宇宙空間の戦争=サイバー戦争=ウクライナ戦争 (2) ーーー日本人もウクライナ戦争に参戦、愚かな!ーーー

著者: 柏木 勉 かしわぎ つとむ : ちきゅう座会員
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デカップリングが進む宇宙開発分野
 宇宙開発分野は、一時は国際協調路線で進むかと思われた。しかし近年は西側と中国・ロシアとの対立=「デカップリング」が著しい。中国は米国と並ぶ「宇宙強国」を目指している。すでに月、火星への探査機着陸に成功、有人宇宙船に続き宇宙ステーション「天宮」も完成した。ロシアもISSから引き揚げ、自国の宇宙ステーションをつくるとしている。月の資源開発に関する国際協定「アルテミス計画」の行方も不透明だ。月面基地建設、月周回の宇宙ステーション(ゲートウェー」をつくるものだが、米国主導への反発が強まった。米国は同計画で有人火星探査に向けた準備も行うとしている。また中国・ロシアはすでに共同の月面基地建設の計画に基本合意している。宇宙条約にもかかわらず、これらが軍事利用に密接に関連していることはいうまでもない。デュアル・ユース=軍民両用の推進である。
 現在の国民国家が存続するままでは、宇宙戦争が現実のものになる。その可能性はきわめて高い。SFの異星生物との闘いではなく、国民国家同士の闘いなのだ。

「軍民一体化」――すでに戦争概念は一変、「宇宙・サイバー・電磁波の領域における対応」
 ここで地球表面に存在する国民国家・日本国にたちもどろう。
日本国政府発行の防衛白書を再び見ると、「宇宙・サイバー・電磁波の領域における対応」なる記述が一層拡充されている(2022年防衛白書)。これは新たな「軍民一体、軍民融合」の戦争に対して備えを固めよというものだ。
 「新たな」というのは、いわゆる昔の「総力戦」とは異なって、「宇宙・サイバー・電磁波の領域」にまで戦争が拡大し、その結果民間をも直接に戦争に参加させるものであるからだ。この点は「経済安全保障」とも一体になっている。というのは、白書は特に民間の著しい技術発展に焦点をあてて、「民生分野の技術発展が戦闘のあり方をも一変させ得るほどになっており、産業・技術分野における優劣は国家の安全保障に大きな影響を与える状況にある」とする。そして従来の防衛産業基盤の強化はもちろんのこと、米中など各国の「軍民融合と一体化」を紹介し、日本も同様に経済安全保障と融合した軍民一体化を強力に推進すべきと強調している。

 戦闘のありかたを一変させるゲームチェンジャーの民生分野としては、「人工知能(AI)、量子技術、次世代情報通信技術など」を挙げ、「その研究開発や、軍事分野での活用」が進んでいるとし、更に「純粋な軍事力に限られない多様な手段により他国を混乱させる手法は・・・軍事と非軍事の境界を曖昧にし、いわゆるグレーゾーンの事態を増加・拡大させる。・・・情報戦の手法が巧妙化し、選挙戦への影響など、より平時に近い段階での活動として広がりを見せていることから、安全保障面での影響に関心が高まっている」と述べる。
こうした宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応に関しては、すでに昨年9月に閣議決定され、「サイバーセキュリティ戦略2021」が閣議決定された。この中では、民間のDX化と軍事的安全保障は密接不可分とされている。白書が述べる対応は、この「戦略」をも踏まえたものとなっているのである。

軍民一体化――「経済安全保障推進法」で民間分野を取り込み、軍事化推進
 「経済安全保障」においては、すでに本年5月に「経済安全保障推進法」が成立している。白書においては「経済済安全保障に関する取組」の基本的考え方を「・・・安全保障の裾野が経済・技術分野に急速に拡大している・・・そのための経済施策を 総合的・効果的に推進していくことが経済安全保障 の中心にある考え方である・・・。 」と紹介し、経済・技術分野、経済施策を前面にだして軍・民一体化を強調している。「推進法」が意図するところは明白だ。民=経済社会全体を軍事・安全保障に包含すること、それが狙いだ。曖昧模糊とした「経済安全保障」の概念を悪用して、コロナ対応のどさくさにまぎれて多くの重要事項が政省令に委任されて、戦争勢力が恣意的に決定できるものとなっている。きわめて危険だ。

日本人もウクライナ戦争に参戦――外国のただの一般人も容易な参戦
 そこで軍民一体化を見るために、目をウクライナ戦争に転ずれば、その急速な進展ぶりは明らかだ。それもロシア、ウクライナ双方のみならず、世界大に広がっており、多数の国のハッカー集団がサイバー攻撃を激増させている。(断っておくと、ここで触れたいのは各国に在住する普通の一般国民の話だ。以前からウライナ・アゾフ大隊等がかき集めてきた欧米人戦闘員や、ロシア・ワグネルが集めたシリア人戦闘員等々とは別の話だ)
 例えばウクライナを支持するベラルーシのハッカー集団は、ベラルーシの鉄道運行システムをサイバー攻撃し、ウクライナ国境までのロシアの兵器、物資輸送を停止させたといわれる。
戦争開始直後、ウクライナ政府は世界各国のIT技術者にむけ、ウクライナ「IT軍」に参加するよう呼びかけた。その結果20万人から25万人が参加・登録した。
 この中には日本人技術者も含まれている。日本人技術者は、ウクライナIT軍の指示のもと、ロシアのインフラを対象にサイバー攻撃を行っている。攻撃対象のインフラは政府・行政サービスや、医療、電力、情報通信、金融等の国民生活上の重要インフラだ。
この場合当たり前だが、この技術者は日本の自宅でパソコンのキーボードを打っているだけである。そして、彼は日本国のただの民間人だ。ただの民間人が外国の戦争に参加している。
 もうちょっと挙げれば、スイスの10代の少年も「スイス出身だけど、腕のいいハッカーだし(略)ロシアのインフラをハッキングすれば、何も機能しなくなるから、彼らは(侵攻を)止めるかもしれない」と、ウクライナIT軍へ参加、攻撃に加わった。両親はこれを知らないという。デンマークのIT技術者は、出勤前に1時間かけてウクライナIT軍に貢献すべく、ロシアに対しDDoS攻撃(サイバー攻撃の一種)を仕掛ける。妻や友人、同僚たちはこれを知らない。いうまでもないが、ロシア側のハッカー集団もこれに対抗して攻撃している。
(注:1, https://www.fsight.jp/articles/-/48756
2,「NHKクローズアップ現代“サイバー攻撃=犯罪だが…” ウクライナ「IT軍」の日本人 参戦の理由」2022年6月27日 等々を参照)
 このようにサイバー空間は、云ってみれば、誰もが簡単に参戦可能な戦場となっている。いまや、パソコンさえあれば、国内外、世界中の一般市民が戦争に加わることが可能であり、実際に参戦しているのだ。(無論、サイバー攻撃への参加は、日本もふくめ多数の国では法違反、犯罪行為)
すでに始まっている民間企業、民間人が参戦する「新たな戦争」
 従来は軍のネットワークと民間のネットワークは、基本的に別のものとして区分されていた。しかしいまや前述したように、スペースXのスターリンクの利用や多数国のただの民間人によるサイバー攻撃など、民間のインターネット利用が軍事に深く関与している。スターリンクについては、一民間企業が戦争の帰趨を握るのではないかとも騒がれている。ただの民間人、民間企業が参戦する「新たな戦争」の時代にはいったのだ。
 もっともマスクは米国防省に対して、秋頃から不満を述べていた。ウクライナへのスターリンクの無償供与をいつまでも続けることはできない。わが社にカネを出せというわけだ。だがこの発言は撤回した。マスクは停戦を求める投稿もしていた。いわく、「人口が3倍以上のロシアにウクライナが総力戦で勝利する可能性は低い。平和を求めるべき」というもの。これに対してウクライナ政府の間から反発の声があがり、マスクに「消え失せろ」とSNSに書き込んだ外交官もいたとのこと。
 いずれにしても、民間企業が大きな力をもち、ただの民間人が多数参戦しているのだ。
                                   (続く)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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