阿部です
昨日参加した2つの集会のご報告をします。
いずれも、facebookにアップした原稿です
■川内原発避難問題で院内集会&省庁交渉
昨日は、安倍政権が再稼働を急いでいる川内原発の住民避難問題をテーマとする院内集会・内閣府や規制庁との話し合いが行われました。
予想はしてたとは言え、実にひどい、官僚の答弁でした。放射能を含んだプルームはどの方向にも流れる可能性があるにもかかわらず、避難方向を南東部の一方向で想定していることの不合理。避難先が水没する可能性が高いことが想定されるにもかかわらず、そのことへの対策どころか認識さえ曖昧。原子力防災計画の策定の責任はあくまでも自治体にあると言い張り、国の責任を認めようとしない態度。これで川内原発再稼働にゴーサインを出そうというのですから、住民や自治体当局はたまってものではありません。
特に、高齢者や障がい者など災害時の要援護者に対する避難計画のずさんさは目を覆わんばかりです。自らが決めた「原子力災害害対策指針」が書く「早い段階からの対処や必要な支援の手当」、「共通課題についての対応方針」が明記する「入院患者・入所者の批判に関する計画をあらかじめ作成」の言葉にさえ反して、避難先施設など決まって無くてもかまわないのだ、という態度を露骨に示しました。福島原発事故の際、一体どれだけの高齢者や障がい者の方達が、塗炭の苦しみをなめさせられたか、劣悪な環境の避難所で亡くなったか、その反省が全く踏まえられていません。
官僚達は、避難計画や避難先は決まっていなくても、要援護者とその避難先を事後的にマッチングさせる「調整委員会」が組織されていれば良い、と言い張るのです。しかし、さらに驚かされたのは、その「調整委員会」はパソコンシステムで良いと明言したことでした。「調整委員会は機能の問題だからパソコンで良い」と言うのです。
入院者や入所者が避難する場所は福祉避難所でなければなりませんが、福祉避難所に指定されるどこも定員がいっぱいで事故時に受け入れは困難だというのが現場の切実な声です。これに対しても、定員を2倍にするから大丈夫、などとノーテンキな発言。人もスペースも足りない現状の福祉施設や病院で、定員を2倍になどすることは絶対に不可能、仮に2倍にしたらどんな悲惨な状況になるかと言うことにさえ想像力が及ばない様子。福祉や医療の現実を何にも知らない人たちだということがよく分かりました。
また、原発事故が起きた時の「屋内退避」も強調されましたが、福島事故を見ても分かるように、地震や津波に襲われた場合は、退避すべき家屋や建物自体が崩壊するということさえ想定していない様子です。内閣府や規制庁の原子力防災計画が如何にずさんか、単なる絵空事に過ぎないか、そのことが浮き彫りになりました。
川内原発だけで無く、全国どこの原発も同様の問題を抱えています。いったん事故が起きたら、避難などほとんど無意味です。原発は地球上のどこにもつくるべきではありませんが、特に狭い日本列島、地震と津波と火山噴火が繰り返されてきた日本列島で、原発をつくったり、動かしたりすることは愚の骨頂。電力会社や官僚達はどんな責任も取ろうとして無く、感じてもいない、そのことを痛感させられた、院内集会&省庁との話し合いでした。
■ブラックバイトと奨学金返済の重圧が若者を苦しめる―戦争する国づくりの土壌にも
30分前に、原発事故時の避難計画のずさんさについての院内集会について報告しました。
昨日は、その後、やはり参議院議員会館において開かれた「福島みずほと市民の政治スクール」にも参加しました。「ブラックバイトと全身○活時代 戦争できる国に向けた若者の働かせ方」がテーマで、中京大学教員の大内裕和さんが「奨学金とブラックバイトが若者を戦争に追い込む」、ジャーナリスト・和光大学教員の竹信三恵子さんが「雇用劣化と家事ハラが若者を戦争に追い込む」と題して講演を行いました。
大内さんのお話は、現在の奨学金制度が学生をその就職後から中年期に至るまで多額の借金とその利子の重圧で如何に苦しめているか、奨学金の返済額の重荷が若者の恋愛や結婚の障害にさえなりつつある現実、その裏で甘い汁を吸い、ほくそ笑む金融機関と借金取り立て会社の「貧困ビジネス」という以外ないおぞましい姿などを、具体的な数字も交えて、鋭く、分かりやすく説明するものでした。
また学生のアルバイトは、かつてのバイトとは違い、サービス産業などにおいて既に主戦力となっていること、学生バイトはれっきとした労働者であること、ブラックバイトに見られる非正規労働のとことんまで行き着いた劣化現象と、正規労働者の雇用や労働条件の劣悪化は相互に連動し、相互作用していることも指摘されました。
ショックだったのは、奨学金滞納で苦しむ人たちの情報が防衛省に提供されているという事実でした。防衛省が何を狙っているか、それは言うまでもないでしょう。大内さんは、滞納者をさらに追い込むために、国は次には奨学金滞納者の自己破産を不可能にする措置を打ち出すのでは無いかと述べ、ブラックバイトに見られる劣悪な労働者処遇、労働者を過重な債務で追い詰める奨学金制度を告発することは、いまや「反戦闘争」でもあると語りました。
竹信三恵子さんのお話は、大内さんのお話と呼応しつつ、それにジェンダー視点も含めて新たな論点を加えるものでした。竹信さんらしい、シャープで説得力のあるお話でした。
大内さんと竹信さんの共著『「全身○活」時代 就活・婚活・保活からみる社会論』(青土社)をお薦めいたします。