大相撲放送権料に関する監査要望&質問書を発送しました

著者: 醍醐 聰 だいご さとし : NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表
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皆様

 時々晴れ間の除く梅雨本番の気候ですが、お変わりなくお過ごしのことと存じます。

 いつもながらBCCメールで失礼いたします。

 NHKを監視・激励する視聴者コミュニティはさきほど(7月3日)、NHK監査委員宛の「大相撲放送権料に関する監査要望・質問書」を発送しました。

 福地会長以下NHK全役員、小丸経営委員長宛にもこのような監査要望・質問書を送付したことを通知することにし、当該文書を同報しました。

送付しました文書を添付と貼り付けでお送りします。

 今回の監査要望の要点は次のとおりです。

 1.巷間、放送権料は1場所5億円、年間30億円と言われているが実際はいくらなのか、 また、その金額はどのような根拠で算定されたものなのか、放送法第23条の5の第1項で定められた監査委員の権限にもとづいて厳正に監査し、その結果を回答してもらいたい。

 2.1972年当時、放送権料は年間1億円(昭和47年3月28日開催の参議院総務委員会での坂本朝一理事〔当時〕の答弁)と言われていたが、かりに現在、年間30億円とすると、この間に30倍に高騰したことになる。これは合理的理由にもとづくのかどうか、厳正に監査のうえ、その結果を報告してもらいたい。

 3.日本相撲協会が公表している本場所事業収支によると、平成20年度、21年度の事業収支倍率(本場所事業収入はどれだけ本場所事業支出上回っているか)は約1.4倍強となっており、両年度とも約27億円の余剰金が発生している。

 このことは、本場所事業収入の約35%を占める放送権料が見合いの事業支出よりも相当高い水準に設定されていることを意味するのではないか? そうだとすると、NHKは視聴者から負託された受信料を適正、効率的に使用するという職務に反する契約を日本相撲協会と交わしていることにならないか? この点を厳正に監査のうえ、その結果を報告してもらいたい。

今回の質問事項の要点は次のとおりです。

 2008年3月31日に開かれた参議院総務委員会で当時の理事(現専務理事)・日向英実氏は、スポーツの放送権料の契約の内容にかかわることについては守秘義務が掛かっており、その金額を明らかにすると今後の放送権の交渉に支障がでるとして、公表を拒んでいる。監査委員はこうしたNHK理事の答弁を是とするのかどうか、見解を示してほしい

  なお、この点については、質問の後に【付記】として当会の見解を示しています。

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NHK監査委員会 御中

NHK監査委員

 井原理代殿

 石島辰太郎殿

 浜田健一郎殿

大相撲放送権料についての監査要望ならびに質問書

                          NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ

                                共同代表 湯山哲守・醍醐 聰

 貴委員会ならびに委員各位におかれましては、日頃より重要な職務にご尽力いただき、厚く感謝を申し上げます。

 皆様もご承知のとおり、NHKが一場所5億円とも言われている放送権料を支払っている日本相撲協会において、近年、親方による若手力士への暴行事件や相撲協会員が「維持員」席を暴力団関係者に横流ししていた事実が明るみに出ました。そして最近は多くの力士のみならず、力士を指導する立場にある親方まで野球賭博を行っていた実態が発覚し、多数の視聴者からNHKに対し、大相撲名古屋場所の中継を中止するよう求める意見が寄せられています。

 当会も去る6月28日付で福地茂雄NHK会長と小丸成洋NHK経営委員長宛に「賭博にまみれる日本相撲協会の名古屋場所中継の中止を求めます」と題した要望書を提出しました。

 私たちはこの機会に貴委員会ならびに監査委員各位に対し、これまで不透明なままにされてきた大相撲放送権料の算定根拠について、以下のとおり厳正な監査を実施していただき、その結果を7月28日までに後掲宛へ回答くださるよう申し入れます。

 また、これと関連して、放送権料についてNHKが日本相撲協会と交わしている契約内容の公開の可否について貴委員会ならびに監査委員各位の見解をお伺いすることにしました。この質問事項についても前記の要望事項と併せ、ご回答くださるようお願いいたします。

監査要望事項

1. NHKは一場所あたりどれだけの大相撲放送権料を日本相撲協会に支払っているのか? 場所によって異なる場合は、場所ごとの金額を調査の上、ご回答下さい。

2. 上記1の放送権料はどのような算定根拠に基づいて決められたのか、算定要素の内訳を添えて具体的に調査の上、ご回答下さい。

3. 1972年当時、NHKが日本相撲協会に支払っていた放送権料はおおよそ年間1億円強といわれていました(昭和47年3月28日に開かれた参議院逓信委員会におけるNHK理事・坂本朝一氏〔当時〕の答弁)。現在、NHKが日本相撲協会に支払っている放送権料は2008年4月に締結された5年契約に基づくものと言われていますが、伝えられているように年間約30億円だとすれば、1972年当時と比べ約30倍に高騰していることになります。それは合理的な根拠に基づくものか、調査の上、ご回答下さい。

4. 日本相撲協会の平成20年度、21年度の収支計算書(決算)によれば、放送権料が該当すると考えられる本場所事業収支は次のとおりです。

日本相撲協会の本場所事業収支            単位:円

 平成20年度平成21年度
本場所事業収入(A)8,734,511,9748,607,244,821
本場所事業費支出(B)6,021,036,7265,856,378,733
事業収支差額(A)-(B)2,713,475,2482,750,866,088
事業収支倍率(A)/(B)1.45    1.47

 

   つまり、過去2年度の本場所事業収支決算によれば、収支差額(余剰)が各年度あたり約27億円生じており、本場所の事業遂行に要した支出の1.4倍強の事業収入を得ていることになります。このような事実は、NHKが支払う本場所中継の放送権料(一場所5億円、年間30億円と仮定すれば、本場所事業収入(86~87億円)の約35%に相当)は日本相撲協会に本場所興行を通じて多額の余剰金を得させる水準に設定されている蓋然性が高いことを意味します。

 簡略ではありますが、このような日本相撲協会の決算資料の検討から当会は、NHKが営利企業ではない日本相撲協会に本場所興行の経費に基づく対価を大幅に超える放送権料を支払っているのではないかという疑念を持っています。もし、これが事実とすれば、NHK理事会は視聴者から負託された受信料を適正かつ効率的に使用するという職務上の責任に背反する放送権契約を締結していることになります。

 そこで当会は、監査委員各位が放送法第23条の5の第1項で定められた監査委員の権限(いつでも、役員及び職員に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は協会の業務及び財産の状況の調査をする権限)を行使して、当会が指摘した上記のような疑念を解明され、その結果を経営委員会に報告の上、放送法第14条の第1項イの(4)に定めた議決を諮っていただくよう要望いたします。そして、以上の調査と検討の結果を当会あるいはあまねく視聴者向けに報告していただくよう要望いたします。

質問事項

 2008年3月31日に開かれた参議院総務委員会で当時の理事(現専務理事)・日向英実氏はスポーツの放送権料の公表につき、下記のような答弁をしています。貴委員会あるいは監査委員各位はこの理事の説明を是とされるのでしょうか? 放送法第23条の4で定められた監査委員会の権限、ならびに同法23条の5の第一項に定められた監査委員の権限に照らして見解を示して頂くよう要望し、質問いたします。

  「参考人(日向英実君) お答えします。

 スポーツ番組については、御指摘のように個別の番組についてはまだ公表しておりません。制作費の総額は決算の段階で公表しておりますけれども、御承知のようにスポーツの放送権料という問題がございまして、契約の内容にかかわることについては守秘義務が掛かっております。それから、金額を明らかにすることによって今後の放送権の交渉、それからほかのスポーツ団体との関係その他のことも考慮しなきゃいけないということがございまして、今のところ明らかにしていないということでございます。御理解いただければと思いますが。

 ただ、NHKとしては、国民があまねく視聴できるということで、スポーツについては適正な放送権料ということで各団体ともその旨を説明しながら適正な価格で取得したいというふうに考えております。」

 【付記】

当会は上記のような「守秘義務」を楯に放送権料の明細と算定根拠の公開を拒むのは失当と考えています。

 なぜなら、まず、NHKの側から言えば、多数の視聴者が収めた受信料を原資にして年間、数十億円に上る放送権料を支払う以上、放送権料がどのような根拠に基づいて算定されたものかを視聴者に公開し、忠実かつ効率的に職務を遂行したことを説明する責任を負っています。また、そのような情報が公開されなければ、視聴者はNHKが放送権料を適正な価格で取得しているのかどうかを判断する術がありません。

 次に、日本相撲協会の側から言えば、同協会は大相撲本場所を興行し、その放送権を独占的に販売する収益事業を兼業する公益法人です。したがって、放送権料の明細と算定根拠を公開したからといって、本場所ならびに協会の事業遂行にいかなる競争上の不利益が生じるわけでもありません。

 つまり、NHKの側にも、日本相撲協会の側にも放送権料の明細と算定根拠を非公開とする正当な理由はありません。放送権料の金額を明らかにすることによって今後の放送権の交渉に支障が出るかのようなNHK理事の発言は、NHKと日本相撲協会の不透明な関係をかえって推測させるだけであり、視聴者を納得させる理由にはなっていません。むしろ、NHKと日本相撲協会が進んで放送権料の内容を公開することによって、他のスポーツにおける放送権料の透明性を高めるのに好ましい影響を及ぼすことを期待できると考えられます。

以上