2013年5月、アナンド・グロバー 国連特別報告者は、健康への権利/人権を課題とした、フクシマの状況に関する報告書を公表しました( http://www.foejapan.org/energy/news/pdf/130703.pdf )。
フクシマ核災害の被災者が持つ ‘健康への権利’ を主題としたグローバー氏の報告書は、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)やその他のNGO、岐阜環境医学研究所の松井英介医師などの多くの人々に高く評価されています。 IPPNWのアレックス・ローゼン医師は、『「被災者達の健康への権利および健康な 環境に住む権利が、計画的且つ意図的に拒否されている」と公然と批判しているグローバー氏の報告書は、公平でバランスがとれ、被災者への共感に満ちている』と論評しています。
さらに、2014年11月23日、グローバー氏は、東京で開かれた市民科学者国際会議でビデオメッセージを送りました。( http://csrp.jp/symposium2014/programme_en )
彼のメッセージは、このように締め括られています:
「この時点においては、国内外でのフクシマを巡る論議の大部分が、専門家や私のようなフクシマ事故とはかけ離れた所にある人たちによって占められていることを強調しなければなりません。
核災害の影響を受けた人たちこそが、この闘いに何度も何度も繰り返し応じ、国内においても国際的にもダイアログを先導していかなければならないのです。」
このアナンド・グローバー氏の「核災害の影響を受けた人たちこそが、この闘いに粘り強く応じていかねばならないのです」との訴えに応えるが如く、勇気を奮い起こし立ち上がられた被災者の方々がいます:
1) まず、2014年8月、「ふくしま集団疎開裁判」の第2弾として「子ども脱被ばく裁判」の提訴を起こされた方々です。
この裁判のバックグラウンドについては、”ママレボ通信” サイトが解りやすく簡潔に説明してくれています: 〈出典: ”ママレボ通信” http://momsrevo.blogspot.com.es/2014/08/blog-post_20.html 〉
2014年8月20日水曜日
子どもが被ばくを避ける権利と、国・県の不作為を問う「子ども脱被ばく裁判」がスタート
「子ども脱被ばく裁判」(第二次ふくしま集団疎開裁判)の提訴についての記者会見が8月18日、参議院議員会館で行われました。
国や県が、放射能拡散の情報を隠ぺいし、これまで十分な被ばく対策を行わなかったことに対する責任を追及し、ひとりあたり10万円の国家賠償を求めるとともに、県や市に対して子どもたちが安全な場所で教育を受ける権利があることの確認を求める裁判です。
8月29日に福島地方裁判所に提訴し、福島県内・外の原告数十名が参加する予定。
2011年から2013年にかけて行われた「第一次ふくしま集団疎開裁判」では、仙台高裁が「郡山市の子どもは低線量被ばくにより生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される」と判決で認めながらも、訴えを却下しました。
(ママレボ通信:【ふくしま集団疎開裁判】判決文は、子どもたちの健康リスクを認めています)
今回の第二次提訴では、子どもたちの脱被ばくの権利が認められるのでしょうか。
■子ども脱被ばく裁判は、こんな裁判
記者会見の冒頭、柳原敏夫弁護士が、福島とチェルノブイリを比較して「福島ではすでに、疑いも含めて甲状腺がんの子どもが89人も見つかっている。ベラルーシと比較すると40倍の発症率だ」と説明。「福島の子どもは、放射線によって命の危険にさらされており、戦争状態の中にいる」として、緊急に被ばく回避が必要であることを訴えました。
続いて光前幸一弁護士が、「子ども脱被ばく裁判」の趣旨を説明。これによると、前回の「第一次ふくしま集団疎開裁判」と今回の「子ども脱被ばく裁判」の大きなちがいは、以下2つの点にあるということです。
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≪前回の裁判≫
前回は、郡山市の学校に通う子どもたち14人が原告となり、郡山市に対して「放射線量の低い安全な環境で教育を受けさせてほしい(疎開させてほしい)」と、仮処分を申し立てた。
≪今回の裁判≫
今回は、2つの裁判があります。
①、「安全な環境で教育を受ける子どもの権利を確認する裁判(子ども人権裁判)」。
→福島県の小中学校に通う子どもたちが原告となり、居住している各市町村に対して、安全な環境で教育を受ける権利があることの確認を求めるものです。
勝訴すれば、保護者と子どもが希望する場所で、安全に教育を受けられるように「避難」や「移住」の費用を求めていくことになります。
②、「原発事故後の国と県の放射能政策の違法性を問う裁判」(親子人権裁判)
→福島県に居住している(あるいは事故当時居住していた)子どもと保護者が原告となり、国と福島県に対して、無用な被ばくなどをさせたことや、精神的苦痛を与えたことに対する慰謝料(ひとり10万円)を請求する裁判です。こちらは、福島に住んでいる方だけでなく、すでに避難されている方も原告になれます。
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今回の裁判では、なぜ、子どもだけでなく保護者も原告になることに決まったのでしょうか――。
弁護団によると、原告になる保護者たちの強い希望として、「国や県の不作為を追求し、責任を認めさせたいという思いがあるから」とのことでした。
福島県に居住している(あるいは事故当時居住していた)保護者たちは、(1)国が事故発生直後に、放射能拡散情報などを隠ぺいしたこと、(2)子どもにまで年間被ばく20ミリシーベルトを設定したこと、さらには(3)福島県がヨウ素剤を配らなかったことなどによって、無用な被ばくをさせられてしまった、という思いを事故後ずっと抱えて苦しんでいるのです。
また、なぜ「ふくしま集団疎開裁判」から、「子ども脱被ばく裁判」に名前を改めたかというと、原告になる保護者から、「“疎開”と聞くと、行政によって強制的に移されてしまうイメージがある。行政のことはまったく信用できないので、避難・移住先は自分たちの希望で選びたい」という意見が多数上がったからだということです。
口には出せないまでも、このように考えている福島県内の保護者は多いのではないでしょうか。
弁護団によると、現在でも福島県内の通学路などには、1マ イクロシーベルト毎時近いホットスポットがあり、事故後の初期被ばくなども合わせると外部被ばくだけでも高い数値になることが予想されるとのこと。さらに 現在も、廃炉作業が行われている福島第一原子力発電所から放射性物質が飛散しており、吸い込む危険性があるため、こういったリスクも含めて訴えていくそう です。
■ 事故の責任を追及し、子どもを安全な場所で生活させたい
また、この日の会見に参加した原告になる予定の保護者たちは、裁判に臨む思いを次のように訴えました。
○長谷川克己さん(47歳)郡山市→静岡県
8歳になった息子とふたりで参加する。原発事故から3年半、行政が行ったことは理不尽の数々だった。事故後、多くの諸外国が80キロ圏外に避難を指示したのに、日本政府はなぜ20~30キロの住民しか避難させなかったのか。なぜ、「ただちに影響はない」と繰り返したのか。なぜ、年間被ばく量を20ミリシーベルトにまで引き上げたのか。なぜ、今でも放射線量の高い地域に人を戻そうとするのか。このまま理不尽な状況に屈しているわけにはいかない。子どもは自分で守ると決めた。
○松本徳子さん(52歳)福島市→神奈川県
“復興”という名のもとに、 なにもかもなかったことにされようとしている。私たちの声が押し殺されようとしている。この裁判を機会に、どこに責任があるのかをはっきりさせたい。子ど もたちを、少しでも放射線量が低いところに避難させないといけないという気持ちで、今回ここに立たせてもらった。しかし、これは福島県だけのことではな い。汚染はどんどん広がっていく。だからこそ、みなさんのお力を貸してほしい。
○匿名 郡山市→東京都内
郡山市内で、小さな医院を営んでいる。事故後は1か月ほど家族で避難したが、仕事や学校もあり、すぐに戻った。3年 たったころに、ある病院で子どもの甲状腺を検査してもらったところ、多発性のう胞が見つかった。子どもに異変が起きたらすぐに避難しようと思っていたの で、その帰りに物件を探しに行った。しかし、国が指示をしてくれないと動けないという人が多いのが現状。だからこそ、ひとりでも多くの方に、この裁判に参 加してほしいと思っている。
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これまでの国や県の不作為を追求し、子どもには安全な場所で教育を受ける権利があることを問う今回の「子ども脱被ばく裁判」。
このシンプルで当たり前の訴えが、認められる日本なのかどうか――。
しっかりと見届けていく必要があるでしょう。
この裁判には、現在福島県に居住している保護者・子どもだけでなく、県外に避難した方も参加できます。現在も、原告を募集していますので、詳細は下記をご覧ください。
- 以上 -
2) さらに、”20ミリシーベルトの違法性を問う!” と国を提訴した南相馬の住民の方達がいます。
〈出典:”ママレボ通信” http://momsrevo.blogspot.jp/2015/04/blog-post_19.html 〉:
2015年4月19日日曜日
20ミリシーベルトの違法性を問う!南相馬の住民たちが、特定避難勧奨地点の解除取り消しを求め提訴
■20ミリシーベルトの違法性を問う初の訴訟
年間20ミリシーベルトの基準による避難解除は違法だとして、南相馬市の特定避難勧奨地点に指定されていた世帯を含む住民132世帯534名が4月17日、国(原子力災害現地対策本部)に解除の取り消しや精神的苦痛に対する慰謝料ひとり10万円の支払いなどを求めて東京地裁に提訴した。
提訴に先立ち、経済産業省前で住民たちは次のような訴えを行った。
「原発作業員の年間被ばく限度量は5年間で100ミリシーベルトが上限。平均すると1年間あたり20ミリシーベルトです。これと同じ基準を、国は私たち一般の福島県民や子どもにまで適用しています。国際的な見地から見ても、これはあまりにも高すぎる。住民たちのほとんどが解除に反対をしてきた。その声を聞いて判断するのが民主主義のはずではないのか」
(原告代表・菅野秀一さん/74歳)
「チェルノブイリ原発事故の被害にあったベラルーシやウクライナでは、法律で妊婦や子どもには年間0.5ミ リシーベルトまでと定めているのに、日本はそれよりはるかに高い基準で解除するなんて恥ずかしくないのか。今、我々が立ち上がらなければ、将来、子や孫に 健康被害が起こったとき顔向けができない。強引に解除するなら、何かあったときに補償が受けられるように被ばく者手帳を発行してほしいと再三訴えたが聞き 入れてもらえない」(藤原保正さん/66歳)
国は昨年12月28日に、ほとんどの住民が「時期尚早」として解除に反対するなか、「年間20ミリシーベルトを下回った」「説明はつくした」として一方的に避難指示解除に踏み切った。
原告代表・菅野秀一さんによると、勧奨地点に指定されたお宅で避難をしなかったのは、馬を飼っている1軒だけ。現在でも8割以上が戻っておらず、とくに子どものいる家庭で戻った方はいないという。
■分断を乗り越えて、住民が一致団結の訴え
提訴が行われたあとの記者会見で、担当の河崎健一郎弁護士は、今回の提訴の意義を次のように述べた。
「低線量被ばくについては、ここまでなら安全という閾値はないというのが国際的なコンセンサスです。国内の法令もすべて、ICRP(国際放射線防護委員会)の基準に基づいて、一般公衆の被ばく線量年間1ミリシーベルトを基準に定められています。20ミリシーベルトはこれを大きく上回っており、この数値を避難や帰還の基準にすることは“違法”であるということを、初めて司法の場で問うことに大きな意義があります。この訴訟を通して、避難指示解除についての問題点や、避難政策の在り方自体も問い直していきたい」
河崎弁護士によると、今回、提訴に踏み切った132世帯の内訳は、勧奨地点に指定されている世帯が63世帯、指定外世帯は69世帯だという。
指定外世帯も訴訟に加わることになった理由は、「補償の有無で地域に分断が起こってはいけない」ということで、指定外世帯がまとまってADR(原子力損害賠償紛争解決センター)に申し立てを行い、これまで指定世帯と同等の賠償を受けてきたからだ。
そもそも、年間20ミ リシーベルトを超えそうなほど放射線量が高いのは、勧奨地点に指定された家だけではなかった。指定基準の毎時3マイクロシーベルト(妊婦や子どもがいる家 庭では毎時2マイクロシーベルト)よりわずかに下回っていたからという理由で、「放射線量はほとんど変わらないのに指定を受けられなかった」という世帯が 多くあった。
賠償の有無を巡り福島県内で分断が起こるなか、今回の南相馬の訴訟は住民が一致団結できた貴重な事例だと言える。二次提訴も予定しており、今後も原告の数は増える見込みだ。
しかし、国は早くも、こうした動きを牽制している。
「南相馬の地点解除訴訟(20ミリ基準撤回訴訟)支援の会準備会」の満田夏花さんによると、国(原子力災害現地対策本部)は、まだ訴状も見ないうちに、司法記者クラブにファックスを送りつけ、下記のような国としての見解をメディアにばらまいた。
「南相馬市の特定避難勧奨地点については、除染の結果、指定時と比して線量が大幅に低下し、国際的・科学的知見を踏まえて決定された年間20ミリシーベルトを十分に下回っている」「解除に当たっては、ていねいに住民の理解を得るべく、昨年10月と12月に計4回、住民説明会を行ったほか、戸別訪問、相談窓口の開設、線量測定および清掃などの取り組みを行っている」
満田さんは、「通常は、国は記者に聞かれて、『訴状をみないうちはコメントできない』などと言うのだが、この過剰な反応は何を表しているのだろうか」といぶかしがる。
■ 訴訟は福島だけのためではない
ママレボ出版局は、地点が解除された昨年12月28日の翌日に現地を訪れ、ホットスポットファインダーで測定を行った。その際には、玄関先でも毎時1.5マイクロシーベルトを超えるほどの高い数値が検出されたお宅もあった。
「せめて(除染の目安となっている)毎時0.23マイクロシーベルトを下回ったら解除してもいいが、平均して毎時0.5~0.6マイクロシーベルトあるような放射線管理区域なみの場所に子どもたちを戻せない。子どもの首に縄をつけて、(放射線量が)高いところに行くなとは言えない」
と、住民が話してくれたのが印象的だった。
思い返せば、国が「年間20ミリシーベルト」を子どもにまで強いる決定を下した2011年4月から丸4年――。
あのときは、子の健康を案ずる福島県の親たちが、多数、文部科学省に駆けつけ撤回を迫ったが、一切聞き入れられなかった。やっと、この違法性を真正面から問う訴訟が始まると思うと感慨深い。
会見終了後、記者が前出の藤原保正さんに、「今回の訴訟で最も訴えたい点は何か?」と改めてうかがったところ、次のような答えが返ってきた。
「この訴訟は、自分たちのためだけに起こしたのではありません。全国のみなさんも、いつ福島県民と同じような目に遭わないとも限らない。今、20ミリシーベルトを撤回させておかないと、今後、どこかで原発事故が起きたときも同じ基準が適応されてしまいます。これでは、子や孫に健康被害が出たときに顔向けができません。だから、全国のみなさんに応援してほしい」
明日は我が身――。この訴訟を自分のこととして見守り、応援していきたい。
(ママレボ出版局 和田 秀子)
★ 以上、 ママレボ通信から許諾を得て転載しました ★
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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