「チェルノブイリは我々の未来である」

 福島第一原発からの放射能漏れが止まらない。タービン建屋やトレンチには高濃度の放射能に汚染された水が大量に溜まっているが、それらは直接、あるいは地下水となって、海に流出している。

 4月2日東京新聞によれば、ロシアは旧ソ連時代から原子力潜水艦の核廃棄物などを1992年まで日本海に海中投棄していたことが明るみに出て、国際的な批判を浴びたが、その総量は700テラベクレル(700兆ベクレル)に上ったという。

 ところが、福島第一原発からの放射性物質の放出は、23日段階で「毎時400テラベクレル」に上り、すでに10万テラベクレルを超える量を放出したというのである。なんと、国際的な批判を浴びた旧ソ連=ロシアが何年間にもわたって海中投棄した核廃棄物の放射線量をわずか1時間45分ごとに放出している計算であり、これまでに旧ソ連=ロシアが海中に投棄した放射性物質の143倍もの量を放出しているのである。しかも、事態収拾のめどはいまだに全く立っておらず、注水を続けている原子炉と核燃料プールには亀裂が生じているため、そこから常に汚染水が漏出しているので、放射能汚染水は今後も増え続けることは確実であり、現在でも「薄めて海に流すのも選択肢のひとつではないか」という考え方が根強いとされる原発事故処理関係者が、こっそり、もしくは公然と海に放射能汚染水を海に垂れ流すことは確実ではないかと思われる。

 政府と東電は「海は広いから放射能は拡散されて低くなり人体に影響はない」と言い続けるだろうが、これほど大量の放射性物質が海に流出するのは地球史上初めての事態であり、今後長期間に亘ってどのような影響が生じるか、現時点では誰にも正確にはわからないだろう。これはもはや、日本人や現在生きている世界の人々に対してだけでなく、地球上の生物や将来世代の人類も含めた地球全体に対する犯罪である。 

 フクシマから放出される放射性物質の総量は、最終的にはチェルノブイリをはるかに上回ることはほぼ確実だろうから、放射能汚染による被害もチェルノブイリを上回るだろう。政府は今後も「直ちに人体に影響はない」と言い続けるだろうが、当たり前である。影響が明らかになるのは数年後だろう。これまでの最悪の放射能汚染であったチェルノブイリ原発事故から10年後、NHKは「終わりなき人体汚染~チェルノブイリ事故から10年~」という番組を放送したが、そのなかで、「チェルノブイリの原発事故がもたらした放射能の人体への影響は、10年という歳月を経て風化するどころか逆に深刻さを増しています。長い潜伏期間を経て癌や白血病などが急増加し、放射能の影響は脳にまで及んでいることがわかってきました。チェルノブイリ原発事故による放射能人体汚染は10年という時を経て我々の前に想像をはるかに超える姿を見せ始めたのです」と述べている。そして、チェルノブイリから半径600キロの範囲の汚染は深刻でその面積は12万平方キロ、日本の国土の3分の1に及んでいるが、未だに780万人もの人々がこの地域で暮らし、放射線を浴び続けている現状を報告し、「放射能が直接影響したと考えられる健康被害は認められず、今後起こり得る住民の健康被害は、癌または遺伝性疾患の増加があったとしても、自然による影響と見分けることは困難であろう」とした国際原子力機関(IAEA)のチェルノブイリ事故報告書(1991年)を、具体的で深刻な事実によって反証している。 

1.http://www.youtube.com/watch?v=rCX1A3yJLqI

2.http://www.youtube.com/watch?v=gFOxGGdzfn8&feature=related

3.http://www.youtube.com/watch?v=oHg23DkfZDA&feature=related

4.http://www.youtube.com/watch?v=tsE0CqvuifE&feature=related

  しかし、そのような原発推進派の国際機関であるIAEAでさえ、福島第一原発から40キロ離れた福島県飯館村の土壌から検出された放射性物質はIAEAの避難基準の2倍に達しているとして、日本政府に避難指示の再検討を促したにも拘わらず、日本政府は「今の時点で健康に影響が及ぶような状況ではない」として避難指示を出さなかったのである。

 しかし、藤田祐幸氏によれば、飯館村で検出された土壌汚染は1平方メートル当たり326万ベクレルで、これはチェルノブイリ当時の強制移住基準とされた同148万ベクレルの2倍以上の汚染であり、後に引き上げられた強制移住の基準値である55万8000ベクレルの6倍もの汚染であるという(数値は京大原子炉実験所・今中哲二氏の計算による)。 

http://www.youtube.com/watch?v=3UAY2oXyInk 

 また、「憂慮する科学者同盟」は、IAEAの計算では、飯館村で測定されたセシウム137の土壌濃度は最大で平方メートル当たり3.7メガベクレルであり、ソ連が1990年に設定したレベルは平方メートル当たり1.48メガベクレルの2倍をはるかに超えていると指摘し、「今や、日本の当局が緊急避難区域を原発からわずか20キロに制限しているのは怠慢であることは、あまりにも明らかである」と述べている。 

http://allthingsnuclear.org/tagged/Japan_nuclear?utm_source=SP&utm_medium=head&utm_campaign=sp-nuke-head-3%2F13%2F2011-pm

 上記のNHK番組によれば、チェルノブイリから遠く離れ、汚染度も低いと思われていたポレーシア地方ゼルジンスク村では、10年後に測定した土壌の放射能は1068ベクレルで、飯館村の3000分の1以下にすぎなかったが、住民の被曝量は汚染のひどい地域の被曝量と変わらなかったという。それは土壌から吸収された放射性物質が牧草の中で濃縮され、さらにそれを食べた牛、牛乳、人間と次々と放射能が濃縮されたためであった。 

 チェルノブイリの周辺で起きたことは、数年後には日本でも必ず起こるだろう。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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