震災、福島原発事故。サプライチェーン(部品調達網)寸断による自動車、電子機器などの減産。消費マインドの大幅な低下。首都圏直下型地震や第2の関東大震災リスク。こうした未曾有の苦境にあるはずの日本経済だが、円は下がらず、財政危機であるはずなのに長期金利の上昇(=長期国債の下落)も限定的だ。株価に至っては大幅な回復を続けており、連休谷間の5月2日には一時1万円の大台を回復した。
放射性物質汚染が東京にも広がる中での株価上昇は、次のようなことで説明するしかないだろう。
①日本は震災、原発事故で自粛モードだが、海外ではQE2(量的金融緩和第2段階)によるバブルが続いている。NY株式は高値。資源、穀物も高値。欧州もソブリンリスクが高まる中でも株は崩れていない。
②震災を契機にして、日本銀行が金融緩和を進めており、財政も東北復興需要で拡大に向かっている。供給が需要を上回り、デフレギャップに悩んできた日本経済が反対の方向に動き出していることを好感している。
バーナンキFRB議長はQE2を予定通り6月で終わらせる意向のようだが、7月以降も従来通りの金融緩和を続けるとみられる。マネタリストのバーナンキFRB議長の「とことんバブル路線」 である。その副作用であるドルの減価、資源価格による世界の動乱(アラブ動乱で明確に現れた)はあまり気にしていない。というか、米国には他に選択肢がないのだろう。
「日本もデフレを脱却してインフレモードに入る」とあるエコノミストは語る。内外の金融、財政政策が原因だが、国内のサプライチェーンの混乱もインフレを加速する。震災、原発事故で日本も「新興国」の仲間入りをしかねない状況だが、海外の投資家から見れば、
新たな有望なマーケットが見つかったということか。
冷静に考えれば、QE2によるバブルはやがてはじける。風船がはじけた後は再びデフレが来ることは歴史が教える。しかし、その時期は誰にもわからない。
生活者にとっては物価上昇、増税、社会保障の縮減と厳しい世界が待っている。
終わり
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