(2022年5月3日)
空は青く澄みわたり、緑の風が心地よい。絶好の「平和憲法」日和である。
本日の東京新聞「筆洗」欄に、
憲法記念日天気あやしくなりにけり (大庭雄三)
という句が引用されているが、そのような懸念を吹き飛ばす上々の好天なのだ。
本日の「改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし 2022 憲法大集会」、事前の主催者呼びかけでは、「新型コロナウィルスの感染を極力回避するため、当日はオンライン中継での視聴を積極的に活用して」という調子だったが、参加者の出足は好調だった。
なんとも多種多様いろんな団体の旗を立てて人々が集まってくる。家族連れも、個人参加の人々も、老いも若きも、猫も杓子もてん。そして、数知れないビラを渡される。署名を求められる。そしてカンパも…。「天気あやしい」を意識してか、3年ぶりの大集会だからか。参加者のボルテージが高い。 たくさんもらったビラの中に、「世直し川柳瓦版」(レイバーネット日本・川柳班)というものがあった。その中の一句が、「憲法記念日天気あやしくなりにけり」を吹き飛ばしている。
九条の螺旋(ネジ)締め直すデモに立つ (阿Q)
凛としたこの姿勢、おそらくは多くの参加者の気持ちを代弁する句。この集会は、「九条のネジを締め直している」のだ。いや、 不粋に解説すれば「九条を守ろうという自分自身の気持ちのネジを締め直そう」というのだ。 もう一つこの集会参加の心意気。
この星の憲法作れとデモに行く (今朝)
ほかにも感心した句をいくつか。
憲法を教え偏向だと言われ (奥徒)
この国に空気のようにある差別 (芒野)
国旗振るたびに命が軽くなり (一志)
星条旗星に紛れて丸一つ (J・ポンド)
川柳があれば、短歌もある。「平和万葉集(巻五)ー憲法とコロナの時代ー」(新日本歌人協会)の掲載作品募集についてのビラに、「巻一」~「巻四」からの幾つかの歌が掲載されている。そのうちの何首かに目が惹かれた。
海の水わけても夫の骨返せよと狂いし母が天皇を責む(中里奈津子)
たかが藁なれど人形その胸を竹槍に突きしこの手おぞまし(黒崎米子)
千羽鶴幾百万羽供ふるとも帰り来るなし失せたる一羽(斉藤史)
声あげて発語なすべき時至る国会前にわれは来たれり(来嶋靖生)
ああ子らにごめんなさいと言ふだけで許さるると思ふな戦をとめず(木村雅子)
改めて思う。一見「憲法をめぐる天気の模様はあやしく」なってはいる。しかし、平和を願う国民の願いは深く切実である。この国民の平和への願いや思いがある限り、憲法をめぐる天気が、一天にわかにかき曇るようなことはけっしてならない。この集会への参加者は、そう確信できたのではないか。
東京新聞(電子版)が「護憲派1万5000人声合わせ『今こそ憲法を守れ』 憲法記念日の大規模集会、3年ぶり開催」と報道した。
「日本国憲法施行から75年を迎えた憲法記念日の3日、護憲派の大規模集会が東京都江東区の有明防災公園で開かれ、1万5000人(主催者発表)が参加した。過去2年はコロナ禍で中止され、護憲派が「5・3」に結集するのは2019年以来3年ぶり。改憲派がロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、戦争放棄をうたう9条改正論を声高に叫ぶ中、「今こそ憲法を守れ」と声を合わせた。」
集会参加者の気持ち表した、よいリードだと思う。本文で大江京子弁護士の呼びかけが紹介されている。「残念ながら9条は戦後最大の危機を迎えている」。しかし、「市民の尊い犠牲の末、戦争の惨禍を起こさせないと誓い、日本国憲法を定めた。この決意を捨てさって良いわけがない」
まったくそのとおりである。これまでも、幾たびもの「憲法の危機」を乗り越えて、今日の日本国憲法がある。そのたびに、国民は憲法を選び直してきたのだ。この度の「危機」を乗り越えられないはずはない。
さあ、九条のネジを締め直そう。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.5.3より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19073
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12002:220504〕