小金井公園「江戸東京たてもの園」をぶらぶら歩く

著者: 合澤 清 あいざわ きよし : ちきゅう座会員
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毎年、正月の2日、3日は都民サービスということで、ここ都立小金井公園「江戸東京たてもの園」は無料となる。
今年の正月三が日は、好天に恵まれ(ただし、この日、1月3日は北風が強く一番の冷え込みだそうだが)、散歩するには絶好の日和だった。
午後から、散歩がてらにぶらぶらと30分ぐらいかけて小金井公園まで行く。小金井街道もいつもよりかは車の数が少ないように思う。
広い小金井公園では、この寒風の中をジョギングに精を出す人を多く見かける。我が身を振り返るに、確かに年末からずっと呑みずくめのふしだらな生活を送っていれば、この辺で少し身体を動かさねばという気になるのも不思議ではない。
公園の中にある「江戸東京たてもの園」は、かつて東京に散在していて「現地保存が不可能な文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示」(パンフレット)した博物館である。
それぞれの訪問者の興味によって、目玉だと思うものは当然違っているだろうが、私にとっての最大のものは、2.26事件で暗殺された「高橋是清」が住んでいて、ここでテロにあった建物である。
ところが、今回この目玉がメンテナンス中で、正面玄関も閉じられたまま、建物全体も足場が組まれ、その外は幌で覆われた状態で、もちろん中は全く見れないままだった。
実は去年の6月、ドイツへ旅立つ直前までかかって、松本清張の『昭和史発掘』全13巻(中公文庫)を読み終え、この中の7巻から13巻に詳細に描かれている2.26事件の始末記に大いに興味を持ったためだ。
なかなか詳細には思いだせないが、確かここに青年将校の一団が早朝に侵入した時、高橋是清は二階の寝室に眠っていて、最初彼らは是清の行方が判らなかった。ところが運悪く、他家へ嫁いだ娘がたまたま帰っていて、それが二階から階段を下りてきたのとばったり遭遇したために彼らは二階をめがけて駆け上り、結果、是清が殺される羽目になったという。
この二階への階段を上ってみたいというのが今回の見学の狙いだったが、それはかなわなかった。
園内にはざっと24軒の建物が展示されている。
主なものは、三井八郎右衛門(三井財閥創業家)邸、これは今日風な豪壮な建物ではなく、意外に思えるほど地味な作りだった。裏庭はさすがに瀟洒な雰囲気をもっている。
八王子千人同心組頭の家、江戸幕府直轄の地方役人のトップの家にしては、割に質素な茅葺きの農家だった。富農の吉野家や天明家(てんみょうけ)の家の方がはるかに大きくて豪壮である。往時の農家の勢力が偲ばれる。
奄美の高倉、これは高床式の立派な骨組みのものだ。天井の骨組みの上には、大きな空間があり、恐らく食材(穀物)などの保存に使われていたのではないだろうか。
宇和島藩・伊達家の門など。
これ以外に面白いのは、西側ゾーンにある。今でも田舎では時々みかけるのだが、東京でも50年ぐらい前にはまだ確実に見かけたであろうと思われる銭湯や、居酒屋や、旅館、荒物屋、文具店、醤油店、乾物屋、などの商家の建物である。
ビルディングの高層建築群に埋もれた感のある今日では、何とも懐かしい思いがした。
以下、少しばかり写真を貼り付けておくので、雰囲気を楽しんで頂きたい。

「江戸東京たてもの園」正面

奄美の高倉

吉野家の床の間

居酒屋1

居酒屋2

和傘問屋
                                              2019.1.4記

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

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