学力低下が深刻になり、倫理学や哲学の講義も旧態依然の概論的な講義では、内容を理解させ、集中させるのは極めて困難になってきている。そこでファンタジーやミステリーなどの文学形式にすることによって、臨場感を持たせ身近に感じやすいようにして楽しく授業をうけてもらい、問題意識を伝わりやすくできないか試みている。
大阪経済大学の倫理学入門は3限「鉄腕アトムは人間か?」5限「ヤマトタケルの大冒険」という哲学ファンタジーを自作して教材にしているのが反響を呼び、前期に引き続いて後期も計五百人を超える受講者があった。
この科目は三年連続年間受講者が千人を超えており、ファンタジーを倫理学入門のテキストにしたのが原因と見られる。対照的に土曜日午後6時からの「哲学入門」「現代と哲学」は講師は同じ保井温であるが受講者は二十名台に止まっており、出席率もかんばしくない。
倫理学の場合、ファンタジーにして倫理学の問題をてんこ盛りにするのはそれほど難しくないのだが、哲学の場合はそう簡単ではない。
ファンタジー化が無理なら、ミステリーにということで、『哲学入門』用に『長編哲学ミステリー 崩れゆく学園』を執筆した。現在さらに『現代と哲学』用に『長編哲学ミステリー (仮題)沈みゆく列島』を執筆中である。これらは物語を通して倫理を考えていた前二作とは違い、物語の中に哲学講義を挿入していくという、いわゆる『ソフィーの世界』方式をとっている。そうしないと倫理学との差別化ができないので、受講生が納得しないと考えたからである。
自作のファンタジーやミステリーをテキストに倫理学・哲学の講義を行っている例は他にないのではないか、その点全国の大学人にも注目していただき、学力低下への対応策として教育改革に参考にしていただけたら幸甚である。
参照
『長編哲学ファンタジー 鉄腕アトムは人間か?』
http://www42.tok2.com/home/yasuiyutaka/shoin/atom.pdf
『長編哲学ファンタジー ヤマトタケルの大冒険』
http://www42.tok2.com/home/yasuiyutaka/shoin/yamatotakeru.pdf
『長編哲学ミステリー 崩れゆく学園』
http://www42.tok2.com/home/yasuiyutaka/shoin/kuzureyuku.pdf
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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