昨夜、うるさくて目が覚めた。夜中の11時半すぎのことである。私はこの音の正体にすぐ気が付いた、正体は横須賀に停泊している原子力航空母艦ジョージ・ワシントン艦載機であるEA18Gグラウラーの夜間訓練である。この爆音は一週間前の5月23日にも座間で聞いている。毎週座り込みを行っている座間基地からさほど遠くない大和市にある厚木基地(マッカーサー元帥がコーンパイプを咥えサングラス姿で降り立ったあの厚木飛行場である)でGW艦載機の電子戦機EA18Gグラウラーが連続離発着訓練(タッチ&ゴー)をしていた。グラウラーの爆音はすさまじい。ちなみに、大和市でこのグラウラーの爆音を計測したところ、乗用車の警笛に例えられる110デシベルを大きく超える115・9デシベルというすさまじさであったそうだ。なんとグラウラーという機種名は「唸る奴」というのだから恐れ入る。しかし米国ではこの爆音のすさまじさも問題にはならない。軍事基地は人里離れた場所を選んで建設されており、抗議をするのは野ウサギ程度である。さすがに怒った厚木爆音訴訟団は即時30名の団員をそろえ厚木基地に抗議に出かけた。厚木基地のグレッグ・クンツ広報部長(51)は「近隣住民の心配は承知している。急きょ、NLPを実施することになり、遺憾に思っているが、部隊の運用のため必要な訓練なので理解してほしい」と言ったという。何を我慢しろと言うのだ。君達のやりたい放題をか、全くわがままな言い分ではある。ハワイではオスプレイ配備の件で自然環境影響調査では近くに棲息するコウモリに配慮してオスプレイ配備を中止した程の繊細さを持つ連中が日本では市街地のどまん中でオスプレイよりも遙かに爆音レベルの高いジェット戦闘機EA18Gグラウラーを一日中飛ばすのか。我々日本人はコウモリ以下の生物か。なんと傲慢な連中だ。町田市の市長はこの爆音にゴウを煮やした市民の抗議に「我慢して下さい」と応えたそうだ。何をどう我慢すればいいのだ。何という卑屈さだ。町田市長を責めても易がないが。首長たる野田そのものが愛想笑いをしながら米国に追従している国民の安全と安心を放棄した選良とやらの頂上にいる男である。選んだ我々も自戒すべきである。
その日は「藤沢、茅ケ崎市などを含め神奈川県内の広範囲で空を切り裂くようなジェット機の爆音が響いたと報告されている。「ここは一体どこの国なんだ」「沖縄だけでなく、ここもひどい」。各市などに住民から殺到した苦情は少なくとも1500件を超えたらしい。「タッチ・アンド・ゴー」は数十秒から数分の間隔で繰り返された。訓練は午後9時59分まで続けられた。市民の抗議にもあるように「沖縄だけでなくここも非道い」という言葉が出た。私はこの発言だけをとらえて、ことさらに本土人の沖縄差別からでた無意識の表現と言いたくはないが、今まであるいは今も沖縄の現状に無関心であることは否めないであろうと思う。しかし、今となれば己の身に降りかかった厄災として無関心ではあり得ないはずだ。このグラウラーの一連の訓練情況を見て、一部には「本土の沖縄化」という人が現れると思う。しかし問題はもっと深刻であると認識すべきだ。米国は(沖縄に対する過ぎる傲慢さやそれを知っていながらの本土人の無責任さは充分反省するとして)日本を沖縄化しようとしているのではなく、「日本全体を属国として遇する時が来た」と判断しているに過ぎない。米国が露骨に爪を現したのは小泉と竹中を先兵として行政に手を入れ内政干渉をしたときからである。
今こそ米国の策謀に対して「否」を突きつけ、日米安保条約を破棄すべきであろう。今まで「抑止力」という言葉におどらされ、国の主権さえ売り渡し、憲法の上に日米安保条約をいただく歪な法体系に疑問を持たなかった日本人とは何者であったのか。今まで日米安保条約を九条憲法の精神に照らし合わせ「違法である」と明確に判断し表現したのは立川飛行場拡張に反対して砂川闘争被告になった七人に対して、「米軍基地の存在は憲法に違反しているので、米軍基地に侵入したとされる行動は違法ではない(判決文の文言通りでは無いと思います。すみません)」とした伊達秋雄裁判長ぐらいであろう。
このような米軍の傲慢な行為が継続されていくことはまちがいない。しかも、日本の政治家や官僚は絶対に当てにならない。この連中が国民の平和や安全に心を砕くとは考えられない。先日、ライラ・ハリード氏の講演に「パレスチナの戦いは土地とその地で安心して暮らすための戦いでしたが、それを支えたのは主権を取り返す気持ちと市民の誇りでした」という一節があった。そろそろ日本人も「財物的な豊かさ」という蜃気楼に気づき、「安全と安心」を実現できる心の豊かさを持つ時期になったようだ。
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