「*安倍政権の問題を示す必要ある」 元首相国葬を考えるシンポ、3200人視聴 東大の國分教授研究室が開催*
東京新聞 2022年9月19日 22時38分
安倍晋三元首相の国葬を考えようと19日、東京大の國分功一郎教授(哲学)の研究室が「国葬を考える」をテーマに、政治・哲学者、弁護士ら識者6人による議論をユーチューブで配信した。國分教授は「モリカケ・桜疑惑など、安倍政権の問題を国葬の開催前にはっきり示す必要がある」と指摘し、同時中継で約3200人(主催者発表)が視聴した。(望月衣塑子)
東京大の石川健治教授(憲法学)は「組織法に加えて『国葬法』までつくらなくても、今回の国葬ぐらいはできる、というのが法制局の立場。有力な行政法学者も、服喪義務を課さない非権力行政なら、組織法だけでやっていいと考える。しかし、国家作用としての国葬が、本質的に重要事項だと考えれば、服喪義務を課さなくても法律が必要になる」と指摘した。
國分教授は「安倍政権は公文書を破壊、権力の及ばない人々を徹底批判した。国葬が開催されればこれらが黙認され、安倍政権の完成に手を貸すことになる」と批判した。
京都精華大の白井聡准教授は「(第2次安倍政権の)2012年体制を生んだ日本は排外主義者が横行し、日本会議や旧統一教会などの右派が活性化した」と指摘。「(旧統一教会との関係を騒ぎ立てるのは、安倍氏を銃撃した)山上徹也容疑者の思うつぼだとの批判があるが、暴力でなければ変えられないような状況を私たちが作ってしまった。テロが起きる前に我々の日本社会は腐り切り敗北していた。国葬は私たちの敗北していた社会をうやむやにし、否認することになる。許してはならない」と強調した。
同志社大大学院の三牧聖子准教授は「2017年のトランプ米大統領(当時)の初来日で日本は膨大な兵器購入の要望に応じた。トランプ氏は帰国後『軍事とエネルギーで大規模な発注があるだろう』とつぶやき、国民の頭越しに外交が行われた」とし、「安倍政権の日米蜜月の下で何が起きたか。安倍外交のレガシー(遺産)を再考する必要がある」と話した。
旧統一教会の元信者やカルト二世の救済にあたる山口広弁護士は「国葬を行えば、信者にとっては旧統一教会との関係を深めた安倍氏を国が認めたことになり、教団幹部が喜ぶ。信者の家族が苦しみカルト二世が苦しむ。なんとかこれ以上、彼らが苦しまないようにしてほしい」と訴えた。