原発問題3冊の書評

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電気代一時不払いタイムス The TEPCO Unpaid Times
2013年9月10日号 転送/転載/拡散歓迎
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最近、いろいろと重要な本を読んだのだけれど、その紹介が遅れていた。こう
いうのは、かっこよく書こうと思わない方がやはりよい。溜まっちゃうからね。
では、いきます。

『原発のコスト──エネルギー転換への視点』 大島賢一著、岩波書店

タイトルがすべてを語っているような気がするのだが、原発は高い。火力の方
がまだ安い、という内容です。

政府と電力会社によれば、発電のコストは、 1kWh あたり火力発電(10.5円)
や水力発電(7.5 円)に比べて、原発は 5.5円で、安いから原発を推進するとい
う主張だった。経産省の数字なのだが、これは原発の稼働率が80%という、かな
り無理のあるモデル計算だ。

大島は、モデル計算ではなく、電力会社が発表している会計書類からこの直接
コストを割り出し、そこに、高速増殖炉などの技術開発コストや、立地対策コス
トを加算した結果、原子力(10.25 円)、火力(9.91円)、水力(7.19円)とな
り、実は原子力が一番高いと結論づけている。

(この点、金子勝は『原発は火力より高い』(岩波書店)で、きわめてシ
ンプルな回答を出している。福島原発事故前の2010 年3 月期の日本原電の販売
額1450億円を、販売電力量の136億kWhで割ると、11円!原発はあきらかに高い
のだ)

脱原発にもコストはある。政府によれば原発ゼロの場合の燃料費は年間3.2兆
円かかるが、大島の計算では、節電で電力需要を15%削減した場合、燃料の焚き
増しは原発が供給していた分(30%)の半分となり、追加の燃料費は1.6兆円と
なる。

しかし原発は、動かしていない間もとんでもない金を食うシステムである。
今、動いている原発は関西電力大飯原発4号機だけだが、その他の動いていない
50機の原発のために、維持管理費は年間で0.8兆円が使われている。さらに、再
処理費用 1.3 兆円、廃棄物処理費用(算定不可能)、立地対策費 0.4 兆などを
ひっくるめて、事故のコストを別にしても年間 2.6兆円にのぼる金が、今ドブに
捨てられていることになる。これなら脱原発した方が、経済的にトクなのだ。

東電・福島原発事故の収束費用や、賠償費用をこれらに加えると、原子力発電
のコストは天文学的になってくることを明らかにする一冊。

原子力発電の不経済性を詳しく知りたい人は、ぜひ読んでください。この本は
わずか760円。

つづいて。

『原発は火力より高い』 金子勝著、岩波書店

電力会社の経営をめぐる状況はどんどん変化している。けれども市民の間で
はあまり関心を持たれていないような気がするので、不払いプロジェクト的に情
報を紹介していきます。この本も必読。

「『原発は安い』のウソを徹底的に暴く! 数字をもとに、脱原発への道筋を
具体的に提言する」という帯が期待を感じさせます。

原発の電気は一体何円なのか?という点でおもしろい答えがひとつ。金子の試
算では、福島原発事故前の 2010 年3 月期の日本原電の販売額1450億円を、販売
電力量の136億kWhで割ると、1kWhあたり11円。いきなり他の電源を越えている。
(火力:10.5円、水力:7.5円)

これに立地対策費、技術開発費、事故収束費用、賠償費用が乗ってくると思う
と、げんなりする。ぜったい脱原発した方が、よい。金の問題だけではないけれ
ど。

賠償費用が10兆円になり、それを全国の電力会社が負担した場合、島根1号機
での発電単価は35円/kWh、もっとも安い玄海4号機でも17円/kWhになる。

原発推進派は、こういう本を読んで、どんどん反論してもらいたいものだ。

金子によると、現在の原発政策は、バブル崩壊後の「失われた20年」と同じこ
とをやっている。原発という巨大な不良債権処理の先送り、税金(賠償、収
束費用)投入、大企業保護……。

たとえば日本原子力発電。再稼働不可能な老朽原発をかかえて、福島事故以来
1kWも発電せずに2年が過ぎたこの会社が、いまだに存続している。破綻している
企業同士が支え合っている。その原資は私たちの電気代と税金だ。

電力改革のビジョンから反TPPまで、幅広く語りつつ、実にコンパクトな一
冊。ぜひ読んで、お近くの図書館にもリクエストしてください。

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今日は本当に涼しい夜で、原発なしでまた夏が過ごせたなあと、しみじみ思
う。原発はいらないし、全部廃炉にしたらいいし、国全体で見ればそれで経済的
にもトクするんだが、電力会社と銀行がそれを許さない。なんと勝手なやつら。

書評シリーズ最後の1冊は、

『電気料金はなぜ上がるのか』 朝日新聞経済部、岩波書店

原発報道では批判されることも多い朝日新聞。一抹の良心を期待して読む前に
出会ってしまった、かの池田信夫氏の書評。

> 電気料金がなぜ上がるのかというタイトルなのだから、値上げの原因が書い
> てあるのかと思ったら、電力会社の人件費が高いとか、動いてない原発でもいろ
> いろな費用がかかるとか、業界団体の会費がどうとか書いてあります。こういう
> 話はすべて電気代がなぜ高かったのかという説明としては意味がありますが、値
> 上げとは何の関係もありません。(http://blogos.com/article/68834/

んんん? 変な話だなあ。

イケノブさんの批判はいったんおいて、この本は、きわめてジャーナリス
ティックに電気代の裏側に迫っていて、いい内容だ。

たとえば総括原価方式。電力会社は今後の電力販売量の見込みと、それに対し
てかかる製造原価の見込み金額から、1kWhあたりの価格を決めることができる。
私が電力会社なら、1000kWhの電気を、1万円かけて作るので、単価は1kWhあたり
10円です、という具合。

しかしどっこい、もしも見込みの販売量より多く売れたり、原価が安く済んだ
りしたら、差額は電力会社の財布に入る。実際、2011年までの10年間に、東電だ
けで6000億円が浮いて、自由に使われている(消費者には還元されない!!!)。

そして金を無尽蔵に食うのが、原発とセットの再処理事業だ。電事連はこのコ
ストを19兆円と見積もった。しかしこれから再処理する予定の3.2万トンの使用
済核燃料から生まれるMOX燃料4800トンの価値は9000億円。20分の1以下の価値し
かない。もちろん19兆円というのは、控えめな試算だ。

この本でおもしろいのは(というと違和感があるけど)、廃炉費用の計算だ。
原発は、運転しながら廃炉費用の積立をしているが、それは発電した期間の分だ
けなのだ。だから積立の状況はまちまちで、関西電力美浜1号機などは、積立金
不足額が95億円もある。運転開始から3年後の73年に燃料棒が折れる事故を起こ
したり、なにかと事故、故障が多くて運転期間が短いのだ。

しかも、そういう原発ほど、できるだけ長く運転したくなるのが恐ろしいとこ
ろだ。途中で廃炉にすると、積立も足りないし、減価償却の済んでいない資産=
原発を損失に繰り入れなければならなくなるからだ。

さて、イケノブさんの批判に戻ると、これはいわゆる、「ためにする議論」と
いうものでしょう。この本の計算では、「動いてない原発」の費用が、東電だけ
で2012年度に4296億円かかっている。

これは1kwも発電していない原発にかかる費用だ。火力の燃料費が高くついて
も、そこからは電気が生まれているから費用対効果が計算できるけれども、原発
の場合は、ドブに金を捨てているだけだ。電気代を値上げしないためにどっちを
捨てるかと言ったら、本来原発をなくすべきだけれども、こういう人は原発を使
いつづけることが頭の前提になっているので、つい「値上げとは何の関係もあり
ません」などと書いてしまうのだろう。

それって、東電の論理そのものじゃないか。

今、経産省は廃炉による電力会社の損失を、私たちの電気代で補填しようと
している。電力会社に巨額の貸付をしている銀行の責任=貸し手責任を問わず、
株主の責任を問わず。

私たちはこれに絶対反対すべきだと思う。電気代の支払いをかけて、とにかく
意思表示をしよう。

いまこそ電気代不払いを!

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発行:電気代一時不払いプロジェクト
http://d.hatena.ne.jp/toudenfubarai/20120217/
ツイッター: @fubarai
メール: toudenfubarai@gmail.com

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion1447:130910〕