日の本東なゐふる(東日本大地震)

著者: 岩田昌征 いわたまさゆき : 千葉大学名誉教授
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    平成廿三年弥生十三日
  日の本東なゐふる 一

なゐふりて またなゐふりて
日の本の 底津岩根の
岩床の千々によろづに
ひびわれつ つひにくだけぬ
わたつみの 神の怒りて
水壁と なりて襲ひぬ
大和児の 田人町人
海人の おほみたからの
生く業を 毀ちにければ
御言葉を わご大君の
胸内ゆ ほとばしりいで
くにたみの こころの内に
玉響き 児らが心を
玉振るを 聞かまほしきや
大和大君

反歌

なゐふりて底津磐根をくだけれど
国産む力よみがへるらむ

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    平成廿三年弥生十七日~十八日
  日の本東なゐふる 二

なゐふりて またなゐふりて
海昇り 山沈みけり
津の舟も 丘へ放たれ
民が屋も ここだくだけつ
宮柱 田の面に倒る
生きむ糧 すくなすくなと
もろ人の 苦しみをるに
福島の まがつ火の神
まがまがし まがつ火をたき
息き難ての 息断たむとす
しかあれど 先のみかどそ
四方の海 皆はらからと
大御歌 詠ませ給ひぬ
水一つ 分けにけるのみ
近津国 ともどち人ゆ
むら雲の そきへの極み
遠津国 ともどち人ゆ
くさぐさの すくひ来たれり

大和児よ ああ大和児よ
山彦の 海乙女憂ひ
海彦の 山乙女憂ふ
山乙女 海彦を泣き
海乙女 山彦を泣く
時しかも 望み待ちける
日の神の 日継ぎの御子の
胸内ゆ 地の湯のごとく
湧きいづる 御言葉のあり
今津御代 国生みの朝
大八嶋 吾左彦
秋津嶋 君右之彦
新たしき 大和島根を
つき固めむや

反歌

神代より続く大和を右左
言挙げしつつ善き国にせむ

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    平成廿三年弥生十九日
  日の本東なゐふる 三

みいくさの 天の磐船降り立ちて
くにたみ救ふ 姿に祈る

くにたみを 禍津火の手に渡さじと
てひとみいくさ いのちかけおり

根の禍津 火の神起す禍津火を
天の磐船 水打ち鎮めむ

もののふと てひとたくみの生命かけ
たたかふあたそ 禍津火の神

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    平成廿三年弥生二十日
  日の本東なゐふる 四

かみすけの 下の下なる
とこひとの 卆徒工匠てひとたくみ
目に見えぬ 禍津力の
まなかにて 日継ぎ夜継ぎと
命かけ みやこ火消しと
みいくさの 力副へあり
禍神に まつろはぬなり
かかる時 いかづち文に
都なる 博士のありて
わざはいゆ 逃ぐるを旨に
とつくにへ 鳥船に乗る
とそあれば 吾は思ひぬ
今逃げよ とつくに人よ
大和児の つとめは何そ
手人てひと等の 技師等たくみたくみ
禍津火に 打ちてし止むを
待つのみそ 心乱ず
見守るにあり

反歌

てひと等のくにたみ救ふたたかひを
都博士や去りても忘るな

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    平成廿三年卯月九日
  日の本東なゐふる 五

桜狩心乱るる
この春の花そ悲しき
山津見の大神倒れ
磐長の姫傷つきぬ
父姉が痛みを痛み
木の花の咲くや姫なる
妹のかんばせにこそ
かげりあるなれ

反歌

あもりせしににぎのみこと討ち給へ
もろひとのあた禍津火の神

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如月とをあまり三日
再びなゐいたくふりければ
ととせさきのとしに詠みはべりける腰折れの長きをこそ思ひ出だしぬれ

         令和三年 衣更着のある夜
                   大和左彦

安岡正治様
 第五首を除き、既発表ですが、再度の東北地震と東日本大震災十周年が重なり、ここに再び発表したくなりました。第1から第4までは、一水会月刊機関紙『レコンキスタ』平成23年4月1日号。また第4首はちきゅう座2011年・平成23年3月30日「福島原発・作業員の放射能汚染と、さる大学教授の国外避難」https://chikyuza.net/archives/8025 に発表しました。事件は未だ解決せず、十年後に再公表するのにも一理あるでしょう。

                  令和3年3月7日(日) 岩田昌征

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion10632:210311〕