届いている提言と行動について

宮澤賢治の童話に「グスコーブドリの伝記」がある。よく知られた作品なのでストーリを紹介する必要はないと思うが、その結末で主人公のブドリは死を覚悟して火山を爆発させるに行く場面がある。これは美しいが、また胸のつかれる物語である。作品からは賢治の祈りが伝わってくる。これを想起させるような提言が届いている。発信者は僕よりは少し上の安保闘争の担い手だった山田恭暉さんだ。東大工学部卒業後はS金属で諸々のプラント建設などに携わった技術者である。提言は「冷却機能の復旧作業を高濃度の放射線源により汚染された環境下で行う老人部隊の結集」である。僕は技術者でないから補助作業しか出来そうもないがこの提言は重大な内容をもつものと思っている。 

 東日本大震災の救援や復旧活動の中で現在の最大の課題として福島第一原発の爆発を防ぐことがある。東電会長も語ったように第一原発の1~4号機が廃炉になることはすでに国民的合意といえる。他の号機や原発のことはともかく、これらを廃炉にするためには長期の時間が必要である。これは周知のことである。だが、そのためにはその間に原子炉の爆発や炉心溶解を防ぐ課題がある。現在、1~4号機は炉を水で冷やす緊急措置を講じている。これが緊急措置以上のものでないことは明瞭である。政府や東電の情報以外に信ずべき情報はなく、憶測や伝聞で事を論じたくないが、長年の原発事業《設計・建設》、あるいはそれに関連するプラント建設などに携わってきた人々の知見や情報によれば、現在が予断を許さない状態にあり、それを脱するには炉の冷却機能復旧が不可欠であると言っている。そして炉の冷却機能復旧には本格的な作業とその体制が必要である。だが、この作業体制の構築と持続はおぼつかないのが現状ではないかと推察する。作業には放射線による被曝という障害があるためだ。だから、専門家《技術屋》を中心にした炉の冷却機能の回復作業を担うメンバーを結集し、部隊《作業チーム》を編成して事態に対応するというのが提言である。この作業は政府や東電がやるべきことである。だが、彼らに任せておくには不安であると判断している。政府は原子炉の現状を公表し復旧作業にあたるメンバーの公募に踏み切れといいたい。僕らはそれに応じるメンバーの結集を図る努力をしたい。専門家技能が必要であること、また被曝にさらされる危険があることは困難なことだ。が、これは突破する一つの道の提示である。もう遅いのではないか、自衛隊にという意見もあるが、自発的意思(志願)による面々で担う道を模索したというのが僕の意見だ。僕は提言に応えたい。

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