社人研の2050年推計人口によれば、21世紀半ばに至るこれからの30年は、国土・地方・都道府県・市区町村のいずれのレベルにおいても有史以来の地殻変動の発現が予測されている。その変化を比喩的に言えば、〝人口減少〟という地殻変動が国土一円に拡がる中で、中央部(関東・首都圏)を残して日本列島の地盤沈下が急激に進み、その他の地域は浮島状態になる――というものである。南太平洋諸島のように、地球温暖化による海面上昇で島嶼そのものが消えるといった事態ではないが、有史以来の〝人口減少〟という地殻変動によって地域社会の存続(持続的発展)が脅かされ、首都圏やその他の大都市圏を除いて日本列島の急速な地盤沈下(衰退現象)が進んでいくということである。
将来人口推計は、数ある将来予測のなかでも最も確度の高い予測とされている。南海トラフ巨大地震は、今後30年間に数十パーセントの確率で起こると予測されているが、それは突発的に起こるものであって、何時どこで起こるかを正確に予測することは難しい。これに対して将来人口推計は、現在すでに進行している〝少子高齢化〟という「現実=人口動態」を将来に向かってそのまま投影したものであり、いわば「確実な未来」「必然的な未来」をあらわすものと言える。こうした前提のもとに、社人研の人口推計指数(2020年=100)および65歳以上人口比率(%)を用いて、30年後の日本列島の変化を国土・地方・都道府県・市区町村の各レベルで考えてみたい。以下は、その分析結果である。
(1)21世紀半ばに至るこれからの30年は、国土が「首都圏」「非首都圏」に分断され、地域格差が一層加速する時代になるかもしれない。有史以来の人口減少の中で関東地方だけが現在人口をほぼ維持する一方、それ以外の地方はいずれも2~3割にも達する激しい人口減少に襲われるからであり、加えて世界でも類を見ない「超高齢社会」に直面するからである。国際的には、65歳以上人口が総人口に占める比率7~14%未満を「高齢化社会」、14~21%未満を「高齢社会」、21%以上を「超高齢社会」と言うが、我が国では関東地方でさえが30年後には65歳以上人口比率が30%を超え、それ以外の地方は30%後半から40%前半にも達するからである。
(2)これを「2020年=100」とする人口指数でみると、2050年人口指数及び65歳以上人口比率は、北海道(73.1、42.6%)、東北地方(68.3、44.0%)、関東地方(93.1、33.7%)、中部地方(80.0、38.3%)、近畿地方(80.2、38.3%)、中国・四国地方(74.6、36.6%)、九州・沖縄地方(73.7、37.4%)となって、「東京一極集中」と言われる人口動態が今後も継続し、関東地方とりわけ首都圏の肥大化が突出して進むことを示している。
(3)国土レベルの「東京一極集中」と同じく、地方レベルでも「一極集中」の傾向が見て取れる。東北地方では、地方中枢都市・仙台市を擁する宮城(79.5、39.4%)が突出しており、残りの青森(61.0、48.4%)・岩手(64.7、45.9%)・秋田(58.4、49.9%)・山形(66.6、44.3%)・福島(67.0、44.2%)は人口が5~6割台に落ち込み、65歳以上人口比率は40%後半にまで拡がる。北海道の場合は、道庁が位置する札幌市(88.5、39.4%)が突出し、それ以外の函館市(60.4、47.7%)・釧路市(59.7、46.9%)・小樽市(49.9、53.1%)などの地方都市は容赦なく沈んでいく。
(4)北海道・東北地方ほどではないにせよ、中部地方では名古屋市を擁する愛知(88.5、34.5%)、九州・沖縄地方では福岡市を擁する福岡(87.2,35.1%)への「一極集中」が際立っている(本土と離れており異なった文化を持つ沖縄は〈94.8,33.6%〉と別格)。中国・四国地方では、中心都市の広島市と岡山市の求心力が相対的に小さいからか、広島(79.6,37.4%)、岡山(80.0、37.8%)とその他との格差はそれほど大きくない。また近畿地方では、大阪市・京都市・神戸市で空洞化が進んでいる所為か、大阪(82.2,36.6%)、京都(80.5,38.5%)、兵庫(79.7,39.5%)よりも滋賀(86.5,36.7%)が凌駕している。
2023年12月31日現在、共産党が議席を持つ市区町村は、全国1728(原発災害地域3市10町村を除く)のうち1266(73.3%)、市区は812のうち751(92.5%)、町村は916のうち515(56.2%)であり、党所属の市区議員は1549人、町村議員は628人である。社人研推計人口によると、30年後に人口が「半数未満=指数50未満」になるのは、党地方議員が議席を持つ751市区のうち36(4.8%)、515町村のうち133(25.8%)となり、「3割未満=指数70未満」は313市区(41.7%)、364町村(70.7%)である。つまり、党地方議員が議席を持つ市区町村で現在よりも人口が3割程度減少する市区は4割、町村は7割に達し、選挙情勢が一段と厳しくなると考えなければならない。
人口が3割も減れば、議員定数の縮小は避けられない。また新たな市町村合併が起これば、大幅な定数削減が一挙に現実化する。「平成大合併」によって町村数が2558から929(36%)、議員定数が3万8800人から1万800人(28%)、党町村議員が2103人から655人(31%)に激減したことは記憶に新しいが、人口減少がこのまま続けば、町村はもとより市区においても議員定数の大幅な縮小は避けられない。そればかりではなく、道州制の導入によって府県制が廃止されるといった地方自治制度の改変、あるいはそれに近い大再編が起こるかもしれない。
30年後と言えば現役世代よりも次世代の時代であり、この時までに党地方議員の世代交代が進んでいなければ議席を維持することは著しく難しくなる。しかし前回でも述べたように、すでに党都道府県議員113人の平均年齢は60.9歳、市区議員1553人は61.7歳、町村議員631人は68.0歳に達しており、都道府県議員と市区議員はあとせいぜい10年、町村議員は数年足らずで活動が停止する境目にさしかかる。また昨年の統一地方選のように、多くの議員が落選して議席を失うかも可能性も否定できない。ここ数年から10年の間に世代交代の準備が整わなければ、「戦わずして敗れる」といった事態も起こりかねないのである。
初出:「リベラル21」2024.6.10より許可を得て転載
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