参議院選挙の共通公約について野党党首に要望書を提出

 

2015年12月15日

目下、野党間で来年7月の参議院選挙に向けた選挙協力のあり方、その際に掲げる公約(以下、これを「共通公約」と呼ぶことにする)について協議が行われている。
この件で筆者は今日、野党5党の党首(民主党代表・岡田克也氏、日本共産党委員長・志位和夫氏、維新の党代表・松野頼久氏、社民党党首・吉田忠智氏、生活の党と山本太郎となかまたち代表・小沢一郎氏・山本太郎氏)宛てに次のような要望書を発送した。

目下の重要課題を共通公約に掲げた選挙協力を」
~来年の参議院選に臨む野党各党への要望書~
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/yobosho_yato_toshu_ate20151215.pdf

タイトルをご覧になったら、漫然とした要望と受け取られそうである。しかし、このような仰々しい文書を1個人として野党党首に送ったのは、目下、野党間で進められている共通公約の協議のあり方に強い疑問を感じているからである。
要望書の全文を書き出すと長くなるので、ここでは、私が目下、野党間で進められている共通公約の協議のどこに疑問を感じているか、それをどのように改めるよう要望したかを記した箇所を転載しておきたい。

安保関連法廃止の他に3つの課題を共通公約に
~辺野古基地・原発再稼働・税制改正~

1.国内外の平和に重大な脅威をもたらす安保関連法の廃止を共通公約に掲げること
目下、安保関連法の廃止と立憲主義の回復を共同の目標に掲げた選挙協力が協議されています。確かに安保関連法はその内容において戦後日本が世界に誇ってきた平和憲法の条項を根底から覆すものです。また、法案審議の過程を振り返れば、参議院特別委員会での審議は、参議院議事規則を踏みにじった「採決不存在」、「議事録偽造」と称すべき実態を経たものです。それだけに、安保関連法は一刻も早い廃止が望まれ、それを可能とする政権を誕生させることが喫緊の課題です。

2.移設条件なしの普天間基地閉鎖、辺野古基地建設阻止を共通公約に掲げること
しかし、安保関連法の廃止だけに絞った選挙協力・共同でよいのかというと、私はそうではないと考えます。目下の国政では辺野古への基地移設、当地での新基地建設をめぐる国の工事強行、それを阻止ずる沖縄県内外の運動の対峙が正念場にさしかかっています。普天間基地の危険性を除去する責任が沖縄県にあるかのような物言いで、辺野古への基地移設を沖縄に迫る政府の主張は翁長知事の反論にあるとおり、政治の堕落です。
沖縄県と国の間の裁判の帰趨にもよりますが、来年7月前にもボーリング調査を経た埋め立て工事が強行される可能性を否定できません。それだけに来年の国政選挙は辺野古への基地移設・当地での基地建設を阻止する上で分岐点となる選挙といって過言ではありません。この選挙で、政府による辺野古基地工事の強行にNoの民意を突きつけることが、タイミングの上でも、決定的に重要です。
野党各党は政府・自民党が強行しようとする辺野古基地建設に反対で一致するはずだと私は考えますが、どうなのでしょうか? 野党までが選挙協力のための共通公約から、辺野古基地問題を外すなら、沖縄切り捨てと言われてもやむを得ません。ぜひ、移設条件なしの普天間基地閉鎖、辺野古基地建設阻止を共通公約に掲げ、国民に信を問うていただくよう要望します。

3.「出口がふさがった原発再稼働は認めない」を共通公約に掲げること
福島第一原発の事故の教訓を忘れたかのように、目下、各地で原発再稼働に向けた動きが進んでいます。しかし、その福島第一原発では廃炉に向けた工程は一向に見えないばかりか、放射能漏れや汚染水の流出が止まりません。その上、使用済核燃料の再処理を掲げた核燃料リサイクル事業の破綻がいっそう明瞭になってきました。
その一方で、福島第一原発事故以来、原子力なしでも電力供給は所定の予備率を確保した上で、滞りなく需要に応じました。 また、直近の四半期決算では、すべての電力会社が、原発が休止した状況でも、黒字に転じました。
こうした状況の下で、使用済核燃料の処理の目途がないまま再稼働を認めることは、はけ口のない器に危険な物質を注ぎ続けるに等しく、未来の世代に対する無責任極まりない政策です。この意味で、「出口がふさがった原発再稼働は認めない」は野党の共通公約になり得るし、そうならなければならないと考えますが、どうなのでしょうか?

4.税制・財源に関する具体的対案を共通公約に掲げること
安保関連法以外の課題の中で、避けて通れないのは経済分野の課題です。取りわけ、逆進性を払拭できない消費税率の引き上げを図る一方で、根拠のない法人税減税を連年、実施しようとする自公与党の税制大綱は、応能負担の理念を蹂躙する不公正な税制の極みであり、こうした税制の撤回を公約に掲げることは多くの国民の意思に合致すると私は確信しています。
若年世代の多くが将来の就業不安、結婚もままならない低賃金に苦しみ、高齢世代の多くも将来の健康・要介護の不安、老後破産などの不安を抱える中で、多くの国民は社会保障や景気の先行きに強い関心を寄せています。
そうした中で行われる来年の国政選挙にあたって、野党が安保関連法の廃止に絞った選挙協力を目指すとすれば、大きな過誤を犯すことになり、選挙結果を見通しても重大なマイナス要因になるのではないかと危惧します。

そこで、野党各党が来年の選挙に臨まれるにあたっては、別紙で詳細をご説明する税制関連の公約、つまり、道理のない法人税減税を中止し、法人税率を2013年度時点の水準に戻すとともに、所得税の分野で高額所得者を優遇している金融所得の低率分離課税を廃止する、それとセットで、消費税率の10%への引き上げを中止し、現在の8%に据え置く、をぜひとも共通公約に掲げていただくよう要望します。

税制改正私案詳細説明(これについては、このブログの次の記事で取り扱う。)
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/appendix_zeiseikaiseisian_shosaisetumei.pdf

税制改正私案関連資料 No.1
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tax_data1.pdf

税制改正私案関連資料 No.2
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/tax_data2.pdf

安保関連法廃止に絞るのは過誤。民意を冷静に見極めて
最後に申し上げたいのは、課題を1点に絞った方が共同の輪を広げやすいと決めてかかるべきではないということです。国政上で喫緊の課題が複数あるなら、それらの諸課題について一致点を探る努力が必要です。
この点で、安保関連法の廃止は日本の将来の平和と安全にとって、ゆるがせにできない課題であると同時に、世界の平和にも大いに貢献する重要な課題です。
しかし、多くの有権者は安保関連法だけに関心を向けているわけではなく、目下の消費税増税の行方、就業の安定と雇用条件の改善、社会保障の充実等にも強い関心を向けています。

また、沖縄の民意と自治権を踏みにじり、根拠もない沖縄駐留の米国海兵隊の抑止力にしがみついて辺野古基地建設を強行しようとする政府の理不尽な国策に対し、疑問、怒りを感じている有権者が過半を占めています。何よりも歴史上、幾度となく「琉球処分」の再現と言ってよい沖縄切り捨てを繰り返してきた自民党政権を断罪することは日本の政党と全国の有権者に課された責務と言っても過言ではありません。
であれば、辺野古建設に向けた工事が強行されようとするさなかに行われる国政選挙で、自民党政権と対峙する野党各党が辺野古基地建設阻止を共通公約に掲げるのは当然のことではないでしょうか。

さらに、将来のエネルギー構成に関して野党間で種々の意見があるにせよ、出口のない核燃料を増殖させる原発再稼働を止めることは未来の世代に対する現世代の道義的責任であるという点では野党各党の見解の一致は十分可能と考えます。

そもそも、安保関連法の廃止を願う有権者の中で、辺野古基地の建設には賛成する、原発再稼働には賛成する、消費税の増税にも賛成するという人々はどれくらい、いるのでしょうか? 実態はおおむね、その逆ではないでしょうか?
このような有権者の目線に立てば、安保関連法の廃止の他に、上記の3つの課題を共通公約に掲げることで、支持が広がることはあっても狭まることはないと思います。
野党の中には当面、安保関連法廃止に絞った暫定政権を目指し、その目的を成し遂げたのち、すみやかに総選挙を行うという構想もあります。しかし、そのような構想はどれほどの有権者の共鳴を得るでしょうか? いかに安保関連法が重大とはいえ、国政選挙という以上、有権者はそれ以外の重要な課題も判断材料に加えて1票を投じるはずです。自らの価値判断と有権者の価値判断にずれはないか、慎重に見極めて共通公約と選挙協力、政権構想のあり方を協議されるよう要望します。

初出;醍醐聰のブログから許可を得て転載

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3162:151216〕