世界平和七人委が緊急アピール
アピールは「私たちは、日本学術会議が4年以上にわたって行ってきた政府との真摯な話し合いの努力を支持してきた。現段階の政府の動きには、日本学術会議の息の根を止めようとする意図が読み取れる」と述べ、「私たちは、日本学術会議が政府の動きに安易に同調することなく、可能な限り速やかに総会を開催して、(これまで発表した)3文書を再確認し、その内容を完全に実現すべく、粘り強く政府との対話を進めることを求める。さらに日本学術会議が、学協会、全国の研究者、国民に、問題点を丁寧にわかりやすく説明し、意見と支援を求めていくことを要望する」としている。
世界平和アピール七人委は、1955年、世界連邦建設同盟理事長・下中弥三郎、物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器廃絶、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは162回目。
現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)、酒井啓子(千葉大学教授)の6氏。
アピールの全文次の通り。
日本学術会議の政府への従属を招いてはならない
世界平和アピール七人委員会
私たち世界平和アピール七人委員会は、2020年10月、当時の菅義偉首相による日本学術会議会員候補者6人の任命拒否が明らかになった1週間後に、これを許容できないとするアピールを発表した。政府は任命拒否を今日まで撤回せず、拒否の理由も説明しないままであり、私たちはこの任命拒否を、今も認めることはできない。
その一方で、政府と自由民主党は任命拒否問題を学術会議改革の問題にすり替えて、内閣府に「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」を設けて検討を進め、去る12月20日に「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会最終報告書」を公表するに至った。
この懇談会に対し、日本学術会議は会長名の文書「法人化をめぐる議論に対する日本学術会議の懸念」(2024年7月29日)を提出・説明し、続いてその理由を詳述するための「より良い役割発揮のためのナショナルアカデミーの設計コンセプトについて」(2024年10月31日)、および学術会議の自主性を根本から否定する会員選出方法の導入に反対を表明した「日本学術会議の会員選考に関する方針」(2024年11月26日)を日本学術会議幹事会で決定して提出・説明した。私たちはこれら3文書を全面的に支持する。ここには、学術会議が、世界のアカデミーに伍して、国内外で健全な活動をおこなうために不可欠な問題点が書かれているからである。しかし上記の懇談会最終報告書では、遺憾ながらこれらは無視されたままである。
私たちは、日本学術会議が4年以上にわたって行ってきた政府との真摯な話し合いの努力を支持してきた。現段階の政府の動きには、日本学術会議の息の根を止めようとする意図が読み取れる。私たちは、日本学術会議が政府の動きに安易に同調することなく、可能な限り速やかに総会を開催して、上記の3文書を再確認し、その内容を完全に実現すべく、粘り強く政府との対話を進めることを求める。さらに日本学術会議が、学協会、全国の研究者、国民に、問題点を丁寧にわかりやすく説明し、意見と支援を求めていくことを要望する。
初出:「リベラル21」2024.12.27より許可を得て転載
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