日本の衆議院選挙―過去の右翼陣営への揺り戻し

12月16日の衆院選挙結果について大変興味深い印象的な記事が南ドイツ新聞に掲載されていましたので、それをご紹介させて戴きます。筆者、ナイトハルト氏によって書かれた論評は、更なる右傾化に突入した日本の政治的風潮を見事に捉えていて、非常にクリティカルな見解を呈示しています。

原文へのリンクです。:

http://www.sueddeutsche.de/politik/parlamentswahl-in-japan-ruck-nach-rechts-in-die-vergangenheit-1.1552360

概説:2012年12月16日-日本の衆議院選挙-過去の右翼陣営へ揺り戻し

(南ドイツ新聞-オンライン 2012年12月17日付)

日本の選挙-保守派が勝利を収める
保守主義から硬直な国家主義まで-これまでの日本政権は全て、右寄りの立場をとってきたが、それを差し控えてきた。しかし今や、そのような事には終わりを告げる事となった。勝利政党、自由民主党の選挙戦はアグレッシブな悪意ある響き、極右派の要請で刻印されていた。そして、安倍晋三という~過去の嘗ての日本を夢想している男~が権力を握ることになったのである。

東京‐クリストフ・ナイトハルト(Christoph Neidhart)による論評

日本は右寄りに、更にもっと右寄りに進む。確かにこれまでのところ、日本政権は常に保守的であった。しかもその殆どが硬直な国家主義的傾向にあった。-今、首相を退任する野田佳彦氏もそうである。しかし、これら全ての内閣はそれを自制してきた。

だが今、このような雰囲気には終りが訪れている。:以前の東京知事であった石原慎太郎氏は独断専行で北京に島争いの喧嘩を売った。また彼は公式に中国について話すとき、中国を侮辱的な名称で「シナ」と呼ぶ。彼は日本が核武装することを求め、赤い人民共和国とのちょっとした戦争もあり得るとの考えを口に出して言うことも憚らない。彼は、他の右翼ポピュリスト達と一緒に、アグレッシブで悪意のある響きと極右派の要求を選挙戦に持ち込んだ。-そして、これを一般世間でも受け入れられるものにしていった。

それ以来、次期総理大臣に任命された自民党の安倍晋三氏は終に、自分の考えている事をそのまま話すことができるようになったのである。彼の最初の総理大臣任務期(2006年9月から2007年9月まで)は不成功であったが、その間、彼は日中関係の調整を追求するため中国に赴くことを、しぶしぶ承知したことがあった。
その当時すでに、安倍氏は改憲することを試みた。憲法第9条は、自国領土を自衛することを除いて、如何なる形の戦争も禁じている。安倍氏が廃止したいのは、この平和条項だけではない。彼は日本国民の人権を制約し女性の平等権も撤廃したい。更に彼は外交政治に関して、-第二次世界大戦において日本軍が朝鮮、中国、東南アジアからの何十万という若い女性を従軍慰安婦として野戦売春宿へ連行し強制売春させたことを事実として日本が認めたという-所謂「河野談話」を撤回したい。

手短に言うと:次期総理大臣は、過去にあった、嘗ての日本を夢みているのである。

特記するに値する反動はなし

今日に至るまで日本政権は、第二次世界大戦で日本軍が犯したヒューマニティーに反する犯罪行為に対して真剣に立ち向かうことを、なおざりにしてきた。確かに、何人かの首相がむしろ遠回しのような謝罪をしたことはあるが、その度ごとに他の政治家たちが直ちに、これらの謝罪効果を弱めてしまっていた。

近年になって、中国と韓国は日本に対して、日本は自国の悪の歴史を見直さなければならないと圧力を高めてきている。それに対する反応として、20年間、国を継続的な危機状況から脱させることを為し遂げられなかった(複数の)日本政権は、国家主義へと逃げ込んでいったのである。多くの日本の有権者は確かに中国のことで憤慨しているのだが、決して国家主義の日本を望んでいるわけではない。

もう既に長い間、日本には特記するに値するような左翼派は存在しない。ニッポンの政治家たちは、日本国民の基本的態度は一様に保守的であると喜んで宣言する。そこで彼等は、日本の戦後時期には強力な社会主義的そして共産主義的な政党が存在したこと、また激しい学生運動があったことも忘れてしまっているのである。これらの左翼派は虚空に消えていってしまったわけではない。彼等は一方では抑制され、他方では政治のメインストリームに吸収されていった。-このようにして彼等は鎮圧されていったのだった。日本において右派が権力を維持していくようにと、CIAが金銭的に援助したことは、今日では周知の事である。アジア大陸に対して、保守的な日本のみが太平洋における確かな信頼できる軍事基地となる。

フクシマの後、如何に原子力産業、学界、政治界、そして主要メディアが結託しているかと謂うことが明らかになった。:日本の「原子力ムラ」である。やみ取引きは原子力政策に限られていない。大手メディアは産業界に依存しているし、常に自由民主党と緊密に結びついている。-2009年に政権交代があった後、(大手メディアが)「権力は野党にある」と書いたほどの緊密さである。彼等は、決して左派ではない民主党の野田首相さえにも何のチャンスも与えなかったのである。

そして今、日本ではやっと、これに対する公衆の抗議が次第に起こってきている。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2122:1201220〕