℃と修正した.
【一方的CO2濃度増加の原因】
高温化した温帯土壌からCO2,寒帯土壌からCO2とCH4が放出される.このCH4は酸化されてCO2となる.
また, 『天気』誌へのやはり未採用の原稿(槌田2006) 19) でも述べたが,湧昇海域の高温化でCO2が大量に放出される.その実例は西経110度赤道南側の海水中のCO2分圧と海面温度である(Feely 1999). 20) 深海水でのCO2分圧は500~1,100μatm程度であり,これが湧昇して大気に触れ温度が上がると, CO2が放出される.この例では海面温度が24℃のとき海水中濃度は490μatmであったが, 27℃では380μatmであった.海水の温度が上がれば,存在可能な量を「でがらし」として残し,余りは放出されるのである(近藤,槌田2008).16)
4.結論
近藤と私は, 35年間にわたる気温と大気中CO2濃度のデータを分析し,図3および図4というふたつの事実を発見した.
図3では気温によりCO2濃度の年間増加量が決まるという一方的な関係が存在する.図4では1971年から30年間の世界平均気温はCO2濃度の増加しない温度よりも0.6℃高い.これらの事実から, 「気温高が原因で, CO2濃度増は結果である」ことが分かる.
「人為的CO2の濃度が気温を決める」とする現代の通説では,これを支える事実は何ひとつ存在しないだけでなく,今回新しく発見されたこのふたつの事実を合理的に説明することも不可能である.したがって,この現代の通説は完全に否定されることになった.
ところで,この温暖化によるCO2濃度増がいつまで続くのか,また現代の気温高の原因は何か,など多くの課題は未だ解明されておらず,今後に残されることになった.
いずれにしても,現代社会に受け入れられ,国際政治に使われている通説は間違っていたのであるから,これに気づいた科学者には,これを改めるために努力をする社会的責任が生じたことになる.
近藤邦明氏と中本正一朗氏より助言をいただき,感謝申しあげる. (著者の専攻は熟物理学,エントロピー経済学)
参考文献
1) C. D. Keeling, et al.: Nature 375 (1995) 666.
2)槌田 敦: 『CO2温暖化説は間違っている』増補版(ほたる出版, 2007b).
3) A.Tsuchida: International Journal of Transdisciplinary Research 3 (2008) 80.
4)小島 順: 『数学教室』2007年8月号.
5)遠藤勝弘:修士論文「古木年輪中の14C濃度測定の研究」 (山形大学大学院理学研究科, 2000).
6)槌田 敦:季刊at(あっと)(2008)3月号p.65.
7)槌田 敦: 『CO2温暖化説は間違っている』(ほたる出版, 2006a).
8)槌田 敦: 『熱学外論一生命・環境を含む開放系の熱理論』 (朝倉書店,1992).
9) C. D. Keeling, et al.: in D. H. Peterson (ed.): Geophysical Monograph.55 (1989) 210, Fig. 63.
10)河宮未知生:日本気象学会誌『天気』 (2005) 507・
11)近藤邦明: 2006;http://www.env01.net/global_warming/report/kondoh01.htm
12)槌田 敦:日本物理学会誌62 (2007) 115.
13)阿部修治:日本物理学会誌62 (2007) 563.
14)槌田 敦: 2007a;日本物理学会誌への投稿原稿(07年9月30日).
15)近藤邦明: 2008;http://www.env01.net/global_warming/report/buturigakkai/kondoh07.pdf
16)近藤邦明,槌田 敦: 2008;日本気象学会誌『天気』誌への投稿原稿(2008年4月).
17) J. L. Sarmiento: Nature 365 (1993) 697.
18)根本順吉: 『超異常気象』 (中公新書, 1994) p. 213.
19)槌田 敦: 2006; 『天気』誌への投稿原稿(2006年9月3日).
20) R. A. Feely, et al.: Nature 398 (1999) 597.
初出 日本物理学会誌 vol. 65, No. 4, 2010 (2008年11月12日原稿受付)
「『環境問題』を考える」http://www.env01.net/index02.htm より転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔study393:110525〕