怪談めいたことが続く日本の権力の周辺だが

著者: 三上治 みかみおさむ : 社会運動家・評論家
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まだ八月ではないのに怪談めいた話が横行している。震災直後の福島第一原発の危機的事態への対応を巡る政府と東電の奇怪な関係が伝えられている。震災直後の原子炉への海水注入を巡るやり取りである。この件は官邸、議会、東電、原子力安全委員会などを巻き込んだ騒動の様相を呈していた。今さら、海水注入の経緯ではあるまいとは思うが、人々がこの件に注目してきたのは政府や東電などの情報隠ぺいや操作の体質が改まったように見えないためであると思う。

今回の原発事故度はチエルノブイリ事故より低いという報道や炉心融合《メルトダウン》についての情報などあげれば切りがないが彼らは情報の隠ぺいや操作をしてきた。これは原発事故における重要な人々の初期対応にとって重大な障害になってきたし、今後に大きな禍を残したことは確かである。この事態は現在も続いているのであってそのことに懸念を抱かざるをえない。

福島第一原発は人々に原発の存在そのものに疑念を抱かせ、脱原発や反原発の声を広範に生みだしている。原発震災に対する人々の反応としては当然のことだが、同時に今重要なことは原発震災害に対する具体的な対応である。それは何よりも福島原発の暴発阻止であり、放射能汚染に対する防御などの対策である。これらは正確な情報の開示と対応策が要求されるが政府や東電などの動きは鈍い。脱原発への径路(具体的な道、段階的な道)とは別な現実的な課題である。暴発阻止については山田提案があり僕もそれに協力しているが、政府の正確な情報の開示はないし対応は遅い。この提案に対する政府や東電の反応はあり水面下での接触はあるがどこまでやる気があるのか明瞭ではない。山田提案の行動隊に参加している京大原子炉実験所助教小出裕章さんのブログ(http//hiroakikoide.wordpress.com/)を紹介しておくがこちらの方が認識も判断も対応力もある。具体的な放射能汚染に対する対応策は文科省の20㍉シーベルト問題が象徴しているようにその場的なものである。その右往左往ぶりは具体的な事柄に具体的に対応する基本的なことができていないことであり、事態の正確な認識と判断が政治家や官僚たちには出来ていないことを示す。これは認識や判断のもとになる情報が政府や政党の中でも共有できていないのだと思う。国民に対する情報の隠ぺいと操作体質は権力機関の内部での上部の下部に対する関係としてあるのではないのか。怪談めいたものの横行はこうした構造の生みだすものだが、これでは具体的な事柄に対処することができないはずである。

正確な情報に基づく認識と判断の共有が最低限な必要事である。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  http://www.chikyuza.net/
〔opinion0479 :110528〕