原発処理水の海洋放出禁止を国際ルールに――中国外相王毅発言に関連して――

 福島第一原発処理水の海洋放出方針が日本政府によって決定されると、ただちに韓国から非難の声が上がった。『朝日』(夕刊、6月2日)によれば、中国外相がBRICSのオンライン外相会合で日本の海洋放出問題を国際問題と見て、「利害関係国や国際機構との協議がまとまる前に勝手に放出しないよう、日本政府に促す必要がある。」と発言した。
 これは、日本国外交にとって真事に良いチャンスだ。原発処理水海洋放出禁止を国際的合意とする方向で努力すべきだ。今日であれば、それは容易に中国の賛同を得る事が出来る。そして中国自身をも将来拘束することになろう。
 日本国がその方向に国際社会をリードすると同時に、国内的には原発処理水の生活用水化、飲料水化に努力する。循環型社会経済の一つの具体的実践である。ALPS処理を第一次、第二次、必要あらば第三次と重ね、すべての核種を飲料基準のはるか下方まで除去し、トリチウムについては海水によってではなく、真水によって40倍(WHO基準の約1/7)、80倍(アメリカの飲料基準)に希釈する。東京都民や日本国民が飲用を含む生活用に使用する方向を目指すが、最初の段階では都民や国民に心理的・生理的抵抗があるだろうから、その種の抵抗感の少ないはずの首相官邸、経産省、東京電力、連合労組本部等の原子力市民社会の職員食堂や社員食堂でワクチン治験第三段階のような趣旨で活用する。
 原子力市民社会エリートが福島原発事故に起因する実質的被害・風評的被害に痛めつけられて来た福島漁民を大手門からから搦め手から攻めてALPS処理水の海洋放出を納得させる無理筋よりは、足元の原子力市民社会に科学的に説明して、ALPS処理水起源の上質水を飲用水・生活用水として使用してもらう様に努力する方が、百倍千倍も楽なはずだ。真事に不思議なことに、原子力市民社会エリートは、この十年間、楽な道を選ばずに、無理筋を歩んで来た。
 このような原子力汚染水の日本型処理活用の方針を引っ提げて、日本外交は、韓国、中国、そして北米西欧諸国も亦従わざるを得ない原子炉排出水、原発事故処理水に関する国際ルールを創出すべきである。

                          令和3年6月4日(金)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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