広河隆一氏の性暴力報道についての声明文
広河隆一氏に関する週刊文春の記事「世界人権派ジャーナリストに性暴力疑惑 7人の女性が証言」に接し、同氏の行為に私たちJVJAは大きな衝撃を受け、憤りと怒りを禁じ得ません。
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)は、女性への重大な人権侵害であり、同時にジャーナリズムへの信頼と威信を大きく傷つけることになった事件として深刻に受け止め、ここにJVJAの態度を明らかにします。
2002年にJVJAはフリーランスのフォトジャーナリストとビデオジャーナリストで設立され、当初は広河隆一氏も発起人のひとりでしたが、2008年に退会しています。
私たちが衝撃を受けたのは、「DAYS JAPAN」の編集長として、「『日本軍慰安婦』問題」や「女性の性被害」の問題を特集し、誰よりも女性の人権や尊厳に敏感であるべきはずの広河氏自身が、加害者だったという現実です。
被害を受けた女性の恐怖と衝撃、痛みと憤りに思い至ることなく、「(女性たちは)僕に魅力を感じたり憧れたりしたのであって」(「週刊文春」)と答え自己弁護に終始する、その無神経さに、私たちは唖然とし、激しい怒りを禁じ得ません。
戦場でもっとも苦しむ女性や子供たちの痛みを報道し続けてきた広河氏が、強要される性暴力で、恐怖と衝撃で拒めず沈黙せざるをえなかった女性たちの心情を、なぜ想像できなかったのでしょうか。
もし広河氏が主張するように、「同意の上」「女性も望んだ行為」であるとするなら、なぜ10年を経ても癒えない“心の傷”の痛みを、彼女たちは今、勇気を奮って告白せざるをえなかったのでしょうか。誰にも打ち明けられず、抵抗し拒めなかった自分を責め、悶々と癒えない“心の傷”に苦しんできた女性たちの心情を想うと、慚愧の念に耐えません。
もう一つの深刻な問題は、この広河氏の事件がフォトジャーナリズム、そしてジャーナリズム全体への信頼を失墜させたことです。フォトジャーナリストを夢みる女性に、「キミは写真が下手だから僕が教えてあげる」(「週刊文春」)とホテルに呼び出し性暴力におよんだ事実は、「著名なフォトジャーナリスト」という立場を利用した性暴力であり、「フォトジャーナリズム」への冒涜です。私たちジャーナリスト全体の存在と仕事への信頼を失墜させるもので、深い失望と抑えがたい怒りを抱いています。
私たち自身、これまでに写真展や報告会などを広河氏と一緒に開催しておきながら、重大な人権侵害に気づくことが出来なかったことは、深く反省しています。「彼がそんな行為をするはずはない」とする権威主義に陥り、加担していたと言わざるを得ません。
広河氏はまず、被害女性一人ひとりにきちんと謝罪し、その罪を償うべきです。さらに公の場で自らの言葉でもって、事実関係を説明し、その社会的な責任をとるべきです。かつてJVJAの同志として活動したジャーナリスト仲間として、私たちは広河氏にそのことを強く求めます。
2018年12月31日
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)会員一同
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