日本のアラブの春は何処に?

「The Mainichi Daily News – Online」で、大変興味深い記事を読みましたので、是非ご紹介したいと思いました。この記事は、「日本のアラブの春はどこに?(Where is Japan’s Arab Spring?)」という見出しで、日本在住のアイルランド出身のジャーナリスト、ディヴィッド・マク二ール氏が書いたものです。マク二ール氏は記事の中で、日本に根強く存続している守旧派・オールドガードシステムを鋭く批判しています。そして、そのシステムにチャレンジしようともしない日本のジャーナリストたちを更にもっと厳しく批判しています。

下が記事へのリンクです。残念な がら、日本語版は見つかりませんでした。

http://mdn.mainichi.jp/perspectives/news/20120106p2a00m0na003000c.html

概説:The Mainichi Daily News (2012年1月6日付ディヴィッド・マク二ール氏の記事

日本のアラブの春は何処に? 

  2011年の1月に、いったい誰が、2011年の末には、(合わせてみると1世紀以上も続いてきた)リビア共和国のムアンマル・カッザーフィー政権、エジプト・アラブ共和国のホスニー・ムバーラク政権、チェニジア共和国のザイン・アル=アービディーン・ベン・アリー政権の終末を見るということを予知することが出来ただろうか?

  そして、いったい誰が、腐敗した破壊的な金融資本支配権力に終止符を打つのだと、一般庶民が、アメリカやヨーロッパの都市を持続的に占拠するという窮余の行動を起こすなんていう事を予想するこが出来ただろうか?

  もちろん、世の中には、我々の住んでいる世界がスピーディに変革し得るのだという見解に対して、恐怖心や不安を抱いて反応する人間もいる。しかし、オールドガード(守旧派)がネガティヴな力となって、変革を妨げ、人々の創造的エネルギーを抑止する時、変革というものは(時によっては暴力的になることもあるが)、必然的であり避け得ることは出来ない。

  私は、オリンバス会社の元社長、またCEOであったマイケル・ウッドフォード(MIchael Woodford)氏の記者会見を聴いていた時、そんなことを考えていた。

 マイケル・ウッドフォード氏は社長就任の後、オリンパスで10億ドル以上の資金が悪用されていたことを明らかにした人物である。(-ウッドフォード氏が社長に就任する以前の平成20年に実施された英医療機器メーカー、ジャイラスの買収や、その他のいくつかの買収。一連の買収で10億ドル《約770億円》超の支払いが不適切だった恐れがあると指摘、調査を進めていたという。-*産経ニュースより )

  しかし、ウッドフォード氏が社の不適切行為をアンカヴァーしたことに対してオリンパス側の取った態度は、ウッドフォード氏に返礼するどころか、ウッドフォード氏を解任するという手段をとったのである。

 オリンパスのような企業の取締役会は、英国や米国で考えられているような管理・運営組織とは違って、概ねは「盲判押し屋」のようなものと見なされてきた。
 東京を本拠としている投資資本家・実業評論家のウィリアム・サイトー氏は、「高齢に達した会長やCEOは退職しても、殆ど毎日のよう来社し、かなりの権勢を振るいまわすし、新任役員の権限を阻害している」と指摘している。

  日本が未だ発展途上にあって、経済が半閉鎖されたような状態であった頃なら、このような組織構造は良かったかもしれない。しかし今日、日本はグローバルな資本主義体制に確実に固定された状態にあるのだから、このようなやり方は通用しないし、とにかく旨く行く筈はないのである。

  日本の最大企業が、制御を受けず、責任を負う必要もなく、誰にも異議を申し立てられることもないような「年寄り」によって経営されているという事を、日本の一般庶民は深く懸念すべきだと、私は考える。

 しかし、もっと懸念すべき事がある。それは、日本のメディアである。最初にウッドフォード氏がオリンバス社の問題に気が付いたのは8月のことで、日本の小雑誌「**Facta」の記事を通してであった。その後、ウッドフォード氏は何ヶ月もの間、社の資金悪用問題をオリンパス社の内部で解決しようと試みた。そして終に、この問題を英国の新聞に訴えることにしたのだった。それから、このニュースは世界中に広まっていった。しかし実際に、日本のメディアがこのニュースをキャッチするまでには、一週間以上もかかったのである。

  日本の新聞は世界で最大のものだと日本は自慢している。しかし、日本のジャーナリストが、こういった責任・抑制から開放された権力者の好き放題な行為を阻止し食い止める努力をしないのだったら、ジャーナリストという者は一体何のために役立つというのであろうか?

 そして、この国に変革が成されるまでに、我々は一体どのぐらいの長い間待たなくてはならないのだろうか?

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 -デイヴィッド・マクニール(David Mcneill)氏のプロファイル:アイルランド出身のジャーナリストで2000年から日本に在住。「The Independent新聞」、「Irish Times新聞」、「週刊Chronicle of Higher Education」などに寄稿している。また、マク二ール氏は社会学博士、上智大学講師でもある。

-*産経ニュース記事へのリンク  

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111016/biz11101621150006-n1.htm

-**雑誌名「Facta」はThe New York Times の記事から得ました。
http://www.nytimes.com/2011/11/18/business/global/japanese-police-investigate-olympus.html?pagewanted=1&_r=1