本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(54)

著者: 本間宗究 ほんま・そうきゅう : ポスト資本主研究会会員
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日本の個人金融資産

現在、日本には、「約1570兆円」もの「個人金融資産」が存在すると言われている。そして、多くの人は、この資産の存在により、「日本の国力」や「財政の健全度」を強調しているようだが、「過去15年ほどの相対的な推移」を考えると、実に、不気味な事実が見て取れるようである。具体的には、「世界の金融総資産」と「日本の個人金融資産」との「相対的な力関係」のことだが、実際に起きたことは、「日本の個人金融資産」は、総額的に、ほとんど変化が起きなかったという状況でありながら、一方で、「世界の金融資産」は、この間に、「約10倍」という規模にまで大膨張したのである。

そのために、できるだけ単純な数字で、この間の変化を考えてみると、「15年ほど前」には、「世界の金融資産が、総額で約1京円だった」ということが理解でき、また、「個人の金融資産が約1500兆円」と考えると、この比率は、「約15%」という状況でもあったのである。つまり、「日本の個人投資家」は、世界において、たいへん大きな位置を占めていたのだが、現在では、この比率が、急低下しているのである。具体的には、「世界の金融総資産」が「約10京円」という莫大な金額にまで膨らんでいながらも、一方で、「日本の個人金融資産」は、総額で、ほとんど変化がなかったために、現時点では、全体の「約1.5%」にまで「相対的な力」が激減したということである。

また、この理由として挙げられることは、「信用創造のマジック」とも言えるようだが、実際には、「新たな資金の創造」という「信用創造」ができる主体が、「富を獲得する」ということである。具体的には、最初に、「デリバティブ(金融派生商品)」を大量に生み出した「アメリカ」と「イギリス」へ「富」が移転し、また、「2007年」以降は、「世界の中央銀行」が、「総資産を、約1000兆円から2000兆円へと倍増させた」という事実により、「国家へ、実質的な富が移行した」という状況でもあったのである。

このように、日本人の「虎の子」とも言える財産が、実際には、「実質的な価値」を、大きく減少させており、この事実が意味することは、「どれだけの商品と交換できるのか?」を意味する「購買力」が、大幅に減少しているということである。つまり、これから、日本人が、貴金属などを購入しようとしても、「購買力の減少」により、「今までよりも、はるかに少ない数量しか買えなくなっている」ということである。しかも、現在では「現物の枯渇」により、「実際に買える商品が少なくなっている状況」でもあり、今後、更なる円安が加速した時に、いやでも、この事実に気付かざるを得なくなるようだが、問題は、「いつ、この事実に気付くのか?」ということでもあるようだ。

2013.11.15

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最後のバブルが始まった!?

現在、「世界的な株高」の他に、「絵画」や「ダイヤモンド」などの市場においても、歴史的な高値が続出しているようである。具体的には、「欧米の株式市場が、連日、史上最高値を更新している」ということであり、また、「アンディ・ウォーホルの絵画」が「約105億円」という高値で落札されたり、「ダイヤモンドの落札価格」が、連日、史上最高値を更新したりしている状況のことである。そして、この原因としては、「中央銀行による大量の資金供給」が挙げられているが、実際には、「日米だけで、毎月、約15.5兆円もの資金が、市場に供給されている」という状況となっているのである。

しかも、この時に、「人々の意識変化」が加わっているために、より一層、「価格の急騰」が激しくなっているようだが、具体的には、「政府」や「通貨」への信頼感が激減し、「実物資産へ、資金が移動する動き」のことである。そして、今後は、この動きが、より一層、激しくなるとともに、「日本」を始めとした「アジア各国の株式市場」、あるいは、「貴金属市場」などにも、「バブル的な価格上昇」が起き始めるものと考えているが、このことは、「過去数百年の金融の歴史」から考えると、「史上最大」、かつ、「最後のバブル」となる可能性も存在するようである。

つまり、「バブルの歴史」を紐解くと、基本的には、「1620年代」に起きた「オランダのチューリップバブル」にまでしか遡ることができないのである。そして、その後は、「場所や形を変えて、いろいろな商品がバブルを引き起こした」という事実が理解できるのだが、この原因としては、「大量の資金」の存在が指摘できるのである。別の言葉では、「1600年」頃から、「時は金なり」という考えが生まれ始め、その後に、「お金が最も重要である」ということを意味する「資本主義」の発展により、「過去400年間で、大量のお金が、世界的に創り出された」ということである。

その結果として、現在では、さまざまな市場で、「バブル」が発生し始めているようだが、実際に起きていることは、「マネーの暴走」であり、また、「本格的なギャロッピング・インフレ」とも言えるようである。つまり、最初に、「高額な商品」から価格が急騰し始めて、次には、「より安価な商品」へと移行し始めるものと思われるが、問題は、この動きが「ハイパーインフレ」へと繋がった時である。つまり、「食料品の価格」までもが急騰し始めると、「人々の生活」に支障が出始めるとともに、最後の段階では、「誰も、高額な絵画やダイヤモンドなどには、目を向けなくなる状況」が訪れることが予想されるのだが、このことが、「行き過ぎた金融資本主義の崩壊段階」とも言えるようである。

2013.11.16

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新たな5年間の始まり

「12月7日」から「甲子(きのえ ね)」という暦になるが、このことは、「新たな5年間(60ヶ月)の始まり」を意味している。つまり、「十年一昔」という言葉のとおりに、世の中には、「10年ごとのサイクル」が存在し、また、その「10年サイクル」が、二つに分かれることが、「暦のサイクル」から読み取れることである。そして、「過去10年間」を振り返りながら、「今後の10年間」を予想することが、投資においても、たいへん重要な点だと考えているが、今回の「2004年から2013年」の「10年間」は、「歴史に残る、きわめて重要な時期」だったようである。

具体的には、最初の5年間が、「未曽有の規模で、マネーが大膨張した時期」であり、このことは、「デリバティブの残高が、約8京円にまで急拡大した」という点に象徴されるようである。そして、その後に起きたことは、「暦のサイクル」のとおりに、「2007年7月」からの「金融混乱」であり、また、「2008年9月」の「リーマンショック」でもあったが、問題は、やはり、その後に起きた「量的緩和(QE)」だったのである。

つまり、「アメリカ」を中心にして、「先進各国が、中央銀行のバランスシートを急拡大させながら、大量に国債を買い付けた」ということだが、その結果として、「過去5年間」に起きたことは、「表面的なデフレ状態」、あるいは、「人為的な超低金利状態」の形成だったのである。別の言葉では、「デリバティブ」や「国債」などの金融資産において、「質的な面での劇的な劣化」が起きるとともに、現在では、これらの資産が、実質的に、「不良債権化」しており、その結果として、現在では、「アメリカのデフォルト(債務不履行)」までもが危惧されているのである。

このように、過去10年間に起きたことは、典型的な「経済の金融化」であり、実際には、歴史的な「金融資産の大膨張」でもあったのだが、今後の「5年間」は、その「裏返し」の状態となり、「世界中の人々が、今までのツケを払わされる状況」が想定されるようだ。具体的には、「信用崩壊の波」が世界を襲うことにより、「実体経済」と「マネー経済」との比率が、現在の「1:20」という状況から、今後は、「1:1」という正常な状態に戻ることである。

別の言葉では、本当の「インフレ」により、今までに積み上がった「金融資産」が、「実質的な紙切れの状態」になることだが、今後、重要な点は、「お金は残高であり、インフレでしか価値が減少しない」という事実を、正確に認識することでもあるようだ。

2013.11.26

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日銀の出口戦略

11月22日の「衆院財務金融委員会」において、日銀の黒田総裁が「金融緩和の出口戦略」に言及したそうである。具体的には、「保有国債の償還」、「各種の資金吸収オペ」、そして、「付利の引き上げ」などの方法のことだが、このことが意味することは、いわゆる「異次元の金融緩和」が、「いよいよ、行き詰まりを見せてきた可能性がある」ということである。つまり、今までのような、「民間銀行からの借り入れ資金」である「日銀の当座預金残高」を増やすことにより「大量の国債を買い付ける」という、きわめて無謀な金融政策に限界点が訪れたために、新たな展開を模索し始めているようである。

しかし、現時点で残された方法は、古典的な「借金棒引き政策」である「紙幣の大増刷」しか存在しないようにも思われるのである。より詳しく申し上げると、「日銀の当座預金」については、当然のことながら、「残高の膨張には限度がある」という点が指摘できるとともに、「付利の引き上げ」という「借入金の金利を引き上げる」ということは、「日銀の財政状態を、急速に悪化させる可能性」が存在するのである。そのために、今後は、「金利」が付かず、また、「返済期限」の存在しない「日銀券」の大量発行を目論んでいるものと考えているが、このことは、まさに、「亡国の金融政策」とも言えるのである。

つまり、「日銀券の大量発行」が意味することは、典型的な「通貨の堕落」であるとともに、その後に想定されることは、「大幅な円安」と「金利の急騰」でもあるからだ。別の言葉では、「通貨に対する信用」が、完全に失われることにより、「人々が、慌てて、預金などから実物資産へ、資金を移動させる」という動きが想定されるのである。そして、現在の「世界的な株高」は、すでに、この動きが始まったことを意味しているものと考えているが、今後、「最も呑気な日本人」までもが、この行動を加速させた時には、「世界の金融市場が、大きな変化に見舞われる可能性」が存在するのである。

具体的には、本格的な「金融混乱」であり、また、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」のことだが、実は、このような状況こそが、日本にまで「信用崩壊の波」が訪れたことを意味しているのである。つまり、表面的には、「円安」や「株高」、そして、「金利高」などの「好景気の状態」に見えるのだが、実際には、既存の「金融システム」や「通貨制度」などが、完全に崩壊を始めているということである。そのために、決して、現在の株高に浮かれることなく、自分の「資産価値の保全」を計ることが大切だと考えているが、やはり、最も安全な資産は、本当の「お金」である「金(ゴールド)」でもあるようだ。

2013.11.26

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2013年を振り返って

「2013年」を振り返ると、結局のところは、「国債」と「金」とを巡る「金融大戦争」において、「実質的な決着」が付きながらも、かろうじて「表面上の安定」が保たれている段階とも言えるようだ。具体的には、「アメリカのデフォルト(債務不履行)」が、世界的に認識され始めながらも、依然として、「量的緩和の継続」により、「国債価格が、世界的に、保たれている状態」ということである。そして、実際には、「中央銀行が、大量に、国債を買い付ける」という方法により、依然として、「歴史的な超低金利状態」が継続しているのだが、実際には、「水面下で、きわめて危機的な状況になっている」とも言えるようである。

具体的には、「信用乗数の低下」という「民間銀行の機能不全状態」が、より一層、明らかになるとともに、「今後、どのようにして、中央銀行が、国債の買い付け資金を手当てするのか?」という点が疑問視され始めているのである。また、「金(ゴールド)の市場」においても、「ペーパーゴールド」という「先物市場における価格」と、「フィジカルゴールド」という「現物市場の価格」とで、「大きな違いや歪みが発生しているのではないか?」とも言われているのである。

しかも、「金を信用する陣営」である「中国やインド、そして、ロシア」などの国々は、継続して「金」を購入している状況でもあり、また、「現物市場」におきましては、「金の現物が枯渇し始めている」とも言われているのである。つまり、人類が今までに掘り出した「金」は「約17万トン」とも推測されており、現時点の「時価総額」は、「約700兆円」という数字にすぎないのである。また、現在の「金の採掘コスト」は、「一オンス当たり1200ドルを超してきた」とも言われているために、現在の金価格では、今後、「多くの金鉱山が閉鎖される可能性も出てきた」という状況にもなっているのである。

このように、現時点で起きていることは、「アメリカ」と「日本」を中心にして、「月間で約15.5兆円」もの資金が、「量的緩和」という名のもとに「大量に供給されている状況」であり、しかも、現在では、世界に存在する「約10京円」という資金が動き始めており、その結果として、「世界的な株高」が起き始めている状況とも言えるのである。そして、このことが、古典的な意味での「ギャロッピング・インフレ」を表すとともに、今後は、「通貨価値の本格的な下落」である「ハイパーインフレ」へと移行することも予想されるのだが、このことが、「世界的な金融大戦争」の終焉を意味するとともに、「金融システム」や「通貨制度」の崩壊のことのである。

2013.12.04

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干支から見る2014年

「2014年」は、「甲午(きのえ うま)」という暦になる。そして、「甲」が意味することは「貝割れ」であり、今までの「固い殻」が壊れることを表しており、また、「午」は、「今までの流れが逆転する」ということを意味している。具体的には、日本人の「預金神話」のみならず、世界的な「マネー信仰」が崩壊するものと考えているが、過去の歴史からは、「約400年」という「実に長い期間にわたり、お金が神様になった」という事実が見て取れるのである。

つまり、「西暦1600年頃」に、「時は金なり」という、新たな考え方が誕生し、その後、「資本主義」という「お金が、最も大切な時代」へと移行したのだが、現在では、世界中の人々が、「お金さえあれば、人生は大丈夫だ」という考えに支配されているのである。そして、「誰も、この点に疑いを持たない」という、きわめて「異常な事態」になっているのだが、実際には、「根のない切り花」の状態となっており、「根本の信用」が失われていながらも、「表面的な形」が残っているだけの状態とも言えるのである。

より具体的には、「金融のメルトダウン」という「金融商品の不良債権化」が、急速に進行していながらも、「中央銀行による、国債の買い支え」により、「問題が隠され、先送りされている状態」ともいうことである。しかし、これから想定されることは、「ある日、突然に、金利の急騰が起きる」ということだと考えているが、このような事態に陥った時には、すでに、膨大な金額にまで膨れ上がった「国家の債務」にとっては、「致命的な打撃」になることも想定されるのである。

そして、その後に起きることは、「資金の急激な移動」だと考えているが、実際には、「フィアットマネー」という、「現金」や「預金」、あるいは「国債」などの「政府の信用を基にした金融商品」などから、「貴金属」や「株式」、そして、「土地」などへの「実物資産」へと、「大量の資金が、一挙に流れていく動き」のことである。つまり、「最後のバブル」とも呼ぶべき動きが発生するものと考えている、実際には、現在の「世界的な株高」が、「より一層、激しさを増す」ということである。

このように、現在では、「西暦1600年頃」から始まった「お金の時代」が終焉の時を迎えており、今後は、「東洋的」な、「自然と共生しながら、伝統や歴史を重んじる文化」へと変化するものと思われるが、問題は、「移行期の摩擦」であり、特に、「お金の価値」が無くなった時の「現代人の衝撃」には、大きな注意が必要なようである。

2013.12.04

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4706:140105〕