2011年3月11日 14:46以降、地震、津波、原発事故で、地震のエネルギーの話、マグニチュード(気象庁マグニチュードとモーメント・マグニチュード)や、津波、プレートテクトニクスの話、原発の燃料、放射性物質、放射能、放射線の話が緊急の必要事項となって来ている。
地震予知は天気予報の精度のようには出来ていない。縦波と横波の差から地震速報が出て来るのが精一杯のようである。これは、昔は、1960年代初期には、中学校一年生の理科で学習した内容である。マグニチュードもようやく最近高校生の数学で常用対数が元に戻って教え始められているようである。これはNHKの第二放送でわかる。
「ゆとり教育」の中で、中学生の理科からは、「熱に関する内容」が無くなってしまった。この愚民化教育の中で、聞き慣れない話、言葉がたくさんでてきているわけである。
「エネルギーという概念」は知っているようで、意外と知られていない。
高校生の物理で、仕事を学習してから初めて、エネルギーの概念が身に付いて来る。力学の学習を4月から初めて、10月か、11月くらいになるのが、通常である。
熱量の単位としてはカロリーが一般では、これは現在も使われている。
国際単位系への移行が進む中で、医療現場、栄養食品の現場ではこれを国際単位系に変えることは難しかった。栄養学者は、エネルギーの単位をジュールで論文を書いている。カロリーの単位は明治以降から、中学校、女学校で教えられて来た。その意味では現存するお年寄りも聞いたことはある、知っている単位なのである。
19世紀の前半に、熱学の研究が進み、エネルギー保存の法則が10数名の人物によって同時発見される。( Thomas Kuhn )
英国のマンチェスターで、化学的原子論の提唱者ドルトンの塾で学び、醸造業者でスコッチ・ウイスキーを作っていた、James Prescott Joule が熱から仕事を取り出したり、化学反応から熱をとりだす、といった、エネルギーの変換を目にして、熱と仕事の関係を求めた。
熱と温度の違いは、18世紀にJoseph Black によって発見されていた。
熱は物質である、と考えられていた時代があった。ラボワジェの時代である。フランス革命期の中で、徴税請負人であった彼は、ギロチンに消える。熱を物質とみなし、カロリックと言った。このことで、熱現象を定量的に扱えるようになる。
Joule は、熱と仕事の関係を定量的に調べることに一生を費やす。
1カロリーは、1cal と書く。水1mL =1cc =1cm^3 の量を14.5℃ から、15.5℃に温度を上げるのに必要とする熱量を1カロリーと言う。
仕事、エネルギーの単位は現在、ジュールを使う。
ニュートンの運動方程式で、
(ちから)=(質量)・(加速度)
である。 質量をkg の単位で、加速度を m/sec2 つまり一秒間に進む早さがさらに一秒間にどれだけ増えるか、で加速度の単位がきまる。
力の単位は、 [ kg・m/sec2 ] =[N ] (ニュートンという)
ハンマーで金属を叩くと、熱くなるように、力は熱を生み出す。熱から仕事を生み出そうというのは、蒸気機関や、タービンを回して、電磁誘導によって発電を行う仕組みである。
1N ・1m =1J ( Joule ) である。
熱の仕事当量と言い。 1cal = 4.2 J ・・・・・・(1)
これは、高校生が実験を行っても、有効数字二桁の結果は測定できる。
現在の理工系の学生は、(1)式の両辺を4,2 でわった、0.24しか覚えていなかったりする。1960年代の前半では、中学生の理科で電気のジュール熱から熱量を計算するのに使われて、学習が行われていた。
1J =0.24 cal
放射線の単位は、まず、吸収線量がある。この単位はグレイという。
人の名前から、Gray である。
吸収線量の定義は記号をGy と書いて、
1Gy =1J/kg ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
である。物質1kg が、1J ( ジュールのエネルギーを吸収する)
生物体が問題になっているので、生物学的効果比をかける。これは放射線防護学の父と呼ばれる研究者であった、スウェーデン人の Sievert (シーベルト:1886~1966)の名前を取って、国際単位系で使われる。
生物学的効果比 ( Ratio of Biological Effectiveness)が吸収線量にかけられる。ガンマ線は一般的に、この RBE は、1とみなされる。
中性子線では、エネルギーによるのであるが、
RBE は、18~20 となる。
つまり、
Sv = (RBE)・( 吸収線量 ) ・・・・・・・・・・・・(3)
という関係である。
放射線は、一般に、X 線、α , β , γ 線と発見された。
非常に広い意味では、放射状に飛び散る、あらゆる素粒子、原子核、イオン、電磁波、粒子、が放射線と呼ばれる。 取り扱う、業界によって、これも違って来る。
α 線の飛ぶ距離(飛程という)は、空気中では非常に小さい。その本性はヘリウム原子核である。周期表では水素についで現れる原子である。He ,α 線をガラス管に集めると、ヘリウムガスになる証明実験はラザフォードがおこなった。
β 線は電子である。これは、X 線の発見についで、ウラン化合物からウラン線を発見した、アンリ・ベクレル( 1852~1908)と、マリー・スクロドフスカ・キュリーの夫、ピエール・キュリーによって、電子であることが発見された。
γ 線は、ヴィラールによって、原子核から出て来る電磁波(光や、X 線とおなじもの)であることが、発見される。
放射性物質を発見するのは、マリー・キュリーの仕事であった。新元素ポロニウム Po , Ra を発見した。また、ラジウムの原子量を測定し決定した。
α 線を放出する現象をアルファ崩壊という。2つの陽子と2つの中性子をもつ。この単位を決めることが、キュリー夫人にたくされ、彼女は、ラジウム1g が、α崩壊する現象をもとに、単位を決めた。その単位がキュリーである。
新しい、国際単位系には、入っていないが、TMI のUS でも、チェルノブイリの旧ソ連でも使われていた。現在でもつかわれている。
日本で放射線の単位が国際単位系に切り替わるのは、1992年である。β 線、γ 線にも使われるようになり、アルファ崩壊、ベータ崩壊、ガンマ崩壊と言われる。
単位キュリー( Curie ) の定義は、
1 Ci =3.7 ×10^10 decay/sec = 3.7×10^10崩壊/秒 である。
この[ decay/sec ] = Bq ( ベクレル)と定義して、国際単位系で使われる。
放射線の測定において、 μSv/h という表現が出て来る。
マイクロとは、 圧力のhPa ( ヘクト・パスカル) は、面積を表すha ( ヘクタール)と同様の、大きさを表す接頭語である。
ミクロ、マイクロである。 ギリシャ文字で書く。
μ は、10^(―6) 10のマイナス6乗である。つまり、
10^(-6)= 1/10^6=1/1000000 である。
k キロは、色々な所で使われている。長さでは、1kmとか、重さでは、50kg重とか。時速60km で車が進む時、 60km/h h:hour 時間である。
mSv/h という時、このm は、ミリである。
1m(メートル)=100cm であるように、1cm=10mm
である。
つまり、1m =100cm=1000mm
ミリ:m=10^(―3)=1/1000 である。
1h あたりに、1000分の一、シーベルトの被曝をする。という測定になる。
測定器はガンマ線については、連続のつまり、アナログでシーベルトで計測するのが通常である。ベータ線は、C/M , count per minutes ,で測定している。
ベータ線は、古いアナログTV ,で言えば、ブラウン管から一分間に一個程度観測される。
したがって、
1000mSv/h =1Sv/h である。
放射線の障害は、閾値は存在しない。「放射線ホルミシス効果」が言われていたのが、1990年代であったが、どうやら、近年これは否定されて来ているようである。
100mSv ・・・これは積算された放射線量である。
を境にして、それ以上の被曝は、確定的影響。それより少ない被曝は確率的影響と言われている。
確率をどのように考えるかが、重要な問題となる。「事象」とは、確率論でものごとが起きることを言う。放射線障害で、この確率がなにを意味するかは確率をどのように考えるか、という思想の問題でもある。
サイコロを降るような意味での全ての事象が当確率である、というラプラスの確率概念では無い。
例えば、心臓病で、冠状動脈のバイパス手術をするとき、通常冠状動脈は3本あるが、一本の手術につき、5年生存率の確率を、0.8とする。これはそれまでの、経験的な手術の統計的結果によって、人為的に決めているわけである。
公衆、一般人の被曝限度量は、1mSv/年 である。
放射線業務従事車の被曝限度量は、 研究者の場合は、20mSv/ 年
放射線従事者の一般的被曝限度量は、 50mSv/ 年 である。
緊急時の被曝限度量は、 100mSv/ 年であった。これが、急遽、250mSv/year に引き上げられた。
計測は、通常一分である。数回、10回程の測定をおこない、平均値をだす。
世界的な地域の平均で、宇宙線(おもにガンマ線)による被曝は0.39mSv/year程度、大地・建物からの被曝は、0.48mSv/year 程度、また呼吸(空気中のラドンなど)によって1.26mSv/year程度、食物によって0.29mSv/year程度を被曝すると言われている。http://www.ies.or.jp/japanese/mini/RelationPDF/RoNaE-02NR.pdf
1992年以前では、古い単位が使われていた。
100rem =1Sv と定義された。
公衆、一般人の被曝限度量は、0.5rem = 0.5×(1/100) Sv =5×(1/1000)Sv =5mSv であった。それが、WHO , ICRP の勧告で1/5に引き下げられたのである。
その背景には、疫学的考察などがある。
単位は物差であるから、使いこなして行こう。
(この記事は、「ちきゅう座』編集部の放射線の単位についての質問に答えていただいたものです。――「ちきゅう座』編集部)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0412:110409〕