完全護憲の会より 違憲性への警告007号

安倍政権が来る参議院選において、憲法「改正」を争点に掲げる姿勢をあらわにしている中、これを先導し後押しするようなかたちで、「日本会議」の主導のもとに、地方議会における「憲法改正の早期実現を求める意見書」採択が全国的に推進されている。

「日本会議」のホームページによれば、その数は2015年11月21日現在32都府県/55市区町村議会にのぼるという。東京、大阪、京都を筆頭に横浜市、川崎市など首都圏の大都市も軒並み名を連ねている。

これら地方議会が採択した意見書はすべてが同じ文面ではなく、その表現に濃淡があるものの、典型的には大阪市議会が採択した意見書(「憲法改正の早期実現を求める意見書」)にみるように、「この間、我が国を取り巻く東アジア情勢、軍事技術の進歩や大量破壊兵器の拡散などによる外交安全保障上の問題、大規模災害時などの緊急事態に対応できる国の在り方の問題、環境権などの新しい権利、地方分権・地方自治の進展など、我が国を巡る内外の諸情勢は劇的な変化を遂げ、現行憲法施行時には想定できなかった課題や新たな時代に対応できる憲法が求められている。」というものである。

一体全体、こうした「憲法改正を求める意見書」を採択した地方議会の議員諸氏は、自分たちがどのような存在なのかを自覚しているのであろうか。地方議員が特別職としての公務員であるとの自覚が少しでもあれば、現憲法が内外情勢の「劇的な変化」に対応できなくなっているので新たな憲法に変えろなどと、現憲法をこのように軽んじることはできないはずである。

憲法第99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と、明確に公務員の憲法「尊重擁護義務」を定めているのである。地方議会におけるこのような「憲法改正」要求は憲法違反と言わねばならない。

さらに問題なのは、これらの意見書採択が、現憲法をどのような憲法に「改正」しようと意図しているかである。それはこの運動を復古主義的戦前回帰をめざす「日本会議」が主導していることからも明らかであろう。即ち、自民党が2012年に公表した「日本国憲法改正草案」そのものである。

この自民党「改憲草案」は、現憲法が掲げる国民主権、基本的人権、平和主義の3原理を根底から覆す国家主義、反民主主義の改憲案であることは、その内容を見れば明白である。

それゆえ、地方議会が採択した「憲法改正を求める意見書」は、国民主権、基本的人権、平和主義に立脚する現憲法を、これとは対極にある国家主義憲法に改めようとするもので、単に憲法尊重擁護義務に反するのみならず、その内容においても現憲法に抵触するものなのである。

特別職としての公務員である地方議員が現憲法に違反する「意見書」採択を行ってはならず、すでに採択したものは取り下げるべきである。

「完全護憲の会」公式ホームページより転載

http://kanzengoken.com/