希望の好循環と絶望の悪循環:選挙制度とメディア

古賀茂明さんが原発とメディアの関係を指摘しています。新聞が原発事故を参院選の争点と見なさず世論調査から外し、有権者の関心が低下するという悪循環に陥っているというわけです。
参院選の争点から消えた「原発問題」~たった5年で大事故は“なかったこと”に… あの恐怖を忘れたのか | 古賀茂明「日本再生に挑む」 | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48904
似たようなことは選挙制度でもいえます。選挙制度についての世論調査はほとんどありません。民意を反映しない選挙制度に嫌気がさして投票に行かず、ますます民意を反映しない政治が続く。
特集 投票率低下を考える – 明るい選挙推進協会
www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/07/voters20.pdf
「ノリスが小選挙区制では他の選挙制度よりも投票率が低いことを明らかにしている4)」
4)Norris, Pippa, “Choosing Electoral System: Proportional,
Majoritarian and Mixed Systems,” International Political
Science Review, vol.18, No.3, pp.297-312, 1997
投票率の極端な低下は小選挙区比例代表並立制が導入されて以降
http://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/shakai/seiji/02_7_1_touhyouritu.htm
主要先進国で相対的貧困率1位、2位を独占している格差貧困大国・原発大国の日米は投票率が50%前後と低く、デンマークは相対的貧困率が5%と最低で原発ゼロ、投票率が90%近くと高い。民意を反映しない小選挙区制の日米は絶望の悪循環、民意を反映する比例代表制のデンマークは希望の好循環が成立しているといったところです。
投票に対する希望を失わせ、政党を選挙互助会化・曖昧化してその魅力を奪い、民主主義の装いで独裁を生み出す小選挙区制。
選挙というものを買い物のようにすぐ成果の出るものと考えると、気に入った投票先がないと嘆くことになります。絶望の悪循環が成立している状況では、魅力的な政党を作るなどの努力をする以外に、選挙についての考え方を変える必要があるように思います。
長い目で見て魅力的な投票先を生み出すような小選挙区制廃止、選挙制度改正につながるような投票行動という考え方を提示すれば、投票先がないと嘆いている有権者にとって希望となるのではないでしょうか。
下記世論調査によれば、自民党に投票すると答えた層でも、小選挙区制に反対が44%で、小選挙区制に賛成の35%を上回っています。
街頭世論調査「次の国政選挙、どこに投票する?/小選挙区制に賛成・反対?」 報告書
http://kaze.fm/documents/Street_Poll_Report_20160222.pdf
一人の有権者が希望する政策とその有権者が投票する政党の政策に深刻なねじれが生じています。個別課題の重要性が投票先の選択に単純に結び付かない状況の中で、いくら重要だとはいえ原発や安保関連法などの個別課題を個別課題として云々するだけでは限界があります。
また一般的に、政治を語るとき、民主主義インフラとしての選挙制度とメディアを一緒に考えたいものです。