7月17日(月) 本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)講座のご案内

本郷文化フォーラムワーカーズスクール講座のご案内です。

湯地朝雄の文芸批評ー芸術運動と国際連帯

日時:717()1845分~2115

会場:本郷文化フォーラムホール

講師:山口直孝(二松学舎大学教員)

1130033東京都文京区本郷3の2910飯島ビル1F(最寄駅=地下鉄本郷三丁目)

問い合わせ:TEL0358041656

FAX=0358041609 

メールアドレス=hows@dream.ocn.ne.jp

受講料 1回 1500円  (学生1000円)

シリーズ この人にきく

湯地朝雄は、コミュニストとしての立場を堅持し、60年以上文芸批評に取り組んだ稀有な存在である。湯地は、大西巨人、武井昭夫の協働者としても知られるが、階級的視点と国際連帯の精神とに基づく言論活動は、独自の存在意義を持っている。とりわけ、反動化が著しい昨今の情勢において、湯地の原則的な思考は、よき指針となろう。本講座では、まず湯地朝雄の歩みをふり返る。創成期の全学連の活動において批 評を書き始めた湯地が、どのように自己の立場を定め、関心の対象を広げていったかを確認する。湯地は、機会主義とは無縁であり、芸術運動の内と外とを複眼的にとらえ、芸術運動を鍛えようと試みた。また、彼は、作品の内容と形式との相関を鋭く問うことのできる、小説の読み巧者でもあった。イデオロギーと表現との総合である「政治的芸術」を求め続けた論述の魅力を指摘したい。  講座ではまた、時評文の持つアクチュアリティーに注目する。湯地には、単行本にまとめられた業績以外に、膨大な数の、同時代に向けた発信がある。折々に綴られた文章からは、時勢におもねる言論人とは対極の、揺るぎない視座をうかがうことができる。・u檮。回は、「輓近文学の魅力喪失と〈日本浪漫派〉の復活――福田和也『保田與重 郎と昭和の御代』その他をめぐって」(『社会評論』第105号、19971月)を取り上げ、 湯地におけるナショナリズム批判のあり方を検討する。約20年前に記されたこの文章から、私たちは、民族や国家をあいまいな根拠で称揚する意見が姿形を変えながら周期的に出現するものであることを知ることができる。同時に私たちは、情緒的な物言いを乗り越えるためには、外部に開かれた人民の意識が不可欠であることをも学ぶであろう。湯地のインターナショナルな感覚は、今こそ参照されなければならない。

講師=山口直孝(二松学舎大学教員)

 

湯地朝雄(ゆち・あさお):1925年~2014年 文芸批評家。東京大学文学部国文学科在学中に武井昭夫との交流を通じてマルクス主義への関心を深め、全学連の運動に関わる。1951年に新日本文学会に入会、中野重治編集長の下で『新日本文学』の編集に従事したり、東京支部の書記長を務めたりしながら、数多くの批評を発表する。活動家集団思想運動の芸術運動部会の中心として活躍、『芸術運動』・『社会評論』・『思想運動』で健筆を奮った。著書に『芸術運動の条件』 (土曜美術社)、『プロレタリア文学運動――その理想と現実』(晩聲社)、『戦後文学の出発――野間宏『暗い絵』 と大西巨人『精神の氷点』(スペース伽耶)、『政治的芸術――ブレヒト・花田清輝・大西巨人・武井昭夫』(ス ペース伽耶)など。