官重民軽―山口裕子議員のチラシ

著者: 藤澤豊 ふじさわゆたか : ビジネス傭兵
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本を読んだりパソコンで何か書いたりと、のんびりした生活を送っていたのが、四月か五月を境にちょっと変わった。どこかでメールアドレスが抜けて、多いときには、日に千通を超える馬鹿馬鹿しいメールが届くようになった。これについては、拙稿『詐欺メールとチラシ』https://chikyuza.net/archives/65654に書いた。

何通来ようが「迷惑メール」フォルダを空にするだけなのだが、そんな作業でもしないで済むにこしたことはない。詐欺集団のお先棒を担いだ痴れ者からのメールには、正直うんざりしている。

なんとかならないものかと、Webでネット詐欺対策を調べた。送信者に苦情を返信したり、近くの交番に行って相談もした。交番のお巡りさんの話では、詐欺メールに引っかかって金を払ってしまったのなら犯罪になって、警察も動けるけど、詐欺メールを送っただけでは犯罪にならない。なんなら都筑区(横浜市)の警察署に電話して相談してみたら、と親切なアドバイスを頂戴した。

千円でも二千円でもとられて被害者にならなければ、警察は何もしない。最後は詐欺集団のサーバーを置いているセーシェルとバヌアツを担当している外務省の出先にも、詐欺集団のメールサーバーを閉鎖するよう現地政府に話してくださいとメールも送ったが、予想通り返信もなければ、何の効果もない。未だに日に百通はくる詐欺メールを削除している。

そんなところに、確か9月末だと思うのだが、地元都筑区選出の民進党県会議員 山口ゆう子さんのチラシが郵便受けにはいっていた。チラシを見て、99%以上のまさかに、お人よしにも1%以下のもしかしたらと期待してしまった。チラシの表題には「がんばる、神奈川県警の取組は・・・」がある。サイバー防犯ボランティアやサイバー犯罪捜査官の雇用、児童ポルノ犯罪に触れて、多分本旨のサイバー攻撃の現状についてが続いている。

本文の最後には、「重要インフラの基幹システムを機能不全に陥れ、社会機能を麻痺させる電子的攻撃であるサイバーテロや、情報通信技術を用いた諜報活動であるサイバーインテリジェンスの脅威は国の治安や安全保障に影響を及ぼす恐れのある重大な問題となっています。」

本文から引き出したところで「東京開催のオリンピックを4年後にひかえ、国はどのような予算規模で世界先端レベルのサイバー防衛を作って行くつもりか??」に流れて、『山口ゆう子』は、そこが聞きたい、と締めている。

頼もしい限りの神奈川県警の取組なのだが、ネット詐欺が犯罪として成立するまで何もしようがないと放置して、一般市民を詐欺集団の犯罪の危険に晒したままで、警察も含めた官公庁や公共施設のサイバー攻撃対策がどうのという。なにかおかしくないか?まるで昔ながらの官尊民卑の風潮そのものではないか。

斜視の穿ったみかたで申し訳ないが、ネット詐欺の取り締まりは警察自身の地道な努力だけで一向に金にはならない。サイバーテロ攻撃対策の構築は、警察が自分自身で何をするわけでもなく、サイバーゼネコンかサイバーテロ対策を専門として禄を食んでいる民間企業にシステム構築を丸投げするだけで金は動く。巷の常識では、金が動くところには議員先生もいらっしゃる。

チラシによれば、「IT関連企業等における勤務経験により高度情報通信技術に関する知識を有する者を、サイバー犯罪捜査官として3名採用」とある。ただ3名の天才をもってしても、警察自身がサイバー攻撃を防ぐシステムを構築できるとは考えられない。

公共施設のサイバー攻撃対策はいいけど、ネット詐欺取り締まりも考えてもらえませんかと、Webで調べたネット詐欺集団のリストや対策も添付して、山口ゆう子議員に9月23日にメールを送った。数日もしないうちに、お巡りさんが自宅に誰が住んでいるのかと聞きにきた。送ったメールは予想通り無視された。もしかして、メールが届いていないこともあるかもしれないと、10月11日に返信くらい頂けないかと催促のメールを送った。期待はしていないが、また予想通り無視された。地元選挙区の有権者からの問い合わせに対してである。参考になりましたくらいの、とってつけたどうでもいい内容の返信でも送ってくるのが、地元に密着した代議士のありようじゃないのか、といったら余計なお世話だときりかえされるのだろうか。

山口さんと同じ民進党の衆議院議員の篠原孝さんの事務所からメールマガジンを頂戴している。篠原さんには、筋違いで申し訳ないと思いながら、山口議員はチラシで何を言ってるんですかね、ネット詐欺の取り締まりは……とお尋ねした。

しのはら事務所から丁寧な下記返信を頂戴した。

<返信メールのコピー>

「お送りいただいたチラシを拝読いたしました。」

「神奈川県警では確かにサイバー攻撃対策を行っているようです。」

「チラシは、山口県議がそれを紹介しているだけの内容に思えます。」

『神奈川県警のサイバー犯罪関連のページ』

https://www.police.pref.kanagawa.jp/index2.htm#cyber_hanzai

『民進党の2016年政策集』

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=6&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwilh-3jr-HPAhVjrFQKHfwGC_0QFgg1MAU&url=https%3A%2F%2Fwww.minshin.or.jp%2Fdownload%2F29324.pdf&usg=AFQjCNHiDclzT-DTLERuaXTnHWApFlpzzg

住民をネット詐欺の危険にさらしたままで、警察自身が何か頑張っているようには見えない。それでも、警察を含めた公共施設のサイバー攻撃対策は血税を使って充実させてゆくのだろう。

これを「官重民軽」と呼ばずになんと呼べばいいのか、住民が犯罪に巻き込まれるのを防ぐのは警察の任務ではないのか。山口ゆう子議員ではないが、そこを聞きたい。期待するだけ野暮ってもんだろうが。

 

Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6402:161208〕