政府借金は雪だるまにならない Ⅲ~Ⅰ

政府借金は雪だるまにならないⅢ
 (前稿よりの続き)これを見ると、政府借金の増加を原因として増える金利増加額より、その結果として増える預金額からの徴税額のほうが圧倒的に大きくて、その差は、170-47=123(兆円)となる。
 すなわち、平成23年度の予算では、94.7兆円の歳出総額のうち政府借金のための金利支払いおよび債務償還費のために、合計の約21兆円がそれに当てられていて、基礎的財政支出は、約73.7兆円であった。
 ところがさらに3000兆円の借金を追加にするとすれば、上記の論理から、基礎的財政支出は、新規の赤字国債を発行しなくても税収だけで123兆円を見込めることになり、政府財政は大幅に健全化することになるのである。
 この計算の考え方を次に記す。・・・・・
 政府借金増加額を⊿D,名目金利をⅰとすると増加支払い金利額は⊿Dⅰで、一方、民間預金総額に対する徴税率をe、民間預金増加額が⊿Gならば、徴税増加額は⊿Geとなって、政府財政余裕額は、「⊿Ge-⊿Dⅰ」となる。なお、誰かの借金は誰かの預金であるから、つまりは「⊿D=⊿G」なので、「⊿D(e-ⅰ)」が政府財政余裕額となる。・・・・・●拙著から引用。
 これらの考え方は、「コロンブスの卵」的でずいぶんと乱暴に見えるかもしれない。しかし、「財政規律を守りながら、好景気にし、税収を増やし、財政を健全化する」というような考え方のほうが、筆者にはよほどアクロバチックで現実的でないように思える。 

政府借金は雪だるまにならないⅡ
 『財政を健全化することを目的とするのなら、発想の逆転で、政府借金をもっともっと膨大に増やせばよい。』そのメカニズムを下記に記す。
 再度、2011年9月末資金循環統計より、家計+企業の預金総額は、771+183=954(兆円)。一方、政府借金は、1093兆円(中央政府分は810兆円)。また年間税収は、平成23年度政府一般会計予算の概要から41兆円、借金に対する金利支払額は、およそ10兆円。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/002.htm
 この状態で、政府がさらに、3000兆円の借金を増加させると、政府借金は、810兆円から合計3810兆円に増加する。一方、民間預金はというとそのおかげで、預金総額が、954兆円から3954兆円に増加する。これが信用創造機能、交流の広場への投稿済みの論、<日銀が定義する二種類のお金Ⅱ>や<マネーサプライの増加-国民にお金を配る>にて既に述べた。
 さて、大雑把に言って、954兆円の民間預金総額のときに、41兆円の税収があるのだから、預金に対する徴税率は、41÷954×100≒4.3(%)
 では民間預金総額が3954兆円になったとき、同様の率で徴税したとすれば、3954×4.3/100≒170(兆円)の額が税として徴収できる。
一方借金が3810兆円に増加しただけ、金利支払いも増える。同率の金利とすると、その額は、約10兆円から、3810×10/810≒47(兆円)に増加する。
(次稿に続く)

政府借金は雪だるまにならないⅠ
  日本政府の増加した累積借金の金利が、金利を産み、借金総額が雪だるま式に自然膨張を始め、コントロール不能になって日本は借金によって破綻するという考えがもし正しいのだとしたら、2011年12/29日に投稿した「政府の増税行動の矛盾」の論は明らかに正しい。なぜなら野田首相の躍起になって成立を目指している、5%の消費税増税など何の役に立つこともなく、累積借金は、自然膨張を始め、破綻するからだ。消費税の増税は国民を苦しめるだけにおわる。
 ではもっと本格的に40%ほどに増税したらいかがだろう。そうすれば、5兆円ぐらいは財政的に余裕が生まれ、金利支払いだけでなく借金の元金返済に供せるかもしれないなどと淡く禍々しい夢を持つ人々もごく僅かなら居られるかもしれない。禍々しいというのは、そんな事態なら、半分以上の日本人は自殺しているか飢え死んで居るに違いないからだ。当然日本人が今まで培ってきた中小企業群の優秀な技術も海の藻屑とのように消えているに違いない。もしそれでも生き残っている企業があるならそれは、わずかの外国資本の大企業だけであろう。このような、あまりなことを想像だけで物を言うのは、控えてきたが、これは言ってもよいのではなかろうか。
 つまり、消費税を含めた増税政策や、緊縮財政だけでは、日本の財政の健全化は、絶対になしえられることはない。
 ではどうすればよいか。その問いに対して「財政の健全化など考える必要がない」と言ってしまっても正解なのだが、それでは納得しない向きの方々も多分に居られるだろうことはあきらかだろうから、次のアイデアを提案する。