今、離島の宮古島で起こっていることを知らせたく思います。
宮古島の石嶺香織市議は宮古島への陸自ミサイル部隊配備に反対する市民の民意を代表して、今年1月の補欠選で市議に当選しました。宮古島市では26人の市議会のうち、現在唯一の女性市議です。3月9日、カリフォルニアの海兵隊基地での陸上自衛隊が米国とのが「離島奪還」を想定した合同訓練で実弾射撃訓練をしているのを見て、フェースブックで、陸自が宮古に来たら「婦女暴行が絶対起こる」と書き込みました。それにたいし「炎上」が起こり、石嶺氏が謝罪と撤回を行った後も議会事務局に「辞めさせろ」といったメールや電話が多数来て業務に支障をきたしているとのこと。そして、20人の市議が3月21日辞職勧告決議を出し可決されるという異常事態になっています。(追記:下方、3月21日の石嶺市議による勧告拒否のスピーチを見てください)
私が3月16日「琉球新報」の「論壇」に出した記事を御覧ください。
ここで述べている通り、石嶺氏がいだいた恐怖は、陸自実戦部隊が来るかもしれない離島の一人の母親としての恐怖感が強く出たものでありますが、その恐怖自体は、自衛官による性暴力の頻発に照らし合わせれば根拠のないものではありません。強い表現で気を害した人たちのことを考え謝罪・撤回したのにさらなる攻撃が続き、辞職の重圧までかかるとはあまりにもアンフェアです。これは、自衛隊配備に反対する女性新人市議に対する「いじめ」だと思います。
これは「ニュース女子」問題など、一連の「沖縄ヘイト」の流れの中で捉えられる事件でもあります。石嶺議員のもとには、また宮古島市には、彼女に対する口にはできないような脅迫、誹謗中傷が多数届いています。福岡県行橋市の右翼市議が石嶺氏への制裁的な行動を、全国の右翼議員やネトウヨに対して扇動しています。ほかにも「炎上」を煽っている者たちがいます。
じゅうぶんに報道されていないことだと思いますので、ここでみなさんに支援をお願いする次第です。石嶺氏の支援者は、こう訴えています。
宮古島議員辞職勧告は議会事務局へ多くの「石嶺議員を辞めさせろ」という抗議の電話や約130通のメールが届き、業務が停滞したことから始まっています。電話は業務に支障をきたしますが、メールはプリントアウトされファイルされます。侮辱や汚い言葉では無く、「このようなことで市議が辞めさせられてはならない」と、丁寧な言葉で抗議のメールを全国から送って下さい。
https://www.city.miyakojima.lg.jp/inquiry/request.html
どうかみなさんからも上記のメールフォームを使って、宮古島市に対して、石嶺さんがこのような圧力で辞めさせられてはいけないというメールを早急に送ってください。
参考までに私が送ったメールはこれです:
宮古島市議の石嶺香織氏がFBで問題発言をしたということで誹謗中傷のメールや電話が議会事務局に殺到しているときいています。この人権侵害行為に対し、石嶺氏を守るのではなく市議会議員20人が辞職勧告決議案を出すというのは人権擁護とは反対方向の「いじめ」に近い行為です。「琉球新報」3月16日8面の「論壇」に私の投稿が載りました。ご覧ください。実際に自衛隊による性暴行が全国で頻発する中、石嶺氏の恐怖感は理解できるものであり、その表現の仕方が強すぎたことについて謝罪・撤回しているのだからこれ以上批判するのは行き過ぎであるという要旨で書きました。これについてはその通りだというコメントが多数来ており反論はひとつも来ていません。琉球新報編集部も、報道で伝えきれなかった側面をしっかり書いていると評価しています。市議会も、市議会事務局も、石嶺氏へのいじめ、言葉による暴力行為に対して人権の観点から毅然と対応してください。一議員がネット右翼による誹謗中傷で身の危険や議員としての立場に危機が及ぶようなことになったら、これは宮古島だけの問題ではなく、ネット右翼が騒げば民主主義は壊すことができてしまうという重大な禍根を残す一例となります。市議会と議会事務局が、石嶺氏を誹謗中傷脅迫から守り毅然とした対応をされることを期待します。
追記:3月21日、20人の宮古島市議による辞職勧告は賛成多数により決議されましたが石嶺市議は以下のように堂々たる「拒否宣言」をしました。
私の3月9日と10日のFacebookの投稿文に関して、私はすでに3月12日に謝罪文を出しています。これは私の個人的なFacebook上での発言ですので、Facebookで謝罪し、マスコミにも謝罪文を出しました。以下の文章です。
「3月9日の私のFacebookへの投稿の文章は、事実に基づかない表現でした。お詫びして撤回いたします。申し訳ありませんでした。
今南西諸島には離島奪回作戦を想定した陸上自衛隊の配備が計画されています。
陸上自衛隊の水陸機動団は海兵隊から訓練を受けています。
また、沖縄本島では米軍による事件事故が多発しています。
米軍による事件事故が多発していることへの強い不安と、陸上自衛隊が海兵隊の訓練を受けていることを結びつけ、不適切な表現をしてしまいました。
私の不適切な発言により、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
2017年3月12日
宮古島市議会議員 石嶺かおり」
また、私の発言により議会事務局や当局の業務に支障をきたし、ご迷惑をおかけしたことを加えてお詫びいたします。
今回の件について、議会が辞職勧告決議案を出すということは、不当であると考えます。私は、議会の場でこの発言をしたわけではありません。議会の外で発言し、すでに謝罪・撤回いたしました。また私は、非行・違法行為もしておりません。全ての議員が議会の外で発言したことに対して、謝罪・撤回しても、その発言の是非が辞職勧告の対象になるのでしょうか。宮古島市議会は、これまでそうでしたか。そしてこれからもそのようにするのですか。一人の議員の思想・信条に対し、他の議員が数の力で辞職勧告をするということは、とうてい議会制民主主義とは言えません。
私は7637人の市民が選んでくださった議員であると自覚しています。決して議会が選んだ議員ではありません。
私は、「平和な未来といのちの水を子どもたちに手渡したい ミサイル新基地建設反対」という政策を掲げて、今回、市民の負託を受けました。
平和な未来をつくるため、ミサイル新基地建設を止めるために、これから精一杯頑張りたいと思います。
よって、私石嶺かおりは、辞職勧告を拒否いたします。
「議員が議員を辞職させることはできない」という、議会制民主主義の当たり前の原理を提示した立派な声明であったと思います。
ちなみに私の「論壇」には、「自衛隊の性暴力はそんなに起こっているのですか」という質問もありました。どうやら、メディアが米軍の犯罪は大変大きく扱うが自衛隊の犯罪はそうでもないことに原因があるよううです。仲間がクイックに検索したところ、この3月だけでも、強姦という凶悪犯罪を含めこれだけの事件が出てきました。
2017年3月7日
陸上自衛隊が強姦事件 屋外で女性に性的暴行を加える 久留米市
http://breaking-news.jp/2017/03/07/031137
2017年3月12日
16歳少女を官舎に、誘拐容疑で航空自衛官逮捕
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3006483.html
2017年3月11日
傷害容疑で自衛官逮捕 和歌山のスナックで女性巡りトラブル
http://www.sankei.com/west/news/170311/wst1703110041-n1.html
2017年3月11日
住居侵入容疑で自衛官逮捕 北海道・遠軽
http://www.nikkansports.com/general/news/1790583.html
2017年3月7日
「ピアノ見に来ない?」女子高生誘い、自宅で胸触る…容疑で陸自音楽隊員逮捕 熊本県警
http://www.sankei.com/west/news/170307/wst1703070082-n1.html
私の記事で紹介した、元自衛官の小西誠氏による著書『自衛隊 この国営ブラック企業: 隊内からの辞めたい 死にたいという悲鳴』(社会批評社、2014年)から、小西氏がFBで抜粋していた部分を紹介する。
自衛隊員が関係する不祥事件、犯罪は相変わらず減らない。自衛隊と同様、実力組織である警察官の犯罪も減ることはないが、自衛官の犯罪の特徴は、やはりその当事者が幹部層へ拡大していることだ。
最近の自衛官の不祥事=犯罪のいくつかを無作為に抽出してみよう。毎日のように起こっているが、以下がその新聞記事の要約だ。自衛官の事件を報道するのは、なぜか「産経新聞」と「毎日新聞」が多い(2014年の事件)。
*航空自衛隊春日基地(福岡県春日市)は23日、女性のスカート内を撮影したとして、航空システム通信隊所属の1等空尉の男性(51)を停職60日の懲戒処分(「読売新聞」6月24日)
*財布を盗んだ疑いで、陸曹長を処分、陸自久留米駐屯地(「毎日新聞」6月24日)
*海自で2人懲戒処分、容疑の1尉と技官―男性1尉は昨年3月、当時勤務していた護衛艦「さみだれ」の事務室で、同僚隊員の財布から現金6000円を盗んだとして、同7月に警務隊に窃盗容疑で検挙。一方、男性技官は12年6月、呉市内のパチンコ店で置き忘れてあった他人のプリペイドカード(9000円相当)を換金したとして、呉署に同容疑で検挙(「毎日新聞」6月24日)
*土浦で1等陸尉、部下殴って停職1日(「毎日新聞」6月24日)
*陸士長が上司に暴行し停職16日、陸自神町駐屯地(「毎日新聞」6月24日)
*1等陸佐を停職処分、酔って女性投げ逮捕(「共同通信」7月11日)
*自衛隊千葉地方協力本部は15日、宴席で部下の女性に抱きつき写真撮影を強要したなどとして、40代の男性幹部自衛官を停職2日の懲戒処分にした(「千葉日報」7月16日)
*女子生徒にアダルトグッズを見せたとして、大宮署は15日、県迷惑行為防止条例違反の疑いで、上尾市、陸自大宮駐屯地所属の2等陸曹の男(42)を逮捕(「埼玉新聞」7月18日)
*陸自伊丹駐屯地(兵庫県伊丹市)は28日、コンビニエンスストアで財布を盗んだとして、窃盗容疑で兵庫県警に検挙された中部方面隊中部方面通信群の40代の男性2等陸曹を、懲戒免職処分としたと発表(「産経新聞」7月28日)
*神奈川県警鎌倉署は4日、女性に乱暴したとして、強姦容疑で同県横須賀市、海上自衛隊横須賀教育隊の2等海士の少年(18)を逮捕(「スポーツ報知」8月5日)
*セクハラ担当が盗撮容疑、防衛省監察調査官を現行犯逮捕。千葉県警流山署は5日夜、駅で女性のスカート内を盗撮したとして県迷惑防止条例違反の疑いで、千葉県柏市十余二、防衛省監察調査官の2等空佐、片桐重崇容疑者(42)を現行犯逮捕した(「産経新聞」8月6日)
*女性隊員18人にわいせつの1等陸曹を停職―陸自下志津駐屯地(千葉市若葉区)は26日、指導中に女性隊員計18人にわいせつや暴行行為をしたとして、高射教導隊の男性1等陸曹(51)を停職60日の懲戒処分としたと明らかにした(「毎日新聞」8月26日)
ここに掲載したのは、この2カ月ほどの事件の一部であるが、盗撮、窃盗、暴行、猥褻行為、強姦など、何でもありだ。
そして、繰りかえすが、明らかに尉官以上の2佐・1佐などの高級幹部の不祥事=犯罪が目立つのである。この傾向は、ここ10数年の自衛隊の不祥事の特徴であると言われている。防衛省・自衛隊でも、この対策を一段と強化しているのだが、不祥事は一向に減らないのだ。
2013年8月7日付の、防衛省防衛監察本部による「平成24年度定期防衛監察の結果について」という報告書は、以下のようにいう。
「近年、部隊内で幹部自衛官による服務事故が生起しているにもかかわらず、幹部自衛官は高い識見を有しており、特に服務事故防止教育を行う必要はないとの理由により、幹部自衛官に対する計画的な服務事故防止教育を行っていなかった。……12年4月に幹部及び幹部候補生の精神教育についての通達を発簡し、幹部自衛官の各課程教育に精神教育の項目を新設し、所要の教育を実施しているところ……また、12年4月から連隊長等への補職予定者に対する補職前教育、各級指揮官会議、各部隊の幕僚会同等における精神教育の推進を図っており、今後も充実させていく」(傍点は筆者)
つまり、訓育・精神教育を部下隊員たちに行う立場の、幹部自衛官にこそ、「精神教育」が必要になってきたというわけだ。
巻末に自衛隊内の服務事故による懲戒処分の統計を掲載する。全体の件数は、毎年1千200から1千300件前後と変わらないが、問題は幹部自衛官たちによるこの不祥事=犯罪事件の爆発的増大こそ、現在の自衛隊の最大の危機なのである。
(以上抜粋)
これらを見ると、石嶺氏が表現した恐怖感は決して根拠のないものではないことがわかります。
3月22日『沖縄タイムス』の「論壇」には、宮古島市の斎藤美喜氏の記事「軍隊の本質 検証が必要 - 宮古島市議に過剰な圧力」が出ていますが、斎藤氏のこの見方:
南西諸島にミサイルが配備された際の標的になる危険性、騒音、地下水汚染、さまざまな不安があるが、日々の暮らしの中で、小さい者、弱い者が犠牲になること、おびえながら暮らすことこそ防がなければならない。その危機感をそのまま口に出してしまった市議を過剰に責め立て失職を迫るやり方は、弱者を封じ込めようとするものであり、危険だ。
に賛成します。石嶺氏が重圧や脅迫に負けず、自分を選んだ市民のために仕事を続けられるように応援していきたいと思います。@PeacePhilosophy
参考記事:宮古島陸自配備に反対する女性市議発言への行き過ぎた批判はおかしい:「琉球新報」論壇
初出:「ピースフィロソフィー」2017.03.21より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2017/03/blog-post_71.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6575:170322〕